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第七話 南京事件

中国語は日本語にしてます







ブォーン


「綺麗な月だな…」


 一台のジープが夜の南京へ向けて林道を走り抜ける。


 そのジープには運転手を含めて、四人が乗っていた。


 そして、助手席に乗っている男がさっきの言葉を発したのだ。


「えぇ…この月明りが我々を祝福しているのか、そうでないのか、どっちなんでしょうね…」


 運転手が呟く。


「どっちでもいいさ。俺達はどっちみち…死ぬんだからな。変わるのは、どう死ぬかだ…」


 助手席の男は後ろの席にいる男から、モーゼルC96を受け取り弾を込め、煙草に火を付けてそう言った。


「そう…ですね……」


ガタン!ドンッ!


 道はきちんと舗装されておらず、ジープが激しく揺れ動く。


「毛沢東同志、万歳だ…」


 視線の先をキッと睨み、助手席の男は青天白日のマークが縫われている、中華民国の軍服に袖を通した。


 彼らの視線の先には南京の街があり、青天白日旗が翻っている国民党本部があった……


――――――


キキッー


 国民党本部の入り口まできた先程のジープは停車機の前で止まった。


「どうした?今日はもう誰も来ないはずだが?」


 衛兵が停車機の横にある監視部屋から顔を出して様子を伺う。


 それから、運転手が懐を探るのは、ほぼ同時だった。


パシュン!


「ぐっ…がはっ」


 ジープの運転手が手製の消音装置が付いた銃で衛兵を撃ち抜く。


 そして、打ち抜かれた衛兵は口から血を吐き出し、壁にもたれながらズルズルと体から力を抜いていく。


 それを確認してから、後部座席に乗っていた一人が車を降りて遮断機を上げる。


「よし、予定通りだ。このまま慎重にいくぞ」


 助手席の男が皆に視線をむける。


 同乗している男達の目は、血走り、使命感に燃えていた。


 皆の意志が一緒なのを確認して、ジープは走り出す。


 そしてとうとう、党本部の入り口まで侵入した。


 入り口では、二人の衛兵が小銃を持ち警備しており、突然ジープから降りてきた四人組に疑念の目を向けた。


「おい、お前ら、今日はもう面会者はいないはずだぞ?どうやって入ってきた?」


 警備の一人が彼らに近付きながら聞く。


「西安司令部から火急の言付けを伝えにきたのだ」


 一番先頭にいる男が答える。


「それなら無線があるだろう?なぜわざわざ直接会うのだ?」


 そう強気の姿勢で質問をした瞬間、先頭の男が後ろに続いていた男に目配せをした。


 すると、その男は懐に手を突っ込んだ。


シュパンッ!


「がはっ!」


 後ろで今のやり取りを見守っていたもう一人の警備の男が腹を紅く染めながら膝を付く。


「貴様っ!」


 打たれた男を一目見て、敵だと気付いた衛兵だったが、振り向いた瞬間目にしたのは、月明りで黒光りする銃口だった…


シュパンッ!


 頭を打ち抜いた銃弾は後ろの壁にめり込み、鮮血が飛び散る。


 その時、月が雲に隠れた。


「神は、祝福してくれなさそうだ…」


 夜空を見上げ、一言呟く。


「はい?何か言いましたか?」


 最初に銃を放った男が後ろから声を掛ける。


「いや、何でもないさ…よし!主席室の場所は分かってるな!?一気にいくぞ!」


 そうして、男達は走り出した。


 階段を上り、廊下に出て、右へ左へと曲がり目的の場所までもうすぐの所まできた。


 奇跡か偶然か、はたまた必然か、軍人とはすれ違わなかった。


「そこを曲がった所です!」


 すでに全員が銃を抜き、いつでも戦闘が開始できる状態だ。


 そして、最後の曲がり角を曲がる。


 すると、主席室から一組の男女が出てくる所だった。


「ちぃっ!邪魔だぁ!」


バァッン!


