表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したので、現代野球の知識を駆使して無双するつもりだったのに女子しかいません!  作者: とんこつ
百合ケ丘サンライズvsフライングジャガーズ
36/53

第34話 vsジャガーズ【4回表】バックトゥバック①

 俺はすっかり肩を落としてベンチに戻った。よかれと思ってやったことだった。相手は男で軍人だし、こちらの作戦は筒抜けだし、大義名分もあるはずだったのだ。何より、彼女たちを救えると思っていた。


(俺はなんてことを――)


 俺はベンチでひとりうつむく。ベンチの隅の冥子はふてくされたように足を組み、キャップを目深にかぶっている。


 試合は四回表。すでに渚&ジョーバッテリーは1、2番を打ち取り、2巡目の3番アレックス・バーンバスターが打席に入っている。


(何ぼやっとしてんのよエージ。打者はアレックスよ、『スピットボール』は使わないの!?)


 ジョーが視線で問いかける。顔にはいくばくかの焦りが浮かんでいた。


(『スピットボール』は使えない――いや、使わない。大丈夫だ、渚なら抑えられる)


 俺は力なく首を振った。ジョーが不安げにうなずく。


 渚が投じた1球目はSFF。直球と同じ軌道から鋭く落下する変化球に、アレックスが目を細める。


「フム、まだまだ手札(カード)を持っているようだな」


 それには答えず、渚にボールを返すジョー。バットを長くもったアレックスが渚を睨みつける。


(渚、ジョー、みんな……すまない)


 俺が悲嘆に暮れている間も、渚は淡々とボールを投げ込んでいく。


 が、その瞬間は突如訪れた。2-2からの5球目。


「――とはいえ、あの“おかしな(スピット)”ボールを投げないのならば――」


 交通事故のような轟音が響いた。


「――シントート・スタヂアムも拡張工事をしたほうがいい。ここはまるでウサギ小屋だ」


 バットを投げ捨てたアレックスが、英語でジョーに告げた。


 打球の行方に呆けたような表情のキャッチャー・ジョー。主砲の打球はバックスクリーンに一直線。そのままスコアボードを越え、新東都の郊外へと消えていった。


 あまりの飛距離に、サンライズベンチはもとよりジャガーズベンチにも静寂が広がる。


「場外……ホームランだと……」


「なんて飛距離よ……!?」


 先制点を取られたことよりもまずその衝撃に鳥肌が立つ。ジョーが要求したSFFは決して甘いコースではなかったはずだ。しかも、スピットボールの幻影がまだ焼き付いているはず。それを迷わず本塁打にしてみせた。


 目測130メートルはあろうかという大飛球。これが元プロの実力か。


「先制……された」


 俺は悟られないように唇を噛んだ。四回表で許した先制。いまだ1失点で耐えている渚だが、スピットボールが使えなくなった状況での先制点はあまりにも痛い。しかも相手は……



「やったぜ、アレックス!」


「さすが独立リーガーだな、やるじゃねえか!」


「いやなんか喋れ!」



 ジャガーズベンチでは、活気を取り戻したナインに手荒な祝福を受けるアレックス・バーンバスターの姿。さすがの鉄仮面も、口の端に笑みを浮かべている。


(主砲の一発は、チームに流れを呼び寄せるからな)


 俺はゆっくりと唇を舐めた。続くは4番、ダガーJ。こちらも、凡打になったとはいえスピットボールを初見で合わせたバッターだ。


 ジョーが慎重にサインを出す。外角へボール球となるジャイロボール、ナギサ1号。


(本塁打の後だ、慎重策は悪くない)


 サインを確認した俺もうなずく。が――



「!?」



 渚が投じたのはどまんなかの直球。積極打法のダガーJがそれを見逃すはずもなく――


(失投……いや、サイン無視か? どうして!?)


「もらったぜっ!!」


 左打席から放たれる大ぶりなアッパースイング。痛烈な弾丸ライナーがライトを襲う。


「GOGOGOGO!」


 走りながら左腕を振り回すダガーJが一塁ベースを蹴った。矢のような打球がぐんぐん伸びていく。



「かめちゃん、つるちゃん、頼む!」



 長打コース。俺は祈ることしかできない。ライトのかめちゃん、センターのつるちゃんが追う。


「「捕るよー!!」」


 双子の声が重なる。外野に設けられたラッキーゾーンにかめちゃんが駆け上がった。ガチャガチャとスパイクとフェンスが触れ合う金属質の音がする。


「ホウ、まるでニンジャだな」


 壁を駆け上がるかめちゃんに、相手ベンチではペニー少佐が余裕の笑みを浮かべた。


「だが、爆撃機には敵うまいよ」


 緑色のブレスレットがきらめく。必死に差し出したグラブをあざわらうかのように、ダガーJの打球はラッキーゾーンを越え――スタンド最前列に飛び込んだ。


「YEAH!!」


 アレックスに続き、ダガーJの連続ホームラン(バックトゥバック)。ダイヤモンドを一周したダガーJとアレックスが拳を突き合わせた。




【四回表終了】百合ケ丘サンライズ0-2フライングジャガーズ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