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爪切りの音  作者: toshi
7/13

貞次逝く

 六月三十日(土)


寝汗で首のまわりがべとべとして気持ちが悪い。ベッドでうとうとしていると人の声が階下から聞こえて来る。夢なのか現実なのか、朦朧とした頭の中で考えていると、少しずつその声が増幅する。

休みの日くらい静かにしてほしい、と春樹は思いながら完全に目が覚めた。

今日は部活も無くて、久しぶりにのんびり寝ていられると思っていたのに、また朝から両親は喧嘩をしている。本当にいい加減にして貰いたかった。

 梅雨真っ只中の六月三十日の土曜日、階下のリビングでまた始まった。

 何でこんなに仲が悪いんだろう?

 貞男と直子が怒鳴り合っている。

「先週の月曜日に今日実家に顔出すって言ったよな?」

「そんなこと聞いてないわ、今日は買い物に行く予定なの」

「買い物なんていつだって行けるだろ」

「私だって働いているんだから、いつでも行けるわけじゃないの」

「約束しただろう、親父にだって連絡しちゃったし」

「何勝手なことばかりしているのよ、実家実家って。ほんと貴方ってファザコンなんだから」

 貞次のところに行く行かないで揉めている。春樹にはどちらでも良かったが、朝からの喧嘩はやめて欲しい。直子が行きたくないなら貞男一人で行かせたって良いのに、それは絶対許さない。二ヶ月に一回のペースで貞次の所に顔を出す。その時くらい良い嫁さんを演じれば良いのに、それが直子には出来ない。

 貞次は頑固なところはあるが、根は優しい人だと春樹は思っている。直子にとってはまるで天敵のようだけど。

 結局絵理が熱を出したと嘘の連絡をして行くのを取りやめた。貞男は怒ってふて寝をして、直子は春樹と絵理を連れて日の出のイオンモールに買い物に出かけた。

 春樹が小学校の低学年までは、貞男と直子は仲が良かった。それが私立中学の受験をきっかけに段々おかしくなっていった。貞男は受験に反対だった。春樹が仲良しの吉田君と一緒に塾に行きたいと言ったのがきっかけだ。よく聞くと吉田くんは私立中学に受験をするんだという。春樹はそこまで考えていなかったが、直子がその気になってしまった。

 「普通に地元の中学に進んで、高校受験すればいいじゃないか」

貞男がそう言うと、

「春樹が折角その気になって私立受験したいと言ってるんだから」

「私立の入学金だって、授業料だってどうするんだよ?そんなお金俺の給料じゃ無理だろう」

「私も働くし、いざとなればうちの実家で出してくれるって」

「絵理だってまだ小学生だし、簡単に働くなんて言うなよ。実家に金出して貰うなんて、それこそ俺は嫌だよ。公立中学に行って、いろいろな人に揉まれてやっていった方が将来本人のためにも良いはずだよ」

「貴方は何もわかってないのよ!勉強したいって子供が言っているのに、それをさせない親なんている?考えられない!」

「大袈裟なんだよ。自分の生活レベルにあった生き方を子供たちにさせた方が良いんだ」

「だから、うちは一向に生活が良くならないんじゃないの?生活レベルを上げるのだって努力してチャンスを掴まなければ。貴方はそういう器量が無いのよ」

「じゃあ勝手にすれば