第九話 連合艦隊大改装
結城が汗水垂らしてヒィヒィと飛行機の操縦訓練をしている中、一九三七年から始まった『連合艦隊大改装』はピークを迎えていた。
日本各地や旅順に作られたドッグにはいつでも何かしらの艦艇が入っていた。
これは、ワシントン海軍軍縮条約やロンドン海軍軍縮条約の期限が切れた事が大きな理由である。
一応、ワシントン軍縮条約は三十三年に失効されるはずだったのだが、ロンドン海軍軍縮条約の失効の三年前ということで足並みを揃えて、次の新たな条約締結をするとロンドン海軍軍縮会議の席上にて発言が起きて三年間延長された。
まず行われたのは旧式艦の改装である。
戦艦、空母、駆逐艦、軽巡、重巡の順番で改装に入った。
まぁ実際の所、改装は条約失効前から始まっていたのだが……
・戦艦
金剛型戦艦・四隻
基準排水量 三万三千トン
全長 二百二十三メートル
最大速力 三十二ノット
兵装
四十五口径 三十五.六センチ連装砲四基
五十口径 十五.二センチ単装砲六基
四十口径 十二.七センチ連装高角砲八基
四十ミリ四連装機銃二十基
二十五ミリ三連装機銃八基
金剛は、元々が巡洋戦艦であり装甲が従来の戦艦より薄かったため、機関を強化して高速戦艦として生まれ変わった。
二十五ミリ三連装機銃は、四十ミリ四連装機銃の補助的な役割を持たせるため、開発された。
扶桑型戦艦・四隻
全長 二百二十メートル
基準排水量 三万四千七百トン
最大速力 二十七.七ノット
兵装
四十五口径 三十五.六センチ連装砲四基
五十口径 十四センチ単装砲八基
四十口径 十二.七センチ連装高角砲六基
四十ミリ四連装機銃十六基
二十五ミリ連装機銃六基
扶桑型は、重防御に重点を置いたため日本の戦艦群の中では一番速力が遅くなった、が、大和型、琉球型(後述)に続く防御力を誇っている。
・空母
若鷹型空母
基準排水量 一万三千トン
全長 百八十メートル
最大速力 三十一ノット
兵装
十二.七センチ連装高角砲四基
四十ミリ四連装機銃十二基
最大搭載機数 四十二機
搭載機数もそれなりにあり、改装してまだまだ現役で活躍させることとした。
初鷹型空母
基準排水量 一万六千トン
全長 二百十八メートル
最大速力 三十二ノット
兵装
四十口径 十二.七センチ連装高角砲六基
四十ミリ四連装機銃十四基
最大搭載機数 五十六基
姉妹艦が存在しないので、若鷹と戦隊を組み運用させることとなった。
・駆逐艦
峯風型駆逐艦・十四隻
基準排水量 千四百トン
全長 百十メートル
最大速力 四十ノット
兵装
四十五口径 十二センチ単装砲四基
四十ミリ四連装機銃六基
六十一センチ四連装魚雷発射菅一基
爆雷十六個
高速からの敵艦に接近、雷撃という戦法に期待が持たされる。
睦月型駆逐艦・二十二隻
基準排水量 千七百トン
全長 百二十メートル
最大速力 三十五ノット
兵装
四十五口径 十二センチ単装砲四基
四十ミリ四連装機銃八基
六十一センチ三連装魚雷発射菅一基
爆雷三十個
攻撃、護衛、両方の運用法がありこれからの活躍に期待される。
・軽巡洋艦
川内型軽巡洋艦・十四隻
基準排水量 五千五百トン
全長 百七十メートル
最大速力 三十四ノット
兵装
五十口径 十四センチ単装砲四基
四十口径 十二.七センチ連装高角砲二基
四十ミリ四連装機銃十基
六十一センチ連装魚雷発射菅二基
吹雪型駆逐艦などの、艦隊型駆逐艦の旗艦として活躍が期待される。
・重巡洋艦
古鷹型重巡洋艦・二隻
基準排水量 一万千五百トン
全長 二百五メートル
最大速力 三十四ノット
兵装
五十口径 二十センチ連装砲五基
四十口径 十二.七センチ連装高角砲四基
四十ミリ四連装機銃六基
六十一センチ三連装魚雷発射菅四基
高角砲と機銃の交換だけを行い、若干の速力低下はあったが抜群の攻撃力は健在。
青葉型重巡洋艦・四隻
基準排水量 一万四千トン
全長 二百十メートル
最大速力 三十五ノット
兵装
五十口径 二十センチ連装砲三基
四十口径 十二.七センチ連装高角砲四基
四十ミリ四連装機銃十基
六十一センチ四連装魚雷発射菅二基
こちらも高角砲と機銃の交換だけを行なった。
長門型戦艦・二隻
基準排水量 四万千トン
全長 二百三十メートル
最大速力 二十九ノット
兵装
四十五口径 四十一センチ連装砲四基
五十口径 十四センチ単装砲六基
六十五口径 十センチ連装高角砲八基
四十ミリ四連装機銃十八基
二十五ミリ三連装機銃六基
連合艦隊の旗艦でもあったため、改装される予定の艦艇全てが改装し終わるまで、要するにギリギリまで伸ばし、最後に改装されることになったのだが、この時は既に他のドッグでは新造艦艇の健艦に取りかかっていた…
さて、これらの艦艇を近代化改装した結果、連合艦隊の様相は一変した!
