第48話 vsジャガーズ【最終回 裏】⑤
――いける。ジャガーズの外野陣には刺せやしない。冥子の生還で、ゲームセットだ。
俺は拳を握り締め叫んだ。
「飛べ! 冥子!!」
「ボビー、ボールを寄越せッ!」
自分の声と重なる怒声。いつの間にかセンター付近まで駆け寄っていたダガーJが、外野手から強引に白球を奪い取り、俊敏な動きでモーションに入った。
「ダガーJが、あんなところまでバックアップを――!?」
「終わりだ、ゼロファイター!」
砲弾のような白球がホームベースめがけて迫る。同時、土煙立ち込める本塁めがけ、冥子が頭から跳躍。
マスクのなかで、アレックスが嗤った。
「That’s a Bummer Dude,メーコ・フドー……!」
送球を受けたアレックスと正面から激突する冥子。
(――――!)
マズい。
鼓動が一気に高まる。この局面で、ダガーJからのボールはストライク返球。そしてアレックスの手に渡ったのは、冥子の本塁突入より――一瞬だけ、早かった。
静まり返るグラウンド。土煙が晴れた本塁上では、アレックスと冥子がもつれ合って倒れている。必死に差し出された彼女の右手は――アレックスのブロックに阻まれ、ホームベース手前20センチで止まっていた。ジョーがゆっくりと膝から崩れ落ちる。
静まり返ったグラウンドで、倒れたままのアレックスが左手を高々と天に掲げた。タッチアウトのアピール。冥子はベースに触れていない。完全にアウトだ。麗麗華が、双子が天を仰ぐ。沸き立つジャガーズベンチ。
誇らしげに、ゆっくりと開かれたミットの中を見て――アレックスと審判に驚愕の色が浮かぶ。
――ミットの中身は、空だった。
「くそったれ……」
すべてが静止したダイヤモンドで、額から血を流した冥子がベースに手を伸ばし――泥まみれの五角形に触れた。審判の両腕が広がる。
「セーフ! ――ゲームセット!!」
反対側のベンチでペニー少佐がコーンパイプを投げ捨てた瞬間、サンライズベンチの全員がグラウンドに飛び出した。
【試合終了】百合ケ丘サンライズ4x-3フライングジャガーズ