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1・その発端

××町に怪人が出現しました


非情の危険度の高い怪人が××町を南西方向に進んでいます、と続け、ニュースキャスターは避難を呼びかけた。突然の、日常の崩壊を告げるその声は、××町は私の住む地区の隣町だ。いや、そんなことよりも、


「それは困る」


少し間をおいて、もう一度繰り返した。それは困る。あの町には___あと一時間、間に合うか?その疑問が出るより先に、走り出した。


***


絶体絶命って、こう言う事を言うんだろうな。

「が・・・・」

俺の名は平泉。バイトに勤しむ、ごく一般的な大学生だ。ちなみに彼女は募集中。・・・こんなことを言っている場合ではない。今、俺は、絶体絶命なんだ。

俺の首を絞める腕の力は、どんどん強くなっている。俺を持ち上げるそいつは、蹴ろうと殴ろうとも、びくともしない。

「同情するよ」

そいつは、怪人は憐れむように言った。筋肉質なその体は爬虫類のような鱗に覆われ、トカゲを思わせるその目はどこか悲しげだ。

「まだ若いな、お前。これから人生楽しもうってのに」

トカゲ怪人は虚空を見つめるとバリトンの効いた低い声でぽつりぽつりと話し始めた。

「俺は・・・底辺にいた。学校では苛められ、親からは虐待を受け、生きてきた。社会人になって、幸せを掴んでやろうと奮起したよ。ばかみてえに残業して、上司の靴舐めて・・・。でも人生って突然だよな。解雇された。その時だよ。俺が覚醒したのは。目覚めたんだ。俺は選ばれたんだ。俺は・・・俺は・・・・・・・お前は?」

虚空を見つめていた目がぎょろりとこちらを見据えた。

「何の苦労もしてなさそうな顔だよなあ。裕福な家庭に生まれて、両親に愛されて、その顔だ。きっと学校でも人気者なんだろうなあ」

首を絞める力が、さらに強くなった。

「ぐ・・・」

「これは、俺の復讐なんだ。俺を認めない社会への・・・!そしてお前はその前座だ・・・!」

視界がかすむ。首を絞められ、ほとんど呼吸ができていない。苦しい。誰か。助けて。




助けて、ヒーロー。




「・・・何だ、気絶したのか。面白くねえな、まあいいか・・・・・・え?」





どれくらい気を失っていたのだろう。俺が目覚めたとき、全ては終わっていた。先程まで自分の首を絞めていたトカゲ怪人は、泡を吹いて倒れている。

誰が・・・?というか、何で・・・・?

「とりあえず、警察呼ばないと・・・」

そういって携帯を操作し始める。コール音を聞きながら、俺は遠くを見つめていた。

気絶する、少し前に誰かの声が聞こえた気がする。まるで、少女のような声のようだった。けど、

助けてくれたお礼、言いたかったな。

一人、呟いた。


***


その少し後___


「・・・どういうことだ」

普段は人や車の行きかう町の中央通だが、今は人の姿はほとんど見えない。道路の上で喋るその二人、この場に人がいれば、彼らはあっという間に人混みに紛れてしまうであろう。

一人の男はスーツ姿で、きっちりと固められた七三分けの髪、銀のフレームの眼鏡からはいかにも真面目といった雰囲気が見える。一方、もう一人の男は筋肉質でタンクトップ一枚という、いかにも体育会系な装いだ。正反対にも見える、というより見た目から性格まで全く正反対のこの二人。だが二人には、一つの共通点があった。

ヒーロー。今や職業として認められたこの英雄の称号であるが、その称号を手にするにはたくさんの困難がある。いわゆるアマチュアと呼ばれるヒーローは世界で約6000人とも言われている。しかし、「プロ」として認められているヒーローは、たった500人。そんな選ばれたヒーローの中でも、この二人は実力者と言える。日本でも十本の指に入るだろう。

そんな彼らの仕事はたった一つ。「人の敵」を倒すこと。それが怪人でも、災害でも関係ない。ただ、「人の敵」を倒す。

___のだが、

「こりゃどういうことだ」

「・・・さっぱりわからんな」

彼らがこの町に来た理由は、政府からの依頼で、怪人を倒すためだった。それなのに、

「既に・・・やられている?」

情報通りの爬虫類のような外見の怪人は、泡を吹いて気絶している。見ると顔面には何かがめり込んだような跡がある。

「殴られてるな」

見たままにタンクトップの男、ヒーロー【脳筋野郎】が言うと、

「それぐらい見ればわかる」

スーツの男、ヒーロー【マジメガネ】は冷たく返した。

「・・・・いちいち癇に障る野郎だな」

「KYなのは昔からだろ。・・・それよりもだ。今回他のヒーローの派遣は無いと聞いていた。こいつをやったのはヒーローではない」

「じゃあ一般人が倒したってのか?こいつそこそこ強いぞ」

地面に座り込み、硬そうな怪人の鱗を棒でつつきながら脳筋野郎が言う。

「まだ何とも言えないな。とりあえず調べるしかなさそうだ・・・何を笑っている」

「だってよ、この怪人、倒した奴だろ?戦ってみてえじゃんか」

「・・・さすが脳筋だな」

「何言ってんだ」

脳筋野郎が立ち上がる。

「お前も、戦いたくてうずうずしてんだろ」

それを聞き、マジメガネは低く笑い、眼鏡を上げた。

「似てない様で似ているな、俺たち」


***


「はあっっっくしょん・・・風邪ひいたかな?」



つづく

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