更に、改装し終わって空になったドッグには新たな新造艦艇の建造が進められていった。
この頃になると、全国的にブロック工法や電気溶接といった最新の造船法が普通となっていて、従来の建造期間を大幅に短縮させることに成功した。
そのため、改装艦がドッグに入っている内に、艦体の各部分を工場で作り始めていた。
・戦艦
琉球型護衛戦艦・二隻
基準排水量 四万四千七百トン
全長 二百四十六メートル
最大速力 三十四ノット
兵装
五十口径 三十五.六センチ三連装砲三基
六十五口径 十センチ連装高角砲十四基
四十ミリ四連装機銃四十八基
二十五ミリ三連装機銃十八基
この世界の帝国は日露戦争の教訓から防御に目を向ける傾向があった。
だが、時間が経つにつれて護衛艦艇の不足という問題が発生し、議論が巡らされた。
攻撃が最大の防御、や、護衛艦艇などという物を作ってどうやって戦うんだ、などといった意見が出てきた。
政府としても、防御ばかりでは…という意見が出てきたため、戦艦を建造…だが、ただの戦艦ではなく護衛も行える『護衛戦艦』を建造した。
主砲、速力、対空火力、防御力では申し分ない性能だが、対艦戦闘では若干の不安がある、が、十分対応出来るとして、ここに護衛戦艦が誕生した。
もちろん、最新式の対艦、対空電探を装備しており外観は大和型戦艦に似ている。
六十五口径 十センチ連装高角砲は、十二.七センチ連装高角砲の後継として誕生し、様々な技術革新から、砲の命数や威力は少ししか低下せず、射程、発射速度、被害半径の増加から採用された最新式の高角砲である。
名称
『琉球』『和泉』
大和型戦艦・二隻
基準排水量 六万八千トン
全長 二百八十メートル
最大速力 三十ノット
兵装
四十五口径 四十六センチ三連装砲三基
六十口径 十五.五センチ三連装砲二基
六十五口径 十センチ連装高角砲十二基
四十ミリ四連装機銃四十四基
二十五ミリ三連装機銃十四基
護衛戦艦の建造に着手したものの、帝国には航空主兵の考え方が普通になってきており、戦艦の老朽化、さらに大型正規空母の建造、護衛艦艇の大量建造で、艦隊決戦が起こった際に果たして勝てるのか?という疑問の声と不安が出てきた。
(偏った考え方だけでなく、広い視野で物事を見れる人材が多い)
そこで、極秘裏に世界最強最大の戦艦の建造に着手した。
しかし、資材などは他の艦艇の建造に優先的に回せられること、更にこれ以降の戦艦建造計画の凍結という条件付きだ。
機関を最新式の物にして三十ノットという高速を発揮した他、四十六センチ砲、電探、防御力、対空火力、ダメージコントロール、どれをとっても比類なき性能を発揮して文字どおり不沈最強戦艦が誕生した。
なお、六十口径 十五.五センチ三連装砲はこの大和型に搭載させるために開発されたもので、最大仰角角度などの上昇や防御面でも装甲を強くするなど、が施されている。
名称
『大和』『武蔵』
・空母(護衛空母)
翔鶴型正規空母・四隻
基準排水量 三万トン
全長 二百七十六メートル
最大速力 三十四ノット
兵装
六十五口径 十センチ連装高角砲十四基
四十ミリ四連装機銃二十四基
最大搭載機数 百二機
一応、飛龍型正規空母の拡大発展型として建造され、装甲の強化、搭載機数の増加、エレベーターの増設といった拡大発展という言葉に嘘はない、最高の空母が誕生した。
名称
『翔鶴』『瑞鶴』『友鶴』『宝鶴』
飛鷹型中型空母・二隻
基準排水量 一万九千トン
全長 二百三十八メートル
最大速力 三十四ノット
兵装
六十五口径 十センチ連装高角砲八基
四十ミリ四連装機銃二十基
最大搭載機数 七十二機
これから建造される空母も合わせて、日本海軍が保有している空母は大型空母が八、軽空母が二、練習艦となっている風翔が一、である。
こう見てみると、建造期間が短く、実用性に富んでいる中型空母が無いという事になり建造が決定されたのがこの、飛鷹型中型空母である。
