仲間
「そう言えば今日は予約してた商品が受け取れるとかで…アニメショップに行くとか。」
「そっか…。ありがと。凪。」
学校らしき建物に付き、入って行くと、キャーキャーと女子達の声が聞こえた。きっと、残念イケメンタイプの廉君に対してだろう。そう言えば、あのゲームのあの主人公は、大体校門を潜ると、2、3人の女子達に囲まれていたっけ。
主人公が通っている学校の先にある学校に通ってた雪ちゃんは、「もー、お兄ちゃんってば~!デレデレしちゃって…私だけを見ててよ!」 なんて、主人公に言っては困らせて居たなぁ。
「記憶飛んでたら、慣れないかな?廉は羨ましいなぁ…俺も1度くらい、モテてみたい。」
「…まぁ。…そんな嬉しくないよ。」
雪ちゃんも、かなりモテる方だったから慣れないわけでは無かった。どうしてこうも私が生まれ変わるのは大人気だけどどこか欠点のある子ばかりなのだろうか。
「なんかムカつく…。」
「そう?」
なんか、キャラクター上はモテていても、本当の自分を見られていないみたいで、嫌なのだ。本当の自分が居て、その自分がモテていたら嬉しいのかもしれないけど。
「…まぁ、いいや。」
きょろきょろ周りを見渡してみると、1人の少女と、目が合ったのでウインクをしてみると、彼女は口を抑えて悶えた。
ここの世界は倒れるとか、大袈裟な反応は無いのね。良かった。と安心する私の肩を、謎の美少女がトントン、と叩いた。
「おはよ!…あの…」
ああ、きっとこの子は更に幼馴染的立ち位置なのね。と察した。でも一応、聞いとこう。と思った所で、気が利く凪君は私に、耳打ちをした。
「比奈子。比奈子はまぁ…一応幼馴染?かな。」
「ありがと、凪。比奈子、おはよう?」
名前を聞いた所で、呼び方は合っていただろうか。私が疑問形で言うと、比奈子さんはうーん、と少し悩んでから言った。
「…うん。おはよう。…君も。」
「君?比奈子まで…変なの。あ、おはよう。」
そう言えば、なにかおはようの後に言いたげだったのはなんなんだろう。
「比奈子、さっき「ねえ、あなたの名前は?」…廉だけど…。」
思い切り、話を遮られる。それにしても、比奈子さんは、一体何を言ってるのだろう。まさか比奈子さんは本当に記憶が!?
【なわけあるか。】
「は!?」
「いきなりどうしたの、廉。」
今この人、心の中に入ってきた?
【どうやら俺とお前の状況は同じらしい。】
ちょっと頭を整理しなくなった。でも出来ない。ど、どういう事?こんな体験は、初めてだ。
【だから、まず、俺とお前は頭の中で会話が出来るらしい。…それでなんだが、お前の前世は何だった?】
先程の可愛い声とは別に、今の私の声より、少し低いくらいの声が頭の中で聞こえる。はぁ、と溜息混じりの声に少し腹が立つ。
【いや、…ヤンデレ妹キャラだけど…あ、喋れる!脳内で話してるよ!私!!夢だったんだよねーこういうの。】
【うるさい。どうやら俺達は、この世界で使命を果たさないとゲームの世界に戻れないらしい。】
【君も私と一緒なの…?】
【だから、そう言っただろう。俺は前は乙女ゲームの俺様キャラだったからな…。それでお前は、ヤンデレ妹キャラ。多分一緒と見ていいだろう。】
【…なるほど。】
一緒と知って、少し安心した自分がいた。ゲームも性別も違うとはいえ、同じ境遇の人が居れば、少し安心もする。それにしても…使命ってなんだろう。果たさないと戻れないなら、早くその使命を知らなくちゃ。