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第十三話 同時多発テロ







あれから数ヶ月……


 結城や美桜は、山本長官のもとでせっせと働いていた。勉強、査察、ちょっとの休暇、訓練、事務、これらの事をこなしていくうちにあっという間に過ぎ去った数ヶ月だった。


 そんな中、欧州ではアドルフ・ヒトラー率いる、ナチス・ドイツが怒濤の快進撃を見せていた。


 一九四十年の六月には、フランスが降伏し、イタリアもドイツの快進撃に相乗してイギリスに宣戦布告し欧州戦線では戦闘がますます激化していった。


 そして、八月にはイギリス本土攻略のための対イギリス航空戦『バトル・オブ・ブリテン』が開始されるはずだった。


 しかし、作戦開始前に奇妙な事がおきたのだ。


 なんと、ドイツ空軍総司令官であり国家元帥とまで言われた、ヘルマン・ゲーリングが空軍総司令官のポストから失脚したのだ。


 各国の新聞では、ヒトラーの暗殺計画に加わっていたなどと言われたが、ヒトラーはただ『空軍総司令官の地位は彼には重すぎた』とし、後任にはローベルト・フォン・グライムを指名した他には何の発表もなかったので、真相は謎に包まれた。


 だが、これによって、バトル・オブ・ブリテンは無期限延期となり、イギリス本土上陸作戦も頓挫してしまう事になってしまう。


 しかし、イギリスをヨーロッパ大陸からは完全に追い出した形となったドイツは、バルカン半島侵攻や、ロンメル将軍率いるドイツアフリカ軍団をアフリカに派遣し勢力を着実に拡大していった。




そうして


-ハワイ州州都ホノルル-



 この日のハワイは快晴であり、気温も三十度近くもあるのだが、メインストリートには人がごった返しており、ウィンドウショッピングをしているカップルや、こんな暑さの中きちんとスーツを着て働いているサラリーマンがところ狭しと歩いている。


「ねぇ、兄さん。久しぶりの休暇で、最近かまってもらえない、妹にもっと色々買ってよぉ〜」


 そんな人混みの中、暑さのせいなのか、気だるそうに歩いている兄と、暑さなど気にせず必死に新しい洋服をせがんでいる妹がいた。


「無理だ。俺の給料じゃ、洋服二着までが限界だ」


「ちぇっ、どうせ、メアリーさんにもっと買ってあげるんでしょ!」


 それを言った途端、兄は顔を赤くして妹の頭を軽く叩く。


「ち、ちげーよ。ったく、何いってんだ、お前は」


「いったーい!妹に手を上げるなんて、最低ね」


 まだ、赤くなってそっぽを向いている兄に、恨みを持った眼差しで見つめる妹。


 そんな、妹の眼差しを横目で見た兄は一つ、盛大な溜め息を吐き出した。


「悪かった。そんな目で見るな。あと一着だけなら買ってやるから」


 妹の頭を撫でながら優しい眼差しで答える兄の言葉を最後まで聞いた妹は、その恨みがましい眼差しを止めて、満面の笑顔に早変わりし、兄の手から離れ少し先のブティックへと走り出したのだが、途中で振り返った。


