デートですか……っ!?
「はい、そうでした。アカリと一緒にいられるだけで幸せで、ついつい予定を忘れてしまいますね」
ふふ、と嬉しそうに笑うナフュールさん。最高過ぎる。
「先日王都に新しい甘味処ができたと街の方が教えてくださったのです。アカリはきっと興味があるだろうと思ったので」
「でっ!! デートですか……っ!?」
「はい、デートです。あなたのおかげで気候も戻り、果物も穀物も大変よく育つようになりました。ぜひ、アカリにも食べて欲しくて」
「ナフュール様〜……っ」
「一緒に市場を歩いて、揃いの腕輪も買いたいのです。夫婦で揃いの物を身につけるのが流行っているそうですよ」
そんな事を言ってちょっぴり頬を染めるナフュールさんの麗しいことといったら!
「まさかナフュールさんがデートに誘ってくれるだなんて……」
しかも、揃いの腕輪とか。流行りを気にするなんて思ってもみなかった。感激するあたしに、ナフュールさんはなぜかちょっとだけ申し訳なさそうな笑みを見せた。
「やはり私はアカリに寂しい思いをさせていたのですね」
「え? 確かにナフュールさんやみんなに会えなかった一年間は寂しかったですけど、でもそれは仕方ないんじゃ」
今は毎日一緒に暮らせているわけだから、むしろ供給過多なくらい。ナフュールさんと一緒にいられるだけで嬉しいけど。
「いえ、そうではなく」
「?」
一瞬浮かんだ「?」な気持ちに、ナフュールさんはすぐに答えてくれた。
「一年ぶりにアカリが戻ってきてくれて、私と生涯を共にする事を公表したでしょう? それからというもの、出会う方々から次々にお叱りやご心配をいただきまして」
「お叱り?」
「はい。人助けもほどほどにしろと」
「へ!?」
「私がアカリを放って寂しい思いばかりさせているから帰ってしまったんだと。甲斐性がないと……恋人にはもっと贈り物をしたりデートに誘ったりするもんだと叱られまして、色々と教えてくださるのです。あちらの店は美味しいケーキがある、こちらには可愛らしい雑貨屋があるから一緒に行ってみなさいと」
「甲斐性がないって」
あまりの言われように笑ってしまう。
ナフュール様に甲斐性とか、考えた事もなかったんだけど。
「王様でも神の徒も関係ねぇんだよ、人助けばっかでカミさんほっぽっといたらそのうち逃げられちまうぜ、と口々に仰るのです。まったくその通りだと反省しまして」
「……!!!」
ナフュールさんの口から飛び出した、常なら絶対に聞けないだろう荒めの口調に悶絶する。麗しいお顔とのギャップがたまらない。