おじいさんと使命
【廉くん、比奈子さん。】
悩む私に、また、更に声が聞こえた。
【…誰だ。】
【誰!?】
今度は、おじいさんの様な、優しい声。
【どうやらようやく条件が揃ったな…良いぞ。使命と、自分が置かれた立場を教えてあげよう。】
条件?条件が何かは知らないが、きっと私達が揃ったとかだろう。私は使命を聞き逃さない為にと、意識を集中させた。
【お主達2人、つまり人気者の廉くんと比奈子さんには、何の特徴もないこの青年、凪君をモテモテの男子にして欲しいのだ。凪君はモテモテになりたがっているからな。】
【…えっ…】
【出来るかな…】
【廉くんと比奈子さんは、本当は存在しない存在。わしがこの時の為に作った。記憶などは適当に埋めておいたぞ。】
色々不安になったり、ツッコミたくなった私を、神らしき存在のその人は次の言葉で私を思い切り黙らせた。
【もし、この男子がモテることになったら、次はギャルゲーの攻略対象の生徒会会長キャラにしてやろう。】
【本当っスか!!パイセン!!!】
【おいお前性格変わり過ぎだろ。それは俺もですか。】
【お主は…そうだな、優しい先輩キャラにでもしてやろう。】
【えっ本当ですかやります。】
【…えっ、まじか…なんか嫌になるわ。】
【酷くねーか。】
【じゃあ、わし行くから。】
謎の漫才を繰り広げる私達を無視して、おじいさんは消えてしまった?
【おじいさーん。】
【おじいさーん!】
2人でただ呼んでも、声が聞こえない。という事は多分消えたのだろう。と言うだけなので、確信はないが。
「…ねぇ、廉、比奈子?」
「はっ!!」
「ああ!!」
後者が、私だ。どちらも何とも可愛げがない。しかもああ!!ってなんだよ。ああ!!って。
どうやら私達、校門のすぐ先でぼーっと突っ立ってたらしい。なんとも邪魔だ。
「ごめんごめん!邪魔だったよね…!」
「ごめんね?ちょっと昨日のアニメの事考えてて。」
ぺこぺこ必死に謝る比奈子さん。…いや、アイツと、てへぺろをして、軽く済ませる私、なんだか凄く面白くて、つい、ぷぷっ、と笑みがこぼれた。
「比奈子ちゃん可愛いから許す。」
「あーもう、廉くん好きー!残念なイケメンだけどもういいや。」
いいんかい!!なんて、突っ込んでみる。
それにしても、ずっと触れないででいたけど、普通逆では…。なんで元ギャルゲーの攻略対象が男で元乙女ゲームの攻略対象が女なんだ!!
まぁ、全てはこの凪君をモテモテにすれば、解決なんだ。その為には…何でもしなくちゃ。