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竜王と黄金のハート 番外   作者: 葉月秋子


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6/15



 竜は自分の身体を見おろす。


 少女より大きな、黒い布切れに包まれた体。

 二本の手。二本の脚。


 この大きさならば。


 慣れぬ形の四肢をぎこちなく動かしながら、竜は沢に下りた。


 二本の脚でバランスを取って立ち、少女の身体を掴む。

 引き上げてやろうとすると、少女がか細い悲鳴をあげる。

 ずぶ濡れの小さな体を震わせ、痛みに涙を流す。

[右足か]

 足首の上で折れ、岩に挟まれて不自然に曲がっている。


 岩をどけようとして、竜は足を滑らせた。

 使い慣れない手足に苛立つ。

 竜の身ならば爪の先で転がす岩を苦労してどけ、二本の手で軽い身体を抱き上げる。

 動かされた痛みに少女が悲鳴をあげ、失神した。


 力の抜けた荷物を抱いて二本の足で沢を登るのは、思った以上に厄介だった。

 高さの感覚を失い、何度も枝で頭を打つ。

 竜の身のように、身体の大きさで押し通れないのだ。

 なんと不便なんだ。


 少女が意識を取り戻し、首にしがみついてきた。

 今度は前が見えない。首が短すぎるのだ。

 抱き方を変えようとすると、痛がって泣き出した。


 えい、なんと使いにくい身体だ!


 前足で物を運べるのは良いが、後ろ足二本だけでは安定が悪すぎる。




 なんとか岩窟に連れ戻り、足に負担がかからないように、そっと少女を岩棚のいつもの巣に下ろす。


 戻ろうとして、戸惑った。


 少女の小さな手が竜の服の裾を掴んで離そうとしない。


「ここにいて・・・行かないで・・・」


 心に触れる吐き気のするほどの痛み。激しい恐怖。混乱。


 大きな怪我などしたことのない子供は、初めての痛みにショックを受け、パニックをおこしている。

 ぶるぶる震える濡れた小さな身体。


[そうか。寒いのだ]


 ぎこちなく髪をなで、水を絞る。服も絞る。

 考え込み、手に熱い気を集めて少女の身体にあてがう。


 獣の身なら舐めてやるのだろうに。

 抱いて温めてやるしかないのか。


[人間はこういう時、どうやって仲間を助けるのだ?]


 気がついて、自分の上着をつまんでみる。


[そうか。この布は身体から離せるのだ]


 脱ぎ方がわからず苦労して布を身体から離し、少女を包む。

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