少年ロウェルと広い世界(8)小さな純粋と嘘つき(リューグナー)の罪悪感
日もだいぶ落ち、もう空は暗く、町の中は壁や家などにかけられた松明に火が灯され、静かになっていた。
「おじさん…」
ロウェルの呼びかけにベンチに座っていたリューグナーは振り返る。
「おう、お疲れ」
「取り返してきたよ」
ロウェルはポケットから宝石が輝くネックレスを取り出し広げる。
「あぁ、知ってるよ。…すげーな、お前は」
リューグナーはロウェルからネックレスを受け取る。
「…?何がすごいの?」
「お前くらいの歳の頃には生きる為に俺も盗みを働いていたが…そんなすんなり手に入れたことなんてなかったよ」
「…おじさんも盗みを働いたの?」
ロウェルには貧しいとは言ったが盗みのことは言ってなかったと思い出した。
「まぁ、な…。生きる為には時として悪いことにも手を染めなきゃならない。それが貧しく生まれた者の宿命…性さがってヤツだ」
リューグナーの言葉を聞きロウェルは黙った。
(怒ったか?俺が盗みを働いてるってことに。バレたか?お前に盗みを働かせたことを)
だがリューグナーの思いとは裏腹にロウェルは意外なことをリューグナーに言った。
「なら、よかったね」
「…何?よかった?」
「うん」
その言葉の意味が分からず、リューグナーはロウェルを見つめたが、ロウェルは笑った。
「ネックレスも取り返したし、これからは盗んだりしなくて良いでしょ?ここから新しい人生の始まりだよ。商人として夢を叶えるんだ」
「……っ!」
ロウェルな純粋な思いはリューグナーの心に大きな罪悪感と暖かさを抱かせた。
「……すまない」
(騙してしまって…。商人なんか目指してないのに、楽したいが為に、金の為にお前を騙したのに)
「?謝ることなんてないよ?おじさんのものを取り返しただけだし、僕も商人のおじさんと話して、地図も見せてもらったしね、次の目的地はスーシィという町に決まったしね」
「…はは、だとしてもすまない、ありがとう、助かった」
……グルルルルゥ
ロウェルとリューグナーの腹の音が鳴る。
「…お前が旅立つ前に飯でも食べようか?」
「本当に?あ、でもネックレスは取り返したけどお金は、ないよね?」
「あぁ、でも大丈夫、ちょっとコネがあってな…多分食わせてくれる」
そう言ってリューグナーは笑い、立ち上がる。
「ほら、行こうぜ!美味しいものでも食べて、乾杯しよう!」
「うん、でもお酒は飲めないよ?」
二人は笑いながらベンチを後にした。もう日は完全に落ち、空には月が輝いていた。




