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第三話 『夢』の正体

ご都合主義入りま〜す。





 男はたたずんでいた。


 全てが無に帰り、焼け野原となった大地に。


 人は野に捨て置かれ、無言の叫びを上げており、生き残っているものは居なかった。


 男は歩きだす。


 何も喋らず、ただ黙々と、何処に行くとも分からず、ただただ歩いていた…




―――――――


 ベッドからゆっくりと上半身を起き上がらせる。


「また、あの夢か…」


 結城はふぅと息を吐き、時計を見ると、そろそろ起きて支度をし始めないとヤバい時間帯になっていた。


「ふぁ〜〜、起きるか」


 夢を見ることに馴れてきた結城はそう言って立ち上がり、支度を始めた。


 この『夢』が自分の運命を変えることになったとも知らずに…




――――――――


 東京の自宅から横須賀まで鉄道を使って移動し、車の乗り継ぎでようやく鎮守府まで辿り着いた。


 広大な土地に建てられた立派な建物には、連合艦隊司令長官が滞在しているからなのか警官や歩兵が多く、ざわついていてピリピリしていた。


「ご苦労さま」


 結城は昨日、真田局長から渡された封筒の中に入っていた身分証を歩兵に見せて、一言そう言い建物の中に入っていった。


 建物の中は西洋式で床は大理石になっていて、海軍の一統括機関なのか疑ってしまうような豪勢な作りだった。


「連合艦隊司令部にもなりそうな作りだな…」


 そう言って、この建物は最近改築していたことを思い出した。


「まさか…な」


 脳裏によぎった考えを振り払い、長官に会うにはどうしたらいいものかと一人ホールに佇んでいた。


 鎮守府に来いとだけ聞かされていたのでアポはあるんだろうが、方法が分からなかった。


 無責任だなと思いつつ、周囲を見渡してみると、軍服を身にまとった軍人やスーツ姿の男達の中に、軍服をきた女性が結構目に入った。


 男と違うのはズボンではなくタイトスカートであることであり、デザインは女性用スーツを改造した感じであった。


 今の時代、女性の社会進出は当たり前になってきており、軍人になる女性も少なくはないし、情報局にも女性はいたが、軍服ではなくスーツだったので少し違和感があった。


 そんな中、後ろ姿だけであったが、肩より少し伸びた髪の女性が目についた。


(ひ…一目惚れじゃないぞ!ただ長官にどうやったら会えるのか聞くだけ…だ)


