現実
「あるはず。神様?もそういうのはちゃんとしてるでしょ。」
小声で呟いていたのが、1人の女子に聞こえてた様で。へへ、とその場凌ぎで苦笑すると、女子はにっこり笑顔で言った。
「ゲームか何かの事?廉くんは色々知ってるんだねー。」
成程。オタク男子はそういう誤魔化し方も可能なのね。なんだか少女の純粋な笑顔を、騙している様で、少し胸が痛んだ。
「うん、そうなんだ…。新作のゲームでさ。」
それだけ言って、ガサゴソ鞄の中をただ漁った。それにしても、流石は操れる神様。ちゃんと必要な道具は揃っている。…これをどうやって用意したのかが気になる所だが、そこは気にしたらダメなようで、気にしない事にした。
「お、お財布あった。」
「あったの?」
中に入ってたお財布を確認すると、3万円とやっぱり予約の紙が入っていた。3万円って…まあゲーム内だとなかなかの大金だ。これで生活しろと?それを用意した神は一体…それもまた、触れるのは辞めて。予約はどうやらアニメの缶バッジの箱買いらしい。それにしてもこの題名って…どこかで見たような?
「予約の紙は?あった?」
「うん。あったよ。それで、寄ってくれる?」
「勿論。いいよ。」
凪君のそういう所は、もっと評価されるべきだと思う。私は好きだよ。買い物に付き合ってくれる男子。優しいよね!!と、勝手に頭の中で1人会話をする。
「?」
凪君も、普通にいいじゃないの。ただみんなは顔ばっかり見てるから。いや、凪くんも普通に、いい顔だよ。って、本人に言ったらどうなるかな?いや、凪君じゃなくて腐女子の子が喜んじゃうかな。なんてね。
「あー、私も行くからねー?」
と、比奈子が言った。比奈子も、もし、あの本性を知らなければ、好きになってたよ。好きになってたら関係的に終わりだけど。
「はいはい。」
それにしても、割と現実の世界もゲーム界と似てる所があって面白い。いや、でも必ず戻るけど。でも、殆どのゲームは現実の世界を元に作られてるからね。現実の育成ゲームと思ってやれば楽しいかもしれない。
「何か良くない事とか考えてない?」
「か、考えてないよ!!」