少年ロウェルと広い世界(6)夕暮れ時の商店路
二人は商店街路の端に置かれている休憩所に移動していた。
「良いかロウェル、お前は町に来てすぐだし、子どもだから怪しまれていない。だが、俺は町の人間だし、奴に顔もバレてる。だから取り返すのはお前の役目だ、できるか?」
「多分大丈夫だよ、問題はどうやって取るか、いつ取るかだね」
リューグナーは頷く。
「もうそろそろ、夕方だ、ってなってくると客はみんな家に帰り出す。商人達も後片付けをし始めるところが多くなる、一つ目の狙いどきだ」
「あとは夜だよね」
「あぁ、寝込みを襲う…俺がやられたように、な」
ロウェルは空を眺め、太陽が少しずつ色を変えていくのを確かめる。
「夕方のうちに取り返したいね」
「?なんでだ?」
リューグナーの疑問にロウェルは小さく笑う。
「だって、お金もないし、お腹は減るしで、大変だからさ。旅は始まったばかりだからね」
「あぁなるほどな、俺の為に手伝ってもらってるんだ、お前がそれで良いなら夕方、商人達が片付けを始めるくらいの所を狙おう、大丈夫か」
「多分大丈夫だよ」
「よし!なら作戦は真正面から行う、良いかーーー」
夕日が町を優しく照らし、暑かった町も少しばかり落ち着いた頃、外に鉱石などを掘りに出掛けた採掘士や鉱山夫は土や汗で汚れた顔で町に帰ってきた、町の中を走って遊んでいた子供達の声も次第に聞こえなくなり、人で賑やかだった商店街路もまばらになっている。何人かの商人は片付けを済ませ宿に戻り、何人かの商人は酒場に向かい、もうそろそろ閉めるかと考えながらまだ開けている商人達もいる。
リューグナーとロウェルはそれを遠くから眺めていた。
「あの男は…予定通り店を閉めてないな」
狙いの肥えた商人は相変わらず果物などを売っていた、優しそうな顔をしているからか、買いに来た子連れの女性と話を弾ませてるようだった。ここで、店が閉まっていたなら、難しくなるところだった。なぜなら、寝込みを襲うというのは、町が商人の為に用意した宿に行かなければならず、少しばかり警備が厳しくなったこともあるため、ネックレスを奪うのは至難の技だったろう。
「良いかロウェル、予定通りお前は売り物に興味を持った子どもとして近づくんだ。それから周りの人間の目を気をつけながら、商人の注意をネックレスから逸らせ、タイミングを見てばれないように取り返せ」
リューグナーはロウェルの背中を軽く叩く。
「大丈夫だ!何かあればすぐ助ける!さぁ、作戦開始だ!」
ロウェルは頷き、商人の方へと歩いていく。
「…悪いな、利用して。だが生きていくためだ」
ロウェルを見つめていたリューグナーの腹が急に音を立てた。朝から何も食べていなかったことに気づく。
「そういえば、俺もあいつも飯食べてないな、成功して時間があれば飯でも食べに行くか…、何ならあいつの旅についていくのもありかも、な…」