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異世界転生したので、現代野球の知識を駆使して無双するつもりだったのに女子しかいません!  作者: とんこつ
百合ケ丘サンライズvsフライングジャガーズ
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第37話 vsジャガーズ【6回裏】ジョーカー①

 とはいったものの、先頭・八重ちゃん、続く麗麗華も連続三振に倒れる。


「いってこい、かめちゃん!」


 俺は緑色のブレスレット、かめちゃんの肩を叩いて送り出す。


「エージ、何か策があるの? かめちゃんとはいえ2アウト、もう2点差だよ」


 不安そうに問いかける渚。彼女の心配どおり、次の攻撃は最終回。最強打者のかめちゃんにもう一度打席が回る可能性は限りなく低い。


「大丈夫だ。次のつるちゃんは死球を受けている」


「それがどうかしたの……?」


 八重ちゃん・麗麗華の凡退はある程度想定済みだ。確実な勝利を想定しているジャガーズバッテリー。2アウトランナーなし、打席は最強打者のかめちゃん。ここで選択すべきは……


「まさか……敬遠……!?」

「ランナーもいないのに!?」


 アレックスが立ち上がり、左手を大きく外角へ向けた。ダガーJも大人しく従う。


「さっきのデッドボールでネクスト・つるちゃんの足は潰してある。とはいえ、最終回の先頭打者として迎えたくはない局面だ。


 ならば、この回でかめちゃんを歩かせ、つるちゃんで攻撃終了したいという考えだろう。ジョー&冥子の前に万が一でも走者は出したくないだろうからな。一塁が埋まっていればつるちゃんの足は使えない。合理的主義を重んじるアメリカ人なら、この場面は敬遠策一択だ」


「あちらさんも考えてるわね……」と麗麗華。


 ダガーJは淡々とボール球を投げ込む。


「フォアボール!」


 かめちゃんが出塁。次の打席に、双子のつるちゃんが入る。左足を引きずる姿が痛々しい。


 作戦とは言え本意ではなかったのか、イラついて見えるダガーJのもとに、ミットで口元を隠したアレックスが走り寄った。


「いい間の取り方ね」と冷静なキリエ。


「ああ。ダガーJの扱い方に慣れてやがるな」


 俺は毒づいた。序盤の無死満塁もしかり、そう簡単に物事は運ばないものだ。


 マウンドに駆け寄ったアレックスが、大きな右手をダガーJの左肩に回した。


「動じるな、敬遠も作戦のうちさ、ダガーJ」


「ああ。わかってる」ダガーJが額の汗を拭った。


「“双子(ツインズ)”の妹・亀ガールはパワーヒッターだが鈍足だ。塁に出ればただの各駅停車(ローカル)さ、安心しろ」


「“エクスプレス”はバッター――姉の鶴ガールのほうだったな」


 ダガーJが打席を見やる。


「そうさ。亀ガールは塁に出たところで何もできやしない。お前は今打席に立っている鶴ガールとの勝負に集中しろ。あいつは足さえ封じればバッティングは大したことないんだ」


「アイアイ・サー」


 アレックスがミットで力強くダガーJの胸元を叩く。


「ヤツの俊足も心配するな。さっきの打席で潰れてるさ」


「アイアイ・サー!」


「かめちゃーん、リードリード!」


 俺はかめちゃんにありったけのリードを取るように指示した。どうせジャガーズバッテリーは鈍足かめちゃんの足を警戒していない。ブロックサインを使うまでもなく、俺は大声を張り上げた。


 が、アレックスの一言でダガーJはすっかり落ち着きを取り戻したようだ。塁上のかめちゃんと俺の陽動には目もくれず、次々と直球を投げ込んでくる。


「ストライク!」


 バッターのつるちゃんに対して、ダガーJは全く恐れる素振りを見せない。つるちゃんは足は速いがパワーはない。しかも、さっきのデッドボールで足を封じられているからセーフティバントもできない。速球を投げ続けておけば万が一の間違いもないのだ。


 直球が続き、2ボール1ストライク後の4球目。ダガーJが振りかぶった瞬間。



 ――今だ。



 俺はにやりと笑って、両手をメガホンのように口に当てた。そして腹の底から今日一番の大声を出す。


「走れ―――っ!!」


(WHAT!?)


 サインですらない、バレバレの盗塁指示。思っきりリードをとっていたかめちゃんが二塁に向かって走りだした。


 投球動作に入っていたダガーJが、一塁走者のスタートを見て驚愕の表情を浮かべる。


(ランナーがスタートしてる! 亀ガールが走っているッ!!)


 問題ない(ノー・プロブレム)、とアレックスがミットを強く叩いた。


(落ち着けダガーJ! ど真ん中にファストボールを投げ込んでやるんだ。鶴ガールは速球に弱い。お前はバッターに集中しろ)


(OK、サー!)


(のろまな亀は俺が刺す!)


 打席のつるちゃん目掛けて投げ込まれる速球。動揺したのかわずかに高い。アレックスは瞬時に右足を引き盗塁阻止の態勢をとる。


 かめちゃんは――()()()()()()()()()はしかし、まさかの速度でどんどん加速する。


(速い!? 妙だ、この走り方……スピード……そうか……SHIT!)


 ジャガーズで唯一異変に気がついたアレックスが唇を噛んだ。


(この“ツインズ”……初回からずっと……おかめとつるこが入れ替わってやがるッ……!)


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、二神姉妹。


(ブレスレットを交換してやがったか……今走っているのは俊足の“エクスプレス”鶴ガール――ということは――)


 この間0.334秒。


(今目の前にいるこのバッターは――)


 アレックスの顔がマスクの中で歪む。


(“ブラストル(二神おかめ)”かッ……!)


 どまんなかに投げ込まれた直球を、剛打の“かめちゃん”は見逃さない。


 相手に筒抜けだからこそ、たった一度だけ使える俺たちの切り札(ジョーカー)



「気づいたときにはもう遅い」


 この一瞬を待っていた。ヒット(安打)・エンド・ランならぬ、スラッギング(強打)・エンド・ラン。

  かめちゃんが酢昆布を飲み込み、叫ぶ。


「たん・たん・めん!」


 痛烈&一閃。かめちゃん、アレックス顔負けのバットフリップ。新東都の空に舞い上がる打球に、ジャガーズ外野手は早々に追うのを諦める。


 永遠とも思える滞空時間を経て、ナインの願いを乗せた大飛球がレフトラッキーゾーンに突き刺さった。スコアは2-2、同点。

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