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出戻り聖女の忘れられない恋  作者: 真弓りの


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お守りがわりに

常連さんが食後のコーヒーをゆっくり堪能している間に私は急いで自室に駆け込み、タブレットを準備する。まだパッケージ開けてないのがあって良かった。こんなささいなもので、彼に幸運が訪れるなら安い物だ。


お店に戻ると常連さんは朝食を摂って少し顔色が良くなっている。さっきまではやつれた感じが拭えなかったけど、なんとなく背筋も伸びてシャンとして見えるかも。


タイミング良く席を立った常連さんに、お会計のタイミングに乗じて私はタブレットを差し出した。



「これ、よかったら持って行ってください」


「タブレット? ありがとう……」



ヤバい、とりあえずお礼を言ってはくれたものの、なんでくれたんだろ? って顔してる。そりゃそうだよね、私だって自分がその立場ならそう思う。


でも、困ったことにこのアイテムがどんな役割を果たして彼に幸運をもたらすのかなんて、私にはわからない。ただ、彼が持って行ってくれないとこのアイテムがお役目を果たせないってことだけは確実だ。


困った私はちょっとだけ考えて自分なりの理由を繕った。



「お守りがわりに?」


「お守り?」


「私、前に海外旅行で飛行機にのったとき、すごく具合が悪くなっちゃって。その時にコレをエンドレスで舐めてなんとか持ちこたえたことがあるんです」


「ああ、スカッとするもんね」


「それ以来、緊張する時にコレ舐めると、落ち着くんですよね。飴ほど大きくなくて目だたないし」



これは本当。だからいつも常備してるんだよね。



「そっか、ありがとう! オレもプレゼン前にやってみるよ」


「はい! 頑張ってください!」



私の話に納得してくれたのか、常連さんはいつもの朗らかな笑顔を見せてくれる。


私も思わず力一杯に応援した。大学時代も会社に入ってからもプレゼンって数えるくらいしかしたことないけど、あの嫌な緊張感だけは忘れられないもの。少しでも緊張がほぐれてくれるといいんだけど。



「嬉しいな、そんな風に言ってもらえたの久しぶりだ。めっちゃ元気出た」



ホントだ、なんか笑顔が輝いてる。応援されると人間って元気出るよね。こんなに喜んでくれるとこっちまで嬉しくなる。



「なんかうまくいく気がしてきたよ」


「はい、きっとうまくいきますよ。行ってらっしゃい」



そう言うと、常連さんはちょっとはにかんだように笑って「ありがとう、行ってきます!」と宣言し元気よく出社していった。


素直な人で良かった。


あのタブレット、どんなふうに役に立ってくれるんだろう。プレゼンがうまくいってくれるといいなぁ。

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『出戻り聖女の忘れられない恋』
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