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黒竜は苦しげに喘ぎながら、岩窟の奥の白い砂の敷き詰められた一角にうずくまった。
黄金竜の気に入りの寝床だった場所。
くつろぐ姿も、同じ形。
なので。少女はいつも黄金竜と話すとき使っていた懐かしい場所、竜の頭のそばの岩棚に乗り、新たな岩窟の主に心と言葉で話しかけた。
『竜王、あなたにお願いに来ました』
聞こえたのだろうか。
不安になった頃、巨大な竜は片目を開けて娘を見た。
黄金の瞳。
『お前は何だ。なぜ話せる』
不機嫌な、うなり声。
『私はあなたが殪した黄金竜の血を継ぐ者です』
竜は両眼を開いた。
『竜王、あなたにお願いに来ました。
この山のふもとに人間の町があり、たくさんの人間が暮らしています。
あなたが殪した黄金竜は、人間を守護してくれていました。
私、あなたにも人間を守ってほしくて、人間を襲わないと約束して欲しくて、ここに来たのです』
竜は大きく息をつき、けだるそうに眼を閉じた。
『うるさい』
不機嫌に一言うなる。
『お願いです、このままではロードリアスは魔獣たちに襲われ、滅びてしまう。
あなたが守ってくださるなら、私、何でもします。
食べてくださっても構いません』
フッ、と竜は鼻でせせら笑った。
人間の肉は冷たくて好きではない。
彼は草原に何千頭も群れ集い、他の竜や魔獣たちの餌食となる草食獣ギャラクよりも、その数倍の大きさがあり、家族単位の群れで動く、木の葉を主食にするクラダンの肉を好んでいた。
巨大な爪で武装するクラダンの成獣の重さは8ダン(およそ2トン)。
このちっぽけな人間の何十人分になるか。
『お前を喰う気はない。行け』
『いいえ、行きません。どうか、私の願いをきいて』




