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『ひとたび竜珠を与えて強化させた種に、再び竜珠を与えて交わってはならない』
それはこの世界の管理者である竜族の理〈ことわり〉、血に深く刻み込まれた掟。
竜珠を与えられ、竜と交わった種は、その能力を最大に発達させた、強靭な種となる。
黄金竜に竜珠を与えられて強化された人間族。
その末裔である少女に、再び竜珠を与えて交われば、その子孫はさらに強靭なものとなってしまうだろう。
この世界の生き物の、バランスを崩すほどに。
異世界から来たこの人間という種族に、それほどの力を与えてはならない。
それは竜としての本能で感じる事。
この竜にとって、人間とは守るに値しない種。
この少女を交尾の相手として認めることは、出来ない。
・・・だが。
一人、この少女とだけは・・・離れがたいのだ。
名を交わし合い、竜珠を捧げる相手にすることは出来ない。だが、みずからの名を預けても、自分と共にいて欲しいと、竜は願ったのだ。
・・・しかしこの時、少女の名を受け取らなかった竜は、その長い生涯に渡って、深い後悔を抱くことになるのだった。
「シルヴァーン」
少女は何よりも大切な宝物のように、その名を口にする。
「シルヴァーン。私の竜王。
私のために人の姿になってくださった方」
人間よりも熱い唇に触れ、そっと口づけする。
笑い返して、竜が少女を抱く。
「愛しているわ、シルヴァーン」
降るような星空の下、遠くロードリアスの灯を見おろす岩窟の前で。
竜と少女は、互いの心を深く寄り添わせたのだった。
竜王と少女の物語 完。




