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規則正しい心臓の鼓動が聞こえる。
頭をもたれているのは、逞しい胸。
熱いほど体温の高い大きな身体が心地よい。
少女は頬をすりよせた。
[おじい様・・・]
・・・違う。
黄金竜とは異なる、麝香〈じゃこう〉のような匂い。
驚いて少女は眼を開いた。
温かい力強い腕が、少女を抱いている。
眼を上げると、金の髪をした大きく逞しい男が、片手で少女を抱き、不思議そうにもう片方の手を見つめ、指を動かし、開いたり閉じたりしている。
竜の寝床にいる。だが寝場所は空だ。
[じゃ、あれは夢ではなかったのかしら]
少女は信じられずにささやく。
「・・・竜王・・・?・・・」
見下ろす男の眼は金。
強い輝きに満ちた、人とは異質な眼。
「これは奇妙な身体だな。
小さくて柔らかすぎて馴染めぬ。
この器用な手は便利だが」
大きな胸郭から響く低く深い声は、少女の身体に直接響いてくるようだ。
起き上がろうとすると激しい痛みが突き上げ、少女はあえいだ。
「足を折っている。動くな」
鋭い痛みに泣きそうになりながら、諦めて力を抜き、広い胸にもたれかかり、見上げる。
二十代の美しい青年に見えるが、人間とは微妙に異なる端正な顔。
[人の姿になってもらえた・・・]
私を、助けるために。
「近くに仲間がいるのだろう?」
竜は問うた。
「そこまで連れて行ってやる」
[じゃ・・・]
少女は期待を込めて竜を見上げた。
「約束など、せぬ」
ぶっきらぼうに言う。
少女は首を振った。
「約束をくださるまで、ここにいます」
「手当もせずにか?死ぬぞ」
竜は不機嫌に言うと、少女を抱いたままぎこちなく立ち上がった。
悲鳴を押し殺して耐える少女をそっと岩棚に下ろし、離れていった。
少女はため息をついた。
[ここであきらめたら、おじい様の死を無駄にしてしまう]
身体が熱い。
熱が出ていた。