 モーゼルC96を無造作にぶっぱなす。


 しかし、銃弾は空気を切り裂いただけで二人を捉えることは出来なかった。


 男の方が走っている男達に気付き、女を脇に抱えて主席室に転がりこんだからだ。


「クソッ!何だ今の奴は!?反応が早かったぞ!?」


 モーゼルを放った先頭の男が悪態をつく。


 が、すでに二人は部屋に立てこもってしまった。


「時間との勝負だ!いくぞっ!」


 部屋の前まで来た男達は、鍵の掛かったドアの前で息を揃えた。


バンッ!バンッ!


 ドアノブに銃弾を撃ち込み、足で扉を蹴り開けた。


――――――


「ありがとうございます!」


 結城と蒋介石は握手を交わし、先程の約束を確認しあった。


「いや、こちらこそありがとう。この内乱が終わったら、また来てくれ」


「是非!それでは、失礼します」


 笑顔でそう答え、美桜と二人で主席室を出る。


 すると、廊下が騒々しくなっていた。


 結城が廊下の先を見ると四人組の男達が凄い形相で迫っていた。


 なにか、急ぎの伝令かとも思ったが、男達が握っている銃を見てそうではない、と認識した瞬間、先頭の男が銃をこちらに向けた。


「くっ…、美桜!危ない!」


 美桜の脇に手を差し入れる。


「えっ…?」


バァッン!


 銃弾が放たれた瞬間、結城は美桜を抱えて出たばかりの主席室に転がり込む。


「きゃあっ!」


 美桜から腕を抜き、すぐさま扉を閉めて鍵を掛ける。


「な…何ごとだ!?」


 蒋介石が倒れこんでいる美桜に手をさしのべながら、結城に聞く。


「敵ですよ!誰かは知りませんけどね!」


 結城はぶっきらぼうに答え、美桜が持っていた鞄から、山本長官から貰ったM1911A1を手にとりマガジンを装填する。


「奥の机に隠れて下さい!早く!すぐに入って来ますよ!」


 通訳が訳すのに少し時間がかかったが、なんとか入ってくる前に机の裏に隠れた。


 結城はその間にテーブルや棚を倒して遮蔽物を作り、この騒動に気付いた国民党軍がくるまで持ちこたえようとしていた。


バンッ!バンッ!


 そして、結城が隠れた瞬間にドアノブを銃でぶち破り、足で蹴ったのか勢いよく扉が開かれた。


「くそっ!」


バンッ!バンッ!


 その瞬間、扉に向けて銃を撃ち放った。


「がぁっ!」


 その内の一発が、襲撃者達の一人の肩を貫き、廊下側に倒れ、のたうち回った。


 それを見て、部屋の中には入ってこず、廊下の外から中の様子を伺いながらこちらに銃を撃ってくる。


バァッン!バンッ!バァン!


 結城が作っていた遮蔽物のおかげで、襲撃者達の銃弾はまだ誰も撃ち抜いていなかった。


バァンッ!


 この銃撃戦の中、蒋介石も机の鍵付き引き出しの中からモーゼルを取り出し、応戦する。


「一体何なんだってんだ!」


バンッ!


 悪態を付きながら応戦する。


「やつら、共産党だ!」


バァンッ!


 蒋介石もそう言って応戦する。


「もうっ!何なのよ〜っ!」


 美桜は耳を両手で塞ぎながら喚いている。


バンッ!バンッ!


「美桜!弾!」


 そろそろ弾が無くなる所で美桜にマガジンを要求する。


 美桜はそれを聞いて、鞄の中からマガジンを一つ手にとる。


バンッ!


 最後の一発を撃ち放ってマガジンを受け取る。


「救援は!?遅すぎるぞ!!」


 マガジンを装填しながら蒋介石に言う。


バァンッ!バァンッ!


「君が何を言ってるか知らんが、救援が遅すぎるぞ!何をやっている!!」


 蒋介石がそう言った瞬間、襲撃者達の一人が懐から黒い鉄の塊のようなものを取り出した。


バンッ!


