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第二話 心友





「海軍って…海軍!?」


 転属といっても情報局内での移動だと考えていた結城はパニックになっている。


「まぁ、驚くのも無理はない。この『帝国情報局』が開設されて以来、初の軍部への転属だからな」


 真田局長は結城の肩を右手で盛大に叩いている。


「で、でも、どうして私なんかがよりにもよって海軍なんかに転属なんですか??」


 結城は当然の疑問を局長に投げかける。


「ふむ。その事なんだが…私にも分からないのだよ。海軍が君の事を知ることができるのは、啄木鳥隊が組織された際、陸海軍に渡したデータだけなのだがね…」


 真田局長は、本当に分からないと小首をかしげた。


「そのデータだけで海軍ですか。一体誰が決めたんです…?」


 それを聞いた途端、待ってましたと言わんばかりに、局長は口元を緩ませた。


「聞いて驚くなよ?連合艦隊司令長官からの直々のお達しだ」


「や、山本長官が自分を?」


「あぁ、連合艦隊司令部からも連絡がちゃんと来ている」


 海軍に転属ということだけでも異例なのだが、連合艦隊司令長官直々となっては異例中の異例である。


 結城はまたパニックに陥ってしまった。


「な、何かの間違いでは?」


「はぁ、落ち着きたまえ結城君。疑うのも分かるが、私はそんな質の悪い冗談は言わないよ。」


 それを聞いた結城は落ち着きを取り戻そうと頭の中を整理した。


 『山本長官が自分を海軍に転属を命じ情報局に連絡した』


 何か重要な意味があるのだろうかと思案してみるが見当もつくはずが無く、勝手に悩んでいると、局長の顔つきが変わった。


「結城和也隊長!君を明日付で帝国情報局から帝国海軍へと転属を命じる!」


「はっ!」


 反射的に敬礼をして返事をしてしまった。


 まぁ、断ることなど出来ないのだが…


「疑問は全て山本長官に直接聞いてこい!」


 白い歯を二カッと見せそう言ったが、真田局長は結城にとっての衝撃発言をさらっとしてた。


「直接…ですか?」


 敬礼をしていた右腕をおろし聞いた。


「そうだ。明日には横須賀の鎮守府にいる長官に会うことになっている」


「急ですね…」


 結城は驚きを通り越して呆れ始めていた。


「うむ。司令部からの連絡にその旨も含まれていたんだ」


 そう言って、机に置いてあった書類を結城に手渡す。


 その書類をゆっくりと読み、何かの間違いではないことを確認し、落ち着いた結城は啄木鳥隊の事を思い出した。


「…自分が海軍に転属になるのはいいですが、啄木鳥隊はどうなるのですか?」


 今の結城は自分の事より部下達のことを気に掛ける冷静さが戻ってきていた。


「啄木鳥隊は、副隊長の天地君を副隊長から隊長に昇格してもらい君の穴を埋めてもらう」


 結城はホッとした。


 天地なら安心して自分の後を任せられると信じられるからだ。


「分かりました!天地なら大丈夫でしょう。では、明日横須賀に向かいます」


「うむ。君なら海軍でもやっていけるだろう。頑張ってこい!」


 真田局長から封筒を受け取り、敬礼をした後、結城は踵を返して局長室を後にした。



ジリリリッ


 局長室に電話が鳴り響いた。


「はい。真田ですが?……えっ!?………ですか?…えぇ……では、き…………を……に…えぇ……分かり……」


ガチャ


「……大変なことに…なりそうだな」


 受話器を置き、固まったままの真田局長は誰もいない部屋で一人、つぶやいた。




 『帝国情報局』本部を後にした結城は自宅(といっても、情報局が用意したボロアパート)に戻り支度をしていた。


 時刻は十一時を少し回った所だ。


コンコン


 すると、玄関の扉をノックされた。


「和也ぁ、いるかぁ〜?」


 結城は誰が来たのか検討がついたのか、すぐさま玄関に向かい扉を開いた。


「よぉ、涼介。どうしたんだ?」


 扉の向こうにいたのは、肌が白く、スラッとした体で、Yシャツをだらしなく着た天地涼介その人だった。


「どうしたって、お前なぁ〜、局長に呼ばれたって聞いて心配になって来てやったのに、『どうした?』なんてよく言えるなぁ〜、ん?」


 肩を落とした後、ジト目で結城のことを見ながらそう言った。


