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少女は竜を見つめた。
「信じて。
あなたを騙したりしていない。
初めは、仲間を守って欲しいだけだったの。
でも、途中から、人間になって欲しいと思ったわ。
あなたが好きだから、同じ姿になって欲しかった。
だから、うれしくて・・・。
あなたが姿を変えて私を助けてくれたから、うれしくて・・・」
その喜ぶ心を見せて、誤解されたのだ。
竜は肩で大きな息をした。
「人間とは無茶な事をする生き物だな」
これほどひどい怪我をさせられたら、他の生き物なら必死で逃げるだろうに。
逃げもせず、傷つけた相手に近づき、手を触れることが出来る、不思議な生き物。
既に怒りは消えていた。
手をのばし、少女を抱こうとする。
少女が身構え、体を固くした。
「洞窟へ戻る。その傷の血を止めないといかん」
深い無残な傷だった。
指先からぽたぽたと血が滴る。
顔の血も、止まらない。
眼を潰さなかったのは幸運だった。
「ひどく傷つけてしまったな。人間は柔らかすぎる」
少女の指示に従って傷口を洗おうとした竜だが、面倒になって布を放り出し、少女の腕を取ると獣のように傷を舐めはじめた。
少女は驚いたが、竜にすべてを任せ、体の力を抜く。
竜が舌先でそっと傷を開き、引き裂けた肌と肉を丁寧に舐めて、砂の一粒まで唾液で洗い出し、竜気を吹き込んで清める。
しばらく舌で押さえていると、血が止まり痛みが薄らいでいった。
竜の温かい舌が、滴った血を舐め取る、不思議な感覚。
人より体温の高い熱い唇が、舌が、肌に触れ、吸い、舐める。
「おいしい?」
少女が聞いた。
顔を上げ、悪趣味だというように、眉をひそめる竜。
「人間は、まずい」
くすくす笑う少女は、頬を舐めようと顔を近づけた竜に、そっと口づけする。
竜は不思議そうに少女を見る。
「私の味を知りたいのか?」
「ううん、これは、大好きだっていう、人間のしぐさよ」
もう一度、そっと口づけする。
「あなたが、大好き」