搭載機数は減少したが、そのかわり、電探、カタパルトの設置など、特に防御力に配慮して建造された。
この艦は一九四一年の七月に就航し、連合艦隊大改装の時期の中、最後に就航した艦になった。
名称
『飛鷹』『蒼鷹』
更に、一九四○年後半から、きな臭くなってきた国際緊張の中、不足すると予測される護衛空母の建造負担を軽減させるため、この頃から日本政府は民間の商船が建造される場合、最初から空母への改装を前提とした設計にするよう、指示を出しはじめた。
・重巡洋艦
高雄型重巡洋艦・六隻
基準排水量 一万七千八百トン
全長 二百三十メートル
最大速力 三十五ノット
兵装
五十口径 二十.三センチ連装砲四基
六十五口径 十センチ連装高角砲八基
四十ミリ四連装機銃二十二基
二十五ミリ三連装機銃 四基
六十一センチ四連装魚雷発射菅一基
いわゆる足柄型重巡洋艦の拡大発展型として建造され、もちろん電探、カタパルトを装備している。
名称
『高雄』『羽黒』『愛宕』『鳥海』『神室』『福智』
・軽巡洋艦
最上型軽巡洋艦・四隻
基準排水量 七千トン
全長 百九十メートル
最大速力 三十五ノット
兵装
六十口径 十五.五センチ連装砲三基
六十五口径 十センチ連装高角砲六基
四十ミリ四連装機銃十四基
六十一センチ四連装魚雷発射菅一基
高瀬型軽巡洋艦の反省から、護衛することを中心に考えた、護衛型の軽巡である。
名称
『最上』『三隈』『鈴谷』『熊野』
・駆逐艦(護衛駆逐艦)
朝潮型護衛駆逐艦・十四隻
基準排水量 二千百トン
全長 百四十メートル
最大速力 三十六ノット
兵装
六十五口径 十センチ連装高角砲三基
四十ミリ四連装機銃十六基
爆雷六十八個
白露型駆逐艦を参考に量産されることになった駆逐艦であり、後々まで作られる護衛駆逐艦の原型ともなり影響を残すことになった。
暁型駆逐艦・四隻
基準排水量 千八百トン
全長 百九十メートル
最大速力 三十九ノット
兵装
六十五口径 十センチ連装高角砲三基
四十ミリ四連装機銃 四基
六十一センチ四連装魚雷発射菅四基
護衛駆逐艦の量産から、戦艦でも問題になった、艦隊決戦問題が浮上し、建造されたのがこの暁である。
魚雷発射菅を多数装備し、日本海軍が保有している駆逐艦の中では一番の攻撃力を備えている。
これらの駆逐艦は日本の造船所でも建造が間に合わず、一部韓国にて発注された。
・潜水艦
この時、大和型と同様に極秘に建造が進められている艦があった。
詳細はいつか…
今、記した艦艇は一九四一年の十月までに全てが連合艦隊に組み込まれた。
ただ、大和型の武蔵だけは間に合わなかった…
まぁ五年前と比べて連合艦隊の様相は本当に一変し、日本海軍史ではこの五年間を『連合艦隊大改装』と記されるようになった。
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「はっ!?なんか、何か違うところで何かが進んでしまってるような!?」
「おいっ!結城練習生っ!休憩は終りだ!早くこんかっ!!!!」
「は、はいぃぃっ!今行きます!」
結城は休憩していた椅子から思いきり立ち上がり教官の所へ走り去っていった。
「頑張ってねぇ〜。私、外でお茶してくるから」
美桜はそんな結城の背中を見送った後、やる気なく手を振り訓練所を後にした。
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結城の心の声
(なんか、扱い酷いし、出番少なくねぇ〜!!!!???)
すまん……
作者『最近やっと忙しさから解放されつつあります。
ですが、これから航空機や陸軍の説明もしていかなきゃならずまだ不定期更新が続きそうです。
すみません
ですが、なるべく早く更新したいと思っております。
そのためにも
評価、感想をよろしくお願いします
m(_ _)m』