海軍軍縮の波!?
日本は軍縮条約締結後、旧式化した戦艦を廃棄せねばならなかった。
薩摩、筑波、鞍馬型の六隻を中心に日露から活躍していた戦艦達である。
これらの旧式戦艦は解体させる予定だったのだが、もっと有効的な活用方法はないかという声が上がってきたので同盟国であり、軍縮条約に参加していない韓国に売却させて韓国海軍に戦艦の運用の仕方を教えることとなった。
しかし売却が決定したのも束の間、筑波型のネームシップである『筑波』が原因不明の爆発事故で沈没してしまったため、残された姉妹艦の『生駒』を標的艦として処分することになり結局売却されたのは薩摩型と鞍馬型の四隻とそれ以前の戦艦であった。
さて、旧式の戦艦を廃棄したことで日本が保有する戦艦は金剛型四隻、扶桑型四隻、長門型二隻の計十隻となり軍縮条約で取り決めた戦艦の保有合計排水量を完全に埋めたことになり、戦艦の建造ラッシュに終止符を打った。
さて、日本が次に考えたことは空母に関してである。
世界初の航空母艦を作り人類史上初めて水上艦の甲板に着艦したのも日本だ。
さらに、日独技術協定で新たな技術や知識を得たことにより航空機の進化の可能性を見出し軍縮条約では米英と同じ保有量を獲得したのである。
だが、当時世界は大艦巨砲主義が当たり前であり各国が戦艦をこぞって建造しまくっていた。
もちろん日本もそうであり、いくら航空機の可能性が分かっていても世界が大艦巨砲という考えで染まっている以上日本だけが違う考えを見出しそれを貫くことは難しいのであり、そのために長門型戦艦が誕生したといっても過言ではない。
しかし、軍縮条約の合計保有排水量が一杯になり戦艦建造に歯止めがかかったことにより、まだまだ少数派だった航空主兵主義者がこの期に航空機の絶対的優位を証明し、時代にあった艦隊、引いては軍全体を変えようとする新しい考え方を軍上層部に頻繁に具申した。
この頻繁に行われた具申を上層部も了承し、まずは航空機の優位を証明してみせるということで落ち着いた。
-この世界の帝国は頭の固い連中ばかりが上層部にいるのではなく、柔軟な考えを持った人がいるのであり、下のものの意見をよく聞いてそれを実行に移す事が出来るのである-
-閑話休題-
さて、どのようにして航空機の優位を証明するかというと、まず標的艦となる事が決定したばかりの『生駒』が使用されることになり、『風翔』と飛行場から飛び立つ航空機に魚雷と爆弾を取り付けて攻撃を行い航空機でも戦艦を撃沈することができると証明するのだ。
さすがに『生駒』に乗員を乗せて攻撃を行うことは無理であったのでドイツからもたらされた無線操縦技術を用いて遠隔操作を行うことにした。
さて、この『演習』(各国の目を欺くため演習とし勿論極秘である)は陸海軍の幹部が観戦に訪れておりこれからの建艦計画や軍の運用法に関わることになった。
結果は撃沈することに成功した。
旧式化した戦艦でありさらに対空砲火無し、操艦だけの『演習』となったが実際に航空機の攻撃だけで戦艦は沈没したのである。
この結果から、軍上層部は戦艦だとしても航空機が束になって爆弾や魚雷で攻撃を行ったらひとたまりもなく、打ち合ってたまに当たる戦艦の砲撃より航空機の方が格段に有効であるときちんと認識することができ、航空主兵主義が陸海軍に浸透していくことになり勿論その航空機に対する対策もこれまでより力を入れるようになった。
その後、空母の保有排水量を埋めるため新機軸を盛り込んだ空母を建造することになったのだが、大型か中型か小型のどの空母を建造するかを迷ったあげく小型から建造して空母運用のノウハウをもっと研究することとなった。
軽空母『若鷹』
アイランド型デッキを右舷に配置し風翔のフラットデッキとの効率性の比較を行い、さらに煙突を立てた状態だと排煙が邪魔で航空機の着艦に支障をきたす可能性があるので下方排出式の煙突を採用した。
速力は三十ノットで搭載機数は四十二機となり基準排水量は一万二千トンに及んだ。
この『演習』と同時期に、峯風型駆逐艦の次期駆逐艦の量産に移ることになった。
睦月型駆逐艦
基準排水量 千六百トン
全長 百十五メートル
最大速力 三十五.二ノット
兵装
四十五口径十二センチ単装砲四基
十三ミリ連装機銃四基
六十一センチ三連装魚雷発射管一基
爆雷二十二個
を二十二隻建造する。
この駆逐艦は民間造船で有効性を実証したブロック工法、電気溶接を用いて建造された初めての軍艦であり、効率よく艦艇を建造するために行われたいわば実験建造艦といってもいいだろう。
結果も驚異的なスピードで建造が進みこれからの建艦ではブロック工法が主流になっていった。
さらに、次発装填式六十一センチ魚雷、機銃、爆雷を搭載し艦隊攻撃や護衛を行える汎用駆逐艦となった。
さぁて、駆逐艦の建造も軌道に乗り始めた頃、戦艦が作れない以上列強各国では戦艦以下軽巡以上の艦艇を作り戦艦の補助的な役割を担わせることにしていた。
