12
12
少女が傷ついたことから、竜は人の姿を取ったまま、その面倒を見始めた。
(巣の中の子ネズミから、手のかかるペットになっちゃったみたい・・・)
人間の形を取った竜は、人間の感覚と感情を体験し、理解し始める。
老獪な黄金竜と違って、人型になったことなどないこの若い竜は、初めての体験に戸惑い、子供のような好奇心の塊だった。
「人間はなぜ服を着るのだ?」
「人間の身体は柔らかすぎるから」
竜は素直にうなずく。
「それから、服は鳥の羽みたいにきれいに飾れるから」
それもわかって、うなずく。
「そうして、服を着ているうちに、服を着ていないと恥ずかしいと思うようになったから」
「???」
少女は困った。
人間の羞恥心などという面倒なことを、どうやって竜に説明しようか。
(この幼児のように素直な方に、間違った考えを植え付けたら大変)
本気で悩んでしまう。
一度心を許すと、竜は少女を壊れ物のように大切に扱い、慈しんだ。
ハープを引く少女を抱きあげて膝に乗せ、その手の動きをじっと見つめる。
自分の大きな手に取って、繊細な指先を、桜色の爪をを飽かず眺める。
人の手の動きに魅せられているのだ。
柔らかな感触を楽しんで、笑う少女の唇に触れ、頬のなめらかな輪郭を指でなぞり、そっと口づけする。
少女が笑って口づけを返す。
治りかけた頬の傷を、竜が舐めてくれる。
少女は信頼しきって竜に身を任せる。
じゃれ合う子猫のように二人は心を開いて、この不思議な時を楽しんだ。
人間の豊かな感情と竜とは異なる感覚。
味覚、聴覚、触覚。
調理した食べ物の複雑な味わい。
音曲の楽しみ。
柔らかく頬に触れる、キス。
「そうか。人間は柔らかいから、こうして触れることが好きなのだな」
二頭の竜が顔を合わせてキスしようとする姿を想像して、少女は笑ってしまった。
明るい心地よい笑い声につられて、竜も笑う。
胸の奥から響くような、深い笑い。
「竜は好きな相手と首を触れ合わせるのだ」
少女のほっそりした首に、手を触れる。
「人間の首は短すぎるな」
少女は竜の首に細い腕を回した。
「だから、人間はこうするの」
少女は竜に口づけする。
相手を知りたいと願う、ついばむような、軽いキス。
「あなたが、大好き」




