表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したので、現代野球の知識を駆使して無双するつもりだったのに女子しかいません!  作者: とんこつ
百合ケ丘サンライズvsフライングジャガーズ
43/53

第41話 vsジャガーズ【最終回 表】②

「“カラテガール”、ちょっと待て」


 返球しようとしたさららを、アレックスが制した。そして、その手から無理やり白球を奪い取って眉をひそめる。


「……なんだこれは。おまえたちはこんなになるまで“サジタリウス”に投げさせていたのか?」


 アレックスの黒い瞳の先には、血染めのボール。


 全力投球を続けた渚の指はもう限界だった。


「――ッ! 私たちが大切なものを守らないといけないの。あなたたちにはわからないでしょうけど」


「ああ、わからないな。理解できない」


 アレックスが審判にボールの交換を頼む。ジャガーズベンチから真新しいボールが審判の手にわたった。それを受け取ったアレックスが渚へと放ってやる。


「ジャガーズには何十ダースもボールがある。ひとつ5ドル、真新しい革に包まれた新品の硬球がな。公式試合なんかじゃない、すべて“レジャー”に使うためだ」


「……それがどうかしたのよ?」


「“精神力”だけでは決して超えられない壁は、この世界に確かに存在する。それは物量であり、強靭な肉体であり、富だ――それはお前たち日本人がよく知っているだろ?」


 黙り込むさらら。


「今からそれをお嬢ちゃんたちに教えてやる」


 力なく投じられた2球目。アレックスの豪腕が、微かに見えていた俺たちの希望を打ち砕いた。もはやまったく変化しなくなったSFFを貫く、残酷な衝突音。


「――こういうことだ、サジタリウス」


 インパクトの瞬間、サンライズベンチは誰も言葉を発しなかった。渚の112球目をいとも簡単にとらえた飛球は、スタヂアム最上段を軽く越え夕焼けの市街地へと消えていく。


 3-2。本日2本目となる勝ち越しの場外弾。マウンドの渚がゆっくりと膝をついた。


「認めよう。確かにおまえたちは優秀な戦士(ソルジャー)だ。そこらへんの男よりもずっとな」


 打球の行方を確認したアレックスは、「フン」と鼻を鳴らしバットを投げ捨て悠然と歩きだす。


「しかし、所詮は“女の子(キティ)”にすぎない」


 ジャガーズベンチのペニー少佐が、安堵したようにパイプから煙を吐き出した。


「アレックスめ、心配させおって」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