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竜は自分の身体を見おろす。
少女より大きな、黒い布切れに包まれた体。
二本の手。二本の脚。
この大きさならば。
慣れぬ形の四肢をぎこちなく動かしながら、竜は沢に下りた。
二本の脚でバランスを取って立ち、少女の身体を掴む。
引き上げてやろうとすると、少女がか細い悲鳴をあげる。
ずぶ濡れの小さな体を震わせ、痛みに涙を流す。
[右足か]
足首の上で折れ、岩に挟まれて不自然に曲がっている。
岩をどけようとして、竜は足を滑らせた。
使い慣れない手足に苛立つ。
竜の身ならば爪の先で転がす岩を苦労してどけ、二本の手で軽い身体を抱き上げる。
動かされた痛みに少女が悲鳴をあげ、失神した。
力の抜けた荷物を抱いて二本の足で沢を登るのは、思った以上に厄介だった。
高さの感覚を失い、何度も枝で頭を打つ。
竜の身のように、身体の大きさで押し通れないのだ。
なんと不便なんだ。
少女が意識を取り戻し、首にしがみついてきた。
今度は前が見えない。首が短すぎるのだ。
抱き方を変えようとすると、痛がって泣き出した。
えい、なんと使いにくい身体だ!
前足で物を運べるのは良いが、後ろ足二本だけでは安定が悪すぎる。
なんとか岩窟に連れ戻り、足に負担がかからないように、そっと少女を岩棚のいつもの巣に下ろす。
戻ろうとして、戸惑った。
少女の小さな手が竜の服の裾を掴んで離そうとしない。
「ここにいて・・・行かないで・・・」
心に触れる吐き気のするほどの痛み。激しい恐怖。混乱。
大きな怪我などしたことのない子供は、初めての痛みにショックを受け、パニックをおこしている。
ぶるぶる震える濡れた小さな身体。
[そうか。寒いのだ]
ぎこちなく髪をなで、水を絞る。服も絞る。
考え込み、手に熱い気を集めて少女の身体にあてがう。
獣の身なら舐めてやるのだろうに。
抱いて温めてやるしかないのか。
[人間はこういう時、どうやって仲間を助けるのだ?]
気がついて、自分の上着をつまんでみる。
[そうか。この布は身体から離せるのだ]
脱ぎ方がわからず苦労して布を身体から離し、少女を包む。