 そうやって自分を正当化した結城はその女性を小走りで追いかけた。


「あ…あの、お聞きしたいことがあるんですが…」


 肩を叩いて、たどたどしくそう言うと、その女性は振り返った。


「はい?何でしょ……」


「あのです……ね…」


 お互いの顔を見た二人は固まった。


 いや、回りの空気自体が固まったといっていいだろう。


 三秒くらいたっただろうか?二人の時間が動きだした。


「み…美桜ぉぉ!?」

「か…和也ぁぁ!?」


 見事なシンクロ!国際試合なら満点が出るであろう。


「な…なんでお前がここにいるんだ!?」


「なんで…あんたがここにいるのよ!?」


「俺のセリフだ!」


「私のセリフよ!」


 二人は回りを気にせず大声で痴話喧嘩をし始めた。


 すると、一人の中年の男が割って入った。


「おいおい、何しとるんじゃ、橘君。痴話喧嘩をするのはいいが、場所を考えろ。」


 まぁまぁと、両手で二人の肩を叩きながらその男はそう言った。


「何が…痴話喧か……」


 肩に手を置かれた美桜と呼ばれた女性はその男の手を払い、顔を見た瞬間、彼女の顔がひきつった。


「く…黒島参謀!し…失礼いたしました」


 美桜はそう言って敬礼した。


「そうかしこまらんくてもよいわ。ガハハハッ」


「黒島ってあの変人参謀の!?…っうが」


 美桜の肘が結城の脇腹に入った。


「変人参謀…いかにも。わしが黒島変人参謀じゃが、君は誰だね?」


 黒島は口角を吊り上げ、ニヤニヤしながらそう言った。


「し…失礼しました!今日から海軍に籍を移せと山本長官から連絡がありまして参上しました。元帝国情報局局員、結城和也です!」


 そして、敬礼。


 結城が情報局局員と言ったのは、特殊工作部隊はその隠密性から公には存在していないことになっていたからだ。


「ん…?結城?…あぁ!結城君か!」


 そう言って黒島はポンっと手のひらを叩いた。


「そうかそうか、君が…『啄木鳥』は元気かね?」


 黒島は特殊工作部隊のことが回りの人にバレぬように遠回しに聞いた。


「はい。すくすくと育っていますよ」


 黒島の意図が分かった結城も少し笑みを浮かべてそう答えた。


「それはよかった!」


 ガハハハと黒島は笑ったが、隣に居た美桜は二人が喋っていることが訳が分からなくて頭に?マークが浮かんでいた。


「それで、結城君は長官に会いに来たんだったな?」


「はい。面会することになったと聞いて来ました」


「では、案内しよう。橘君も来たまえ」


 そう言って黒島は先に歩いていった。


 黒島の後ろを付いて行く二人は小声で喋っていた。


「あんた情報局にいたの?私はてっきり海軍にいるかと思ってたわ」


「最初は海軍に入ったんだが色々あってな…」


「ふ〜ん。そうなんだ」


「そうゆうお前こそ海軍にいたのかよ。連絡の一つも寄越さず」


「しょうがないでしょ。あんたの連絡先なんて分からなかったんだから」


「あっ、そうか…」


「今気付いたの?バカじゃないの?」


「うっ…反論できん」


「当たり前でしょ。そうだ、涼介は元気?」


「あぁ、あいつは情報局にいるよ」


「そうなの?二人揃って情報局なんて、ホントに仲良しね」


「なんだ?お前がここに居るってことは、俺達を追いかけて来たんじゃないのか?」


「最初はそうだったわよ」


「なっ…」


 そこで結城の顔は赤くなった。


「けど、ここにいたらだんだん楽しくなってきてね。今さら転職しようとも思わないわ」


 それを聞いて結城は落ち着きを取り戻した。


「そ…そうか。でも海軍で何やってんだ?」


「秘書…みたいな感じかな?まだ女性では士官にはなれないからね。下士官にはなれるけど、中途半端って嫌じゃない?だから、秘書」


「ふふっ。お前らしいな」


「笑うとこじゃないでしょ」


「すまん。…ぷっ」


「もういいわよ」


 そんな話をしていると黒島は扉の前で足を止めた。


「ここが長官室じゃ。ほれ、入りんかい」


 そう言って結城を促した。


 緊張した面持ちでドアをノックした。


コンコン


「本日付で情報局から転属してきました、結城和也です」


「…入りたまえ」


「失礼します」


 そう断って扉を開けると、なんとも大きな机と椅子があり、その椅子に山本長官が何かを書きながら座っていた。


「すまないが、これを書き終わるまで少し待っていてくれないかね?」


 そして、机の前まで歩いた結城は山本長官が口を開くまで直立不動であった。


「すみません、山本長官。タイミングが悪かったですね」


 そう黒島が頭を掻きながら謝った。


「いや、大丈夫だよ」


 それから少し経った後、山本長官はペンを置き顔を上げた。


「さて、君が結城君かい?」


「はいっ!啄木鳥隊隊長でありました。」


 結城はここでしまったと思った。


 この部屋には、自分、山本長官、黒島参謀、そして美桜がいたのだ。


