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竜王と黄金のハート 番外   作者: 葉月秋子


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7/15



 規則正しい心臓の鼓動が聞こえる。


 頭をもたれているのは、逞しい胸。

 熱いほど体温の高い大きな身体が心地よい。


 少女は頬をすりよせた。


[おじい様・・・]


 ・・・違う。


 黄金竜とは異なる、麝香〈じゃこう〉のような匂い。

 驚いて少女は眼を開いた。


 温かい力強い腕が、少女を抱いている。


 眼を上げると、金の髪をした大きく逞しい男が、片手で少女を抱き、不思議そうにもう片方の手を見つめ、指を動かし、開いたり閉じたりしている。


 竜の寝床にいる。だが寝場所は空だ。


 [じゃ、あれは夢ではなかったのかしら]


 少女は信じられずにささやく。


「・・・竜王・・・?・・・」 



 見下ろす男の眼は金。

 強い輝きに満ちた、人とは異質な眼。


「これは奇妙な身体だな。

 小さくて柔らかすぎて馴染めぬ。

 この器用な手は便利だが」


 大きな胸郭から響く低く深い声は、少女の身体に直接響いてくるようだ。


 起き上がろうとすると激しい痛みが突き上げ、少女はあえいだ。


「足を折っている。動くな」


 鋭い痛みに泣きそうになりながら、諦めて力を抜き、広い胸にもたれかかり、見上げる。


 二十代の美しい青年に見えるが、人間とは微妙に異なる端正な顔。


[人の姿になってもらえた・・・]


 私を、助けるために。



「近くに仲間がいるのだろう?」


 竜は問うた。


「そこまで連れて行ってやる」


[じゃ・・・]

 少女は期待を込めて竜を見上げた。


「約束など、せぬ」

 ぶっきらぼうに言う。


 少女は首を振った。

「約束をくださるまで、ここにいます」


「手当もせずにか?死ぬぞ」


 竜は不機嫌に言うと、少女を抱いたままぎこちなく立ち上がった。

 悲鳴を押し殺して耐える少女をそっと岩棚に下ろし、離れていった。


 少女はため息をついた。

[ここであきらめたら、おじい様の死を無駄にしてしまう]


 身体が熱い。

 熱が出ていた。

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