会える確信があるんでしょ!
感極まってもはや嗚咽になっているユーリーン姫を見て、私は自分の不甲斐なさ、考えの浅さを突きつけられたような思いでした。
私は、何も分かっていなかった。
自分の喪失感と向き合うのに精一杯で、姫が、周囲が、アカリを失ってどれほど痛手を被っていたかを真剣に考えたことなどありませんでした。
姫の言葉は尤もです。
私がアカリにもっと向き合ってさえいれば、彼女のことです、少なくともあのような突然の帰還には至らなかったことでしょう。
もはや自分の思いだけではない。私はアカリに会って、告げなければなりません。私の思いも、姫をはじめとしたこの国の人々がアカリに向けている思いも。
コールマンの言う通り、もうアカリの帰還から一年以上が経っています。アカリが私たちの思いを聞いてどのように判断するかは分かりません。ですが……。
泣き崩れる姫に、私は誓いました。
「ユーリーン姫、いま少しだけ時間をください。必ずアカリに姫の気持ちもお伝えいたします」
「わたくしの気持ちなんてどうでもいいのよ! 伝えるべきは貴方の気持ちでしょ!」
「それはもちろん、ですが」
「……待って」
グスっとすすりあげて、姫は涙目のまま私をじっと凝視します。
「貴方がそんな言い方をするってことは」
ずいっと詰め寄ってきた姫に、いきなり襟元を締め上げられました。
「さては貴方、アカリに会える確信があるんでしょ!」
吐け! とばかりに喉元を締められたまま揺さぶられて、話したくても声が出ません。姫の方が身長も低いというのに、なんという力でしょうか。姫の本気が全身で感じられます。
「ユーリーン、落ち着けって! それじゃ話したくても話せねえだろうが!」
コールマンが無理矢理引き剥がしてくれて、なんとか事なきを得ました。ひとしきり咳き込んでから、私は姫に聖杖を渡します。
「杖? これって確か、アカリが貴方のためのアイテムとして渡してくれたものよね」
「はい、エリュンヒルダ様が……その宝玉が蒼に染まる時、ひとつだけ願いを叶えてくださると」
「マジか!!!」
「ホントに!?」
「はい」
私の顔を見て、どうやら本当のことらしいと判断したらしい姫は、聖杖の宝玉をマジマジと見つめています。そして、きゅっと唇を噛みました。
「……まだ、三分の一も残ってる」
「はい。ですから、今しばらくお時間をいただきたいのです」
「いつまで待てばいいの」
「これは人々からの感謝の思いなのです。人を助け感謝を得れば蒼が貯まり、奇跡を与えれば減るのです。努力していますが……明確にいつ、とは」