日本はその対処として同等かそれ以上の重巡洋艦を建造しこれから生起すると考えられる艦隊決戦を乗り切らなければならなくなった。(航空機でどうにかなるのでそんな艦はいらないと意見があったが、夜間に接敵した場合対処できないとして建造することに)
古鷹型重巡洋艦
基準排水量 一万千トン
全長 二百五メートル
最大速力 三十五ノット
兵装
五十口径二十センチ連装砲五基
四十五口径十二センチ単装高角砲六基
六十一センチ三連装魚雷発射管四基
十三ミリ連装機銃二基
(高角砲は後に四十口径十二.七センチ連装高角砲に換装)
を二隻
『古鷹』『加古』
まさに艦隊決戦を行うために生まれてきたといってもいいほどの高性能艦だったがその分、居住性や防御力に難があり、改良型の建造に着手することになった。
それが
青葉型重巡洋艦
基準排水量 一万三千五百トン
全長 二百十メートル
最大速力 三十六ノット
兵装
五十口径二十センチ連装砲三基
四十五口径十二センチ単装高角砲六基
六十一センチ三連装魚雷発射管二基
十三ミリ連装機銃四基
(こちらも高角砲は古鷹と同じく換装)
を四隻
『青葉』『衣笠』『妙高』『那智』
この重巡洋艦は日本が作った艦隊型の傑作型であり攻撃力は古鷹型に劣ったが居住性も防御力も申し分なく、この性能には各国が驚愕し、このような補助艦艇をきせいする軍縮会議を開催する話が持ち上がり始めた。
この話を耳に挟んだ日本は開催までにこの重巡達と同じ戦隊を組める艦隊型駆逐艦の急造を決定した。
吹雪型駆逐艦
基準排水量 千八百トン
全長 百二十五メートル
最大速力 三十七ノット
兵装
五十口径十二.七センチ連装砲三基
十三ミリ連装機銃二基
六十一センチ三連装魚雷発射管二基
こちらは二十六隻の予定であったが途中で軍縮会議が開催されたので完成したのは十二隻であった。
史実の帝国ではこのような急激かつ急速な建艦は無理であったが、生産力、工業力、技術力、財政は史実のそれを大きく上回っており可能となっているのだ。
- 一九三○年 五月 -
ロンドン海軍軍縮会議が開催され日本政府も英米の工業力をもってすれば、帝国との戦力差が開いてしまう可能性がありさらに、帝国自身も財政に圧迫を与えてしまういつ終わるとも分からない重巡や駆逐艦の建造に制限をかけるべく会議に参加した。
ロンドン海軍軍縮条約:概要
・条約の有効期限は六年後の一九三六年まで
・戦艦の各国既存艦の削減
米三隻
英五隻
日一隻
(各国一隻ずつ練習艦としてなら保有を認める)
合計保有排水量
・重巡洋艦(八インチ以下) 米:十八万トン
英:十四万六千八百トン
日:十万八千トン
・軽巡洋艦(六.一インチ以下)
米:十四万三千五百トン
英:十九万二千二百トン
日:十万四百五十トン
・駆逐艦(五インチ以下) 米英:十五万トン
日:十万五千五百トン
・潜水艦
米英日:五万二千七百トン
この内容は日本政府にとって充分とは言わないが、前にも延べたように英米と協調し波風たてずに軍縮を行うために異論を出すことなく条約を締結した。
あと、イタリアやフランスも会議に参加したのだが途中意見の相違があり条約締結には至らなかった。
その後、日本国内では軍部と政府の意見対立がワシントン海軍軍縮会議に続きまたも表面化した。
統帥権干犯問題である。
この時の批判は以前起こったものの比でははく、条約を軍部の反対を押し切って締結したため、時の内閣総理大臣の浜口雄幸は東京駅にて右翼団体に狙撃される事件まで発生することになってしまった。
この事件で政府は混乱し、これから軍部が暴走すると大慌てになった。
しかし、天皇陛下が閣僚、衆議院議長、枢密院議長、軍関係者等に対して宮中に参内せよと連絡を発した。
そこで天皇陛下がおっしゃられたことは誰もが驚愕した。
「今、軍の一部では朕を担ぎ出しいろいろ行っているようであるがそんなことは朕は望んでおらないし、国民だって望んではおらないだろう。政府が他国との話し合いを行う以上軍は政府の意向に沿うべきであると思うのだ。
……政府とは国民の幸せや諸外国との融和を計り、軍とは国を守るものであり、人々の幸せを守るべきものではないのか?これは理想郷なのかもしれぬし、実現は無理かもしれぬ。だが、その理想郷を目指す努力をすることが大事であり朕達はその努力を行うことが出来ると朕は信じたい。その一歩として朕は統帥権を放棄しその権限を政府に委任する!」
……部屋の空気が死んだといってもいいだろう。
天皇陛下はとんでもないことをおっしゃられた。
統帥権放棄
これは、明治維新以来の天皇の定義が崩れさった瞬間でもあった。
この後、政府は憲法改正の準備に取り掛かるが軍部では当初反発があったため、全軍に天皇陛下からの勅書が配られ
-昭和六年 四月十三日 正午-
日本軍全軍が皇居に向かって敬礼を行った後、統帥権は正式に政府に委任された。
作者『すみません遅れました(汗)
さぁてロンドン海軍軍縮も終わりあとは細かな設定を説明するだけとなりました!
もう少し時間が掛かると思いますが、お付き合い下さいm(_ _)m
あとご意見ご感想もお待ちしております
m(_ _)m』