「手榴弾だっ!!」


 応戦しながら、結城がその存在に気付く。


「手榴弾って…この部屋に投げ込まれたら一貫の終わりじゃないのよ!!!」


 美桜が綺麗に説明する。


 蒋介石も通訳からその事実を聞かされる。


バァッン!バンッ!


「だが、それを出してきたということは、救援が近付いてきて焦ってるってことだっ!」


バァンッ!バァン!バンッ!バァッン!


 襲撃者達が一斉射撃を加えると、遂に手榴弾が投げ込まれた。


ゴンッカラカラカラ


 手榴弾がゆっくりと床を転がる。


「こんな所で死ぬわけにはっ!」


 蒋介石は、机から出て手榴弾に向けて走り出す。


「おいっ!ちぃっ!!」


バンッ!バンッ!


 結城も蒋介石を助けるために、援護射撃を加える。


バァッン!


 蒋介石が手榴弾を手に取り、窓に向けて放り投げた。


バリィンッ

ドォォンッ


 放り投げられた手榴弾は窓の外で爆発した。


 爆風が部屋の中に入ってきて、一瞬視界を失わせる。


バァッンッ!


 そして、一発の銃弾が、蒋介石の左腕を捉えた。


「がはぁっ!」


 蒋介石はそのまま倒れ込み、落としてしまったモーゼルをもう一度拾おうともがく。


 それを見て男達が、トドメをさすため部屋になだれ込んできた。


「この人を今死なせる訳にはっ!!!!」


 結城も一瞬遅れて飛び出す。


 それに対して先頭の男は、銃口を蒋介石から結城に移した…が、


バァン!


 結城が一番奥の奴に一発打ち込む。


バァッン!

 先頭の奴が一発撃ったが、結城は凄まじい反応を見せしゃがむ、そして、その銃弾は結城の頭をスレスレで通過し、しゃがんでいた結城は、銃を持っている右手に絡み付き左足で足払いをして男を倒した。


バァン!


 倒した男の喉に膝を付けて、突入してきた三人の内の真ん中にいた男の銃を撃ち弾いた。


「動くな!」


 銃口を男の眉間に合わせ、日本語でも意味が通じるように叫んだ。


「大丈夫ですか!?」


 戦いが終息したのを確認して、美桜と通訳が結城、蒋介石に走り寄る。


「和也!大丈夫なの!?」


ドタドタドタ


 そうして、救援が駆け付けた。


――――――


 襲撃者達は全員捕らえられたが、自分達が共産党員である事しか吐かず、服毒自殺した。


 蒋介石は左腕を負傷したが大事には至らず、銃創が残る程度だった。


 この襲撃事件は国民党内の腐敗が原因と見ており、軍服の入手経路は賄賂により手に入れた物や警戒の不備などが再認識され蒋介石が率先して改善するようにしていった。


 この事件の内容は、毛沢東率いる共産党が放った暗殺部隊が、賄賂等を駆使してちょうど客と面会する日を探り当て、油断している隙に蒋介石を殺害するというものだったが、蒋介石と一緒にいた警護の者が時間稼ぎをして、救援が到着、全員逮捕と発表された。


 この事件は後に『南京事件』と呼ばれるようになる。


 ここで真実は歴史の闇に葬られた。


 まぁ、非公式に国家レベルの話し合いをしていたのだから当然だろう。


 そんなゴタゴタもあり、予定は大幅に遅れたが結城達は無事に南京を発った。


 それから、二ヵ月後、中華民国は満州の独立を認め、ここに満州国が建国された。








作者『いや〜

やっぱライブはいいですねぇ〜

ステレオで聞くよりやっぱ生ですよ!

最高でした!!

てゆうか、そんな暇あったらやることやれ、ということでね(汗)

忙しいです

落ち着くのは二月後半ですかね(汗)

それまでは不定期になりそうです

では

ご意見ご感想お待ちしております

m(_ _)m』

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