「ははっ、冗談だよ。ほら、立ち話もなんだから入れよ」


 結城は天地を招き入れた。


「散らかってるから適当に座ってくれ」


「いつもの事だろぉ〜?わぁってるって」


 いつもの調子で結城の肩に手を回して叩いている。


「コーヒーでいいよな?」


 天地が座ったのを確認した結城は台所に向かいながら言った。


「あぁ。お菓子はケーキでいいぜぇ〜」


「んなもん、あるかっ!」



 いつものような日常、まるで仲良し三人組でいつも遊んでいた頃のように、子供の頃に戻ったように、ふざけあったりしていた。



「久し振りだな、お前とこうしてゆっくり話すのは」


 そう言って結城はコーヒーを一口含んだ。


「あぁ、そうだな…あいつ、元気かな」


 天地は天井を見上げある人物を思い浮かべる。


「…」


 結城は黙ってしまった。


 なんせ、連絡一つも寄越さないので大丈夫と断言出来なかったからだ。


「…、すまん。辛気臭くなっちまったな」


 天地はすまなそうに、苦笑した。


「いや…」


「で?局長はお前になんだって?」


 空気を払拭するように、明るく話し掛ける。


 そして、コーヒーに手を掛ける。


「そのことなんだが…俺、明日から海軍に転属になったわ」


ブーーーッ!


 天地は盛大にコーヒーを吹いた。


「な、なにぃ〜!?」


「き、汚ねぇな〜」


 テーブルを拭き始めるが、天地は目をパチクリさせていた。


「マ、マジでか!?」


「あぁ。マジだよ」


「じゃ、じゃあ啄木鳥は…どうなるんだ?」


 身を乗り出しながら質問していた。


「それなら、お前が隊長に昇格だってよ」


「そ、そうか…」


 落ち着いたのか、ゆっくりと腰を降ろした。


「それにしても…急だな。でも、なんで海軍なんかに?」


 ぶちまけられたコーヒーを拭き終わり自分のコーヒーを飲んでいた結城はさも分からないと肩をすくめた。


「もしかして、『夢』の件なのか?」


 恐る恐るといった口調で話し掛けていた。


「んな訳ないだろ。だったら、海軍じゃなくて精神病院だろ」


 結城は最近見るようになった『夢』を天地に話しており、さらに、陸海軍に渡すデータに、夢について書いていたのだ。


「そ…それもそうだな」


 まだ若干の抵抗があるのか、声が強張っていた。


 結城はそんな天地を見て明るく、いつもの通りに話した。


「明日、山本長官に会いに行って理由を聞いてくるつもりだ。」


 そんな結城の姿勢を感じ取ったのだろう。


 天地も吹っ切れた様子で顔を上げ、そうか、と言って結城の肩に腕を回して笑った。


「じゃあ同じ職種は今日で最後だな」


「あぁ。頑張れよ。あ・ま・ち・隊長」


 二人して笑い合った。


「よっしゃ!今日は休みだし、お別れ会として話しまくり、騒ぎまくり、飲みまくろうぜ!」


 そう言って急に立ち上がり冷蔵庫の中を物色し始めた。


「おい!人の家の冷蔵庫を勝手にまさぐるな!」


 そう言いながらも結城は微笑んでおり、その時、親友…いや心友って本当に良い物だな、と結城は思っていた。


「おい和也、酒が無いぞぉ〜。買ってこいよ」


「って未成年だぞ!俺達は!しかも俺が買いに行くのかよ!?」


「ったりめぇだろ!?来賓は俺だぞ!?」


「普通、逆だろ!?」


「分かったよ、じゃあジャンケンだ!」



…………結城は両手に買い物袋を持って道を歩いていた。


 そして、こう思った。


(クソッ!何が心友だっ!メロス先生もお笑いだぜっ!!)




 夜。


 漆黒の静けさの中で一人の男が眠りにつこうとしていた。


 天地はすでに帰途についており、部屋には結城しかいなかった。


「また、見ちまうのかな」


 月明りだけが部屋を照らしている。


「一体、あの夢は何なのだろうか?」


 そんな不安の中、まぶたがゆっくりと、本当にゆっくりと、結城の視界を妨げていった。





作者『所々パロディなんかも入れていきたいと思っているので、昭和っぽくない所もでてくるかもしれませんが、そこは仕様でお願いしますm(_ _)m


あと

※お酒は二十歳になってから※


では

ご意見ご感想をよろしくお願いします

m(_ _)m』

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