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竜王と黄金のハート 番外   作者: 葉月秋子


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 少女が傷ついたことから、竜は人の姿を取ったまま、その面倒を見始めた。


(巣の中の子ネズミから、手のかかるペットになっちゃったみたい・・・)


 人間の形を取った竜は、人間の感覚と感情を体験し、理解し始める。

 

 老獪な黄金竜と違って、人型になったことなどないこの若い竜は、初めての体験に戸惑い、子供のような好奇心の塊だった。



「人間はなぜ服を着るのだ?」

「人間の身体は柔らかすぎるから」

 竜は素直にうなずく。


「それから、服は鳥の羽みたいにきれいに飾れるから」

 それもわかって、うなずく。


「そうして、服を着ているうちに、服を着ていないと恥ずかしいと思うようになったから」

「???」


 少女は困った。


 人間の羞恥心などという面倒なことを、どうやって竜に説明しようか。

(この幼児のように素直な方に、間違った考えを植え付けたら大変)


 本気で悩んでしまう。




 一度心を許すと、竜は少女を壊れ物のように大切に扱い、慈しんだ。


 ハープを引く少女を抱きあげて膝に乗せ、その手の動きをじっと見つめる。

 自分の大きな手に取って、繊細な指先を、桜色の爪をを飽かず眺める。

 人の手の動きに魅せられているのだ。


 柔らかな感触を楽しんで、笑う少女の唇に触れ、頬のなめらかな輪郭を指でなぞり、そっと口づけする。

 少女が笑って口づけを返す。

 治りかけた頬の傷を、竜が舐めてくれる。

 少女は信頼しきって竜に身を任せる。


 じゃれ合う子猫のように二人は心を開いて、この不思議な時を楽しんだ。



 人間の豊かな感情と竜とは異なる感覚。

 味覚、聴覚、触覚。

 調理した食べ物の複雑な味わい。

 音曲の楽しみ。

 柔らかく頬に触れる、キス。


「そうか。人間は柔らかいから、こうして触れることが好きなのだな」


 二頭の竜が顔を合わせてキスしようとする姿を想像して、少女は笑ってしまった。

 明るい心地よい笑い声につられて、竜も笑う。

 胸の奥から響くような、深い笑い。

 

「竜は好きな相手と首を触れ合わせるのだ」

 少女のほっそりした首に、手を触れる。

「人間の首は短すぎるな」

 少女は竜の首に細い腕を回した。

「だから、人間はこうするの」

 少女は竜に口づけする。


 相手を知りたいと願う、ついばむような、軽いキス。


「あなたが、大好き」

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