「メアリーさんにもたまにはこんなことしてあげないとダメだよ!に・い・さ・ん?」


「お前っ!!」


 そうして、また顔が赤くなる兄。


「幸せになってね、兄さん!」


 さっきまでの嫌味な言い方から優しい、妹からの言葉だった。


 そんな妹に、顔を赤くしながらも『あぁ』と返事をして苦笑いをする兄。


「兄さん、早く〜!」


 そんな兄に優しく微笑んだ後、妹は走り出した。


 それが、兄、ジョン・スミスが見た、妹、ジェシカの最後の姿だった。


 最初に聞いたのは凄まじい炸裂音、その後視界に真っ赤に燃える炎が、そしてその後に襲ってくる爆風がジョンの体を簡単に吹き飛ばす。


 そして、回りは悲鳴と怒号が入り交じり、アクション映画でも見ているような感覚に陥っていく。


 視界が徐々にフェードアウトしていく中、ジョンは力を振り絞り一言呟いた。


「ジェ……シ…カ」




 一九四一年、九月十一日にアメリカの都市であるボストン、シカゴ、サンフランシスコ、ホノルルにて同時爆破テロが発生した。


 各地では当初、ドイツの攻撃や日本による攻撃、黒人による白人への攻撃だとして大いに混乱した。


 被害としては、死者九名、負傷者四十一名と、無差別テロとしては少ない方だったのだが、国民は事態の早期真相解明を望み、新聞はどこの国の攻撃かで話題はもちきりとなった。


 ルーズベルト大統領も早期真相解明へと乗り出すように指示を出した。


 そして、テロから数日が経ってから事件の実行犯達が逮捕された。


 それは、日本人と日系人で構成されたグループであったのだが、そいつらは獄中で何も喋らないまま、隠し持っていた毒薬で全員が自殺した。


 この事で、事件は迷宮入りかと思われたがルーズベルト大統領は、日本による爆破テロであると大々的に発表し、謝罪と賠償を日本に対して請求したのだ。


 何故、ルーズベルト大統領はまだ確定もしていない黒幕を日本としたのか、答えは簡単である。


 日本がアジアの盟主になるのを恐れたからだ。


 日本がアジアの盟主になれば、確実に驚異になるのは必定、そして何よりアジアマーケットに対するアメリカの影響力が低下するからだ。


 それに加えて、ルーズベルトの人種差別意識と野望があったのだ。


 たかが東洋の奴らを図にのらせたくない、と。


 そして、これを期に以前ドイツと技術協定を結んでいた日本と戦争に突入し、技術協定があったのを利用しドイツに宣戦布告して、それに勝利、アメリカを世界一の国家にする、というものである。


 その為に、この爆破テロはルーズベルトには格好のエサとなったのだ。


 日本としては、何の身に覚えのない、とばっちりであった。


 いくら実行犯が日本人であったとしても、日本側からしたら何の指示も出してはいなかったし、ハワイに潜入していた諜報員だって何もしていなかったのだから。


 それに、もしやるのだったら無差別ではなく、軍関係の施設に爆弾を仕掛けるであろうからだ。


 そういった事も含めて、日本政府はアメリカ政府に幾度となく話し合いのテーブルに着くように交渉していたのだが、アメリカは頑として席に座ろうとはしなかった。


 そんな強固な姿勢で迫るアメリカ政府と、困惑している日本政府が話し合いを模索している最中、またもや爆破テロが発生した。


 今度は日本の都市である、新潟、横浜、広島、長崎である。


 今回も、死者や負傷者は少なかったが、日本の新聞はアメリカの報復であると騒ぎ立てた。


 日本は、犯人の逮捕に躍起になったのだが、結局犯人は捕まる事はなく、真相はこちらも迷宮入りとなってしまった。


 しかし、憶測が憶測を呼び、遂に日本政府はアメリカ政府に事件の真相を問いただす事になってしまい、それに対してルーズベルトは激怒し、全米に日本は自分達がしたことに謝罪もしないまま、今度は我々を犯人に仕立てあげ頭を下げさせようとしていると、演説を行った。


 そして、両国の国内世論が互いに反日、反米へと傾いていくのはそう遅くはなかった。




「ふっ……予定通りに運べばいいのだが…」


 アメリカの首都、ワシントンにある白い家の一室でルーズベルトは不適に笑い、未来に築かれるであろう、栄光のアメリカに想いを馳せるのであった。








作者『ん〜、少し無理矢理感が否めませんね(汗)

まぁ、僕もさっさと戦闘描写を描きたいですから(汗)

さて、ようやく開戦への序曲が始まりました。

欧州戦線も少し変化を見せました。

ただ、ゲーリングについては後々、真相を描くのであしからず

もし今回の話で何かありましたらコメント下さい。

なんか、やる気になります(笑)

あっ、もちろん修正、加筆していきます。

是非、未熟な私めにご助言を……m(_ _)m

では…』

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