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第十七話 開戦八分前

時刻は全て日本時間です







ギルバート諸島

西南西・千キロ


 この海域に、日本海軍連合艦隊第一艦隊が北へと艦首を向けて、どこまでも続くような深い闇の色をした海を疾走していた。


 陣容は旗艦・大和を先頭に、第一戦隊の長門、陸奥、第二戦隊の扶桑、山城、伊勢、日向、第三戦隊の比叡、霧島、以下、空母四、重巡四、軽巡四、駆逐艦四十。先頭は戦隊、次に二個水雷戦隊、最後尾に空母という形で航行しており、灯火管制を敷き、無線封止の最中である。


旗艦・大和艦橋


「しかし、あれを見ると壮大な景色ですなぁ〜」


 艦橋の外から後方に続いている日本海軍の誇る戦艦郡を観覧して戻ってきた高柳艦長が満足げに話す。


「艦長。もう少し緊張感を持ちたまえ」


 そんな高柳艦長をたしなめたのはこの第一艦隊司令長官である高須四郎たかす しろう中将だ。彼は横須賀にて、山本長官からこの艦隊を預かり、米太平洋艦隊撃滅に向けて今に至るのだ。


「そうですが、あれを見るとどうも……なぁ、結城君もそうだろう?」


 高柳艦長は高須中将の後ろでバレないように後方に続く艦隊を覗いていた結城に向けて言葉を発した。


「へっ!?あ、あぁ、そ、そうです…ね」


 急に話しかけられた結城は辿々しく返事をしてしまい、それを聞いた高須中将はチラッと結城を横目で見た後、溜め息をついた。


「シャキッとしたまえ、シャキッと。……全く。もうすぐ零時を回るんだぞ」


 腕時計を覗いた高須中将に続いて高柳艦長、結城、側にいる美桜、艦橋にいる参謀や水兵達はたちまち緊張感に胸が支配された。


 現在時刻、十二月七日午後十一時五十二分。開戦まであと、八分だ。


「ですが、本当にトラック諸島に奇襲攻撃を仕掛けるなんて、ヤンキーも中々やりますね…」


 緊張の糸でピンと張りつめた空気の中、結城は独り言を言うように呟く。


 結城が言ったトラック奇襲攻撃とは、米海軍の空母である、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズがトラック諸島東方、千キロに進出しており、米軍の暗号電からも空母機動部隊によるトラック奇襲攻撃が確実視されている事実の事である。なぜ、この事が日本海軍に筒抜けなのかというと、帝国情報局が解読した暗号電を始め、潜水艦部隊が敵機動部隊の行動を監視していたからである。


 更に米軍は、日本軍が防衛困難として十一月半ばに放棄したマーシャル諸島に輸送船団を派遣し、ここを拠点に中部太平洋を制圧、フィリピンへの道をこじ開けるつもりのようだ。しかし、これも日本側に情報は筒抜けであり、その輸送部隊の後方には米太平洋艦隊の主力がトラックへと向けて航行中なのも把握済みだ。


 日本海軍はあえて、何も知らないフリをして敵機動部隊を喉元まで誘き寄せ、こちらの航空機で一気に叩き、その後方にいる敵主力部隊を艦隊決戦によって打ち負かす、という、相手の作戦の裏をかく作戦を立案し採用した。


 そして、何故艦隊決戦なのか。それは、米軍に航空機の有用性を認識させないためである。航空機によって太平洋艦隊を撃滅してしまえば、アメリカは空母を主軸とした新生太平洋艦隊を直ぐに誕生させてしまうほどの工業力を有している為だからだ。そこで、敢えて艦隊決戦を行いアメリカを更に大艦巨砲主義に走らせる。これが狙いだ。


「あぁ、流石というしかないよ。しかし、裏をかかれている事実を知らないとは…少し哀れだがな」


 高須中将は、依然として腕時計からは目を離していなかったが、結城の呟きに同意した。そんな高須中将と結城の独り言の様な会話を聞いた高柳艦長が口を開く。


「けれど、少し心配ですな。本当に敵さんはこちらの動きは分かっておらんのでしょうか?」


 この第一艦隊は無線封止の最中であり、最近の情報はほとんど入っていなかったのだ。だが、高須中将は情報局からもたらされた事を信じて予定海域へと船を動かし続けた。


「大丈夫だ。もし何かあればスグに緊急無線が内地から届くはずだ」


 高須中将は依然として腕時計を見据えていた。


「それに、米潜水艦から発信される電波も傍受されておらん。大丈夫なはずだ」


 そう、第一艦隊は必然か偶然か、敵潜水艦からはまだ見つかってはいない。理由として、高性能ソナーによって潜水艦が潜んでいる海域をいち早く特定して回避していることや、奇跡といったことが挙げられる。


 高須中将の言葉の後、艦橋内は静まり返った。聞こえるのは、大和が波を切り裂く音と、機械の電子音だけだった。





 結城はそっと、自分の左腕を持ち上げる。腕に巻かれている時計を見ようと目を凝らしてみるが、まだ目が慣れていなかったのか、少しボヤけて見える。しかし、徐々に鮮明に見えてきた。長い針が五十九分を示し、短い針は十二に近く、秒針は四十五秒を過ぎていた。


カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ


 秒針は徐々に丸い円の頂上へと上っていく。


カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ




カチッ






現在時刻

一九四一年 十二月八日 午前零時











作者『いよいよ開戦です。いやぁ〜長かった。もうすぐ一年ですよ(笑)けれど、ようやくここまで来ました。これからも頑張ります(`∇´ゞ


それと、フィリピン方面の模様とマーシャル沖海戦どちらから書こうか迷っています(汗)

まぁ、現状は艦隊決戦の方から書こうと思っていますけど……

更新速度が遅い私めでございますが、長い目で、見守って頂けると嬉しいです

m(_ _)m

コメントも何かありましたら、ドンドン下さい。

それでは、また近いうちに(;∇;)/~~

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