 美桜は啄木鳥隊のことは知らないのだから、言ってはいけなかったと非常に後悔した。


 ちらっと美桜を見ると、眉間にシワを寄せて意味が分からなそうだ。


「ふふふっ。まぁ啄木鳥隊のことはいいとして、君をここに呼んだ訳を話してもいいかね?」


 啄木鳥隊のことはどうでもいい、という感じで話を流した山本長官に少し疑念が浮かんだが、理由を早く聞きたいという自分の好奇心に負け、その疑念を振り払った。


「お願いします。昨日、急に転属と言われて混乱していたんです」


「ははっ。すまない。啄木鳥のデータを見てすぐ連絡したからね。すまなかった」


「はぁ」


 結城は相槌を打つことしか出来なかった。


「で、君を海軍に呼んだ一番の理由は、君が最近見るようになった『夢』のせいだよ」


「はい?」


 予想GUY、全くもって予想GUYです、的な顔をして結城は開いた口が塞がらなかった。


 更に、美桜もポカンと口が開いていた。


「まぁ、無理もない。『夢』を見ているから海軍に呼んだ、では意味が分からないだろうからな」


 そう言った山本長官は『夢』について語りだした…




 簡略して話そう。


 結城が毎晩見ている『夢』は、予言、あるいは、未来、なのかもしれないというのだ。


 勿論、確証は無いし、実証も出来ない。


 けれど、その夢をかの日露戦争の英雄と言われている、大山巌、東郷平八郎、児玉源太郎も見たことがあるらしいのだ。


 だが、全てが見える訳ではなく、断片的に見えるらしい。


 一応、山本長官も見たことがあるようだ。


 内容は、いつの時代かは分からないが皇居に向かって皆が膝を付いて泣いていたというのだ。


 なんともメルヘンな話だ。


 たかが『夢』がそんな意味を持っているかもしれないと言われたのだから、普通の考えだろう。


「ば…馬鹿げてますよ。たかが『夢』ですよ!?そんなわけ…」


「これを…見てくれ」


 結城の言葉を遮り、机の棚から取り出した日記帳のようなものを手渡した。


 そのノートを手に取り中をあらためる。


「まさか…」


 結城は驚愕の目でノートを読み進めていった。


「そんな…嘘だろ…」


 呆然と立ち尽くす結城の手から、後ろから近付いてきた美桜がノートを奪い取る。


「あ、おいっ」


 だが、時すでに遅し、美桜は中を読み始めていた。


「いいじゃない。聞くもん聞いちゃったし、後戻りも出来なさそうだしね」


「だからってなぁ…」


 結城があたふたしていると山本長官が片手で結城の行動を静止させた。


「まぁ、いいじゃないか。乗りかかった船だしいいだろう。それにしても君達は知り合いなのかね?随分親しいみたいだな」


 少し微笑みながら結城に優しい目で問い掛けた。


「べ…別にこいつはただのおさなな…」


 幼馴染みと言おうとした所で、今まで黙っていた黒島参謀が口をはさんだ。


「ここにくるまでずっと喋っていましたよ。全く、熱くてかないませんわ」


 襟元を掴み、パタパタと熱そうにしながら、楽しそうにニカニカと笑っていた。


「く…黒島参謀!変なこと言わないでください!」


 怒鳴られた黒島参謀は両手を上げ降参したと言わんばかりにヘラヘラしていた。


 山本長官は長官で必至に笑いを堪えていた。


「ククククっ。分かったよ。…少し話が逸れてしまったが、『夢』の件は信じてもらえたかな?」


 少し興奮してしまった結城も山本長官の切り替えしになんとか冷静さを取り戻し、チラッと美桜が持っているノートを見た。


「えぇ。信じなきゃいけないみたいですね。あんなもの見せられたら。…軍神様には逆らえません」


 ノートの内容だが、東郷平八郎の日記帳であり、自分の夢について書いており、黄海海戦の夢の事や、日本海海戦の夢の事が書いてあって、夢の通り敵が動いたと書いてあった。


「そうか。信じてくれるか。ありがとう。これで私も肩の荷が降りたよ」


「肩の…荷?」


「あぁ。先代が守ったこの日本。更に未来をよりよくしようとしてくれた人達の希望を裏切る訳にはいかんからね。『夢』のことを知っている人は少ないんだ…」


 色々な人々の命や希望を知ってしまったからなのか、部屋の空気が少しだけ重くなった。


 少し考えていた結城は山本長官を見据えた。


「結城和也!全身全霊を持って頑張りたいと思います!」


 敬礼をしながら彼は決意ある宣言をした。


「ありがとう…」


 山本長官は右手を結城に差し出し、結城もその手を取って固い握手を交わした。







作者『最近ホントに忙しい今日この頃

まぁ

頑張るって決めた以上頑張ります!

って、意味分からなかったですね

すみません(汗)

更新速度はバラバラになりそうです

なるべく早くするように頑張ります!


では

ご意見ご感想お待ちしております

m(_ _)m』

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