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可愛い初デートは、応援するしかないでしょう!

今日も、あの人の夢を見た。


暗い部屋で。一点だけを悲しげに見つめて……あの人の幸せを思って別れを告げたというのに、どうして時折夢に見るあの人は、あんなに辛そうな顔をしているの……?



*************



胸が苦しくなるような夢で沈んだ心を慰めるように、今あたしはとっても可愛い現場に遭遇している。



うわあ、初々しいなあ、あの二人。



あたしの視線の先には、どうやら付き合い初めたばっかりらしい高校生カップルがお互いに視線を合わせたり逸らせたりしながら所在無げに座っている。


男の子はいかにも硬派、って感じかな。大きな体とちょっと強面な雰囲気、目の前のコーヒーを睨んでは眉間に薄っすら皺を寄せている。対して女の子は小さくて小動物みたいな感じで、男の子の小さな仕草にいちいちピクンと反応するのが可愛らしい。



初デートに私のカフェを選んでくれたらしい彼らは、会話らしい会話もできないまま、ああしてもう30分ほどはモジモジ、ソワソワとお互いを窺いながら時を過ごしているのだ。



なんたる初々しさ。超可愛い!



微笑ましくって何気なく彼らを見ていたら、脳裏に美味しそうなチョコレートパフェがフッと浮かんだ。


なるほど、なるほど。それが今の彼らに必要なアイテムってわけね!


早速厨房に戻り、チョコレートパフェを二つ作っていそいそと彼らの席に向かう。



「はい、これサービスよ。これからも来てね」



コトン、とパフェを置いた瞬間の男の子の表情の激変は見事だった。



「うわすげえ、美味そう……!」



瞳がキラッと輝いて、口元は綻び、頬っぺたはほんのりと紅い。なんていうか、全身から幸せオーラが立ち昇ったんですけど!


可愛いな、おい!



「江森くん、パフェ好きなんだ……」



呆気にとられたような女の子の声に、一瞬「しまった!」とばかりに顔を歪めた男の子。「いや、あの……」とモゴモゴおろおろしだした彼は、「あたしも甘いの大好き!」という彼女の愛らしい笑顔を目にして、面白いくらいピキンと固まった。



おお!ドストライクだったらしい。


内心萌えまくっているであろう彼に彼女は追撃の手を緩めない。



「嬉しいな、これから一緒に甘いものいっぱい食べられるんだね」



はにかみながらの笑顔で嬉しそうに繰り出された言葉に完全ノックアウトされたらしい彼は、真っ赤になりつつオモチャみたいに首を上下に振っている。


うむうむ。青少年よ、思う存分萌えるがいい。家に帰ってからなら「可愛い!」と叫ぼうがクッションを抱きしめてゴロゴロと身悶えようが自由だ。いかに強面だろうと家の中であれば誰にも白い目では見られまい。



いやあ、いい仕事をした。



可愛い初デートを見学できてすっかりご満悦のあたしに、帰り際、強面の男の子はこっそりと「なんでパフェ……俺が甘いの好きって分かったんスか」と聞いてきた。


でもねえ、それはさすがに言えないよ。



なんせあたし、佐藤あかり23才は、つい1年ほど前まで異世界で「導きの聖女」をやっていたのだ。


誰かの未来をちょっと明るくするアイテムが見えちゃうのなんか、仕様である。

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『出戻り聖女の忘れられない恋』
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