帝国の歩み
日露戦争に勝利した日本はロシアから譲渡された旅順、大連地域を関東州として関東都督府を置き、一個師団の独立守備隊を置いた。
後の関東軍であるが、詳しい話は後で語ろう…
『韓国併合』
それは史実の日本が欧米のような強国になるには新たなる領土が必要となり、日本の国防上に重要な地域の朝鮮半島に目を向けて行った行為である。
だが、この世界の帝国は違った。
日露戦争に辛うじて勝利した後、確かに大韓帝国を保護国化し、最終的に併合しようとする動きが出てきた。
しかし、伊藤博文らが
「今は領土拡大よりもロシアとの戦争で疲弊しきった国内産業や国民生活をどうやって立て直すのかが重要だ」と発言した。
さらに軍部からも
「無理に併合して韓国国民の反日運動が加速化し、独立運動にまで発展したら日本は経済的にも軍事的にもより疲弊し、国際的な立場を失ってしまう」とし併合反対を訴えた。
このように日本政府は各方面から反対の訴えが出された為に、韓国併合を断念した。
しかし、併合強硬派が水面下で暗躍していた……
伊藤博文は政府が併合を断念した後、明治天皇に参内し
「日本が韓国併合をしていれば、各地で反日の火が燃え上がり日本に有益な事は何一つ起らなかったと存じます。韓国が日本の国益に繋がる方法と致しましては、後々に韓国を独立させ日本と恒久的な同盟を交わし、国防や経済の点で密接な協力関係を築く事と存じます。」と奏上した。
この言葉は後に新たな変革をもたらす事になった。
一九○九年 十月
伊藤博文が自宅で何者かによって暗殺されたのだ!
警察の調べで犯人は併合強硬派の者による犯行と断定された。
このことを聞いた明治天皇は信頼していた伊藤が暗殺された事に驚愕し、韓国併合という考えを払うために政府や軍部の幹部を呼び出し
「朕は韓国の完全独立を承認し、日本はその援助を行うように」と発言した。
その場にいた誰もが驚いたのだが、大日本帝国の国家元首の発言に異を唱える人は誰もおらず、日本はすぐに行動に移り併合強硬派は潰滅した。
そして、大韓帝国皇帝の高宗に対して完全独立承認、日本はそれを援助するという旨を伝えた。
高宗は直ぐさま国民にこの朗報を伝えた。
すると、韓国国内では民衆の万歳の声が広がった。
しかし、日本も日露戦争によって国内はまだ疲弊しており、もう少しの回復を待ってからの独立となった。
中国では孫文による
『辛亥革命』
が起こって中華民国が建国された。
しかし、孫文が大総統を辞任し袁世凱が大総統に就任すると独裁政治を始めるという史実通りの歴史を歩んでいた。
一九十二年 七月三十日
明治天皇は崩御された。
乃木大将は明治天皇の大葬の当日、後を追って自宅で殉死した。
この事は日本軍全体に波及し、人命尊重を徹底していた陸海軍はこれからいかなる事があっても殉死は認めない方針になった。
さて、少し話を逆上るが
明治四十年に日本は『帝国国防方針』を策定した。
総理大臣は統帥権を理由に関与は出来なかったが、十分妥協できる案であった。
概要
・陸軍
ロシアとの戦争は当分起らないとし、
軍拡は行わず国内産業を活性化させる事を望む
・海軍
島国である日本では輸送を怠れば陸上戦でも負けるのは先の戦争で証明されており、制海権の獲得は絶対条件であるからして、早急にとは言わないが艦隊拡充を要求する
・共通
新技術や新兵器の開発、実用化を求む
・国家目標
国権の拡張、国利民福の増進
これを見た当時の内閣総理大臣の西園寺公望は、この方針を見てほっとした。
経済が疲弊しているのに、度を超えた軍拡を主張(特に陸軍)をしてこないか心配していたからだ。
よって、海軍の『ある程度』の拡充と新兵器などは何とかできるだろうと考え、出来るだけ応えるようにしていった。
だが、英国が最新鋭の戦艦ドレッドノートやさらに上をいくオライオンを完成させたことにより
薩摩型戦艦
筑波型戦艦
鞍馬型戦艦
は竣工前に旧式艦の烙印を押されてしまった。
建造中止にはならなかったが、維持費節約のために一部兵装の取り外しを行った。
その後、海軍は財政を圧迫させる訳にいかず、拡充を諦めて後々最新技術を盛り込んだ艦艇を作るために、史実とは違い新しい実験艦を作る事を決めた。
河内型実験戦艦
基準排水量 二万トン
全長 百六十メートル
最大速力 二四ノット
兵装
五十口径 三十.五センチ連装砲二基
四十五口径 三十.五センチ連装砲四基
四十五センチ水中魚雷発射管五基
『河内』『摂津』の実験艦二隻を起工させた。
武装が少ないのは、これから開発される兵器や技術を搭載させる為と、練習艦としても使用できるようにだ。
さらに、武装が少なくなり、機関も蒸気タービンを搭載したために最大速力が大幅に上昇した。
これでも十分に支援作戦には従事できるのだが…
それからは海軍で新造艦艇は作られる事はなかった…
あの大戦が始まるまでは……
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