第24話 未来戦術『ツインチャンス打線』
百合ケ丘繊維の朝は早い。
目を覚ました俺は、上下ユニフォームに身を包んだ。百合ケ丘繊維工場で作られた新繊維とやらで織られたユニフォーム。装飾は桃色のラインのみというシンプルさ。
食堂に入ると、すでにナインが集結していた。みな一様に決意に満ちた表情。ジョーだけは下を向きうつむいているが、事情を知っているのは俺だけだ。
「おはよう、みんな」俺はナインの顔を見渡した。
「安心してくれ。これが俺たち――サンライズ最後の試合には決してしない。今日はみんなに約束した初勝利の日だ」
冥子のヒップアタックのせいでちょっと遅くなっちまったがな、と俺は軽口を叩く。冥子がチッ、と舌打ちをした。
「余計なこと言ってんなよ……それよか今日の作戦をビシッと頼むぜ、監督!」
「そうだな。では発表しよう――これが、本日のジャガーズ戦。『百合ケ丘サンライズ』初陣のオーダーだ!」
俺は黒板をくるりと回転させた。オーダー表が現れる。
1(右)二神
2(中)二神
3(二)紫電
4(捕)ジョー
5(三)不動
6(遊)剛力
7(投)海老原
8(一)八重桜
9(左)百合ケ丘
――一瞬の沈黙ののち、ナインから一様に疑問の声が上がる。
「どうしてかめちゃんが1番バッターなのかしら? つるちゃんと逆ではなくって!?」
麗麗華が黒板を指差しながら抗議する。
「私が3番!? 完全に打線が分断されてるけど……」とキリエ。
「7イニングしかないのですから、冥子を5番におくのはどうかと思いましてよ」
「だいたいジョーがキャッチャーってどういうことだよ。緊張で頭どうかしたのか?」容赦のない冥子。
「まあ、よく聞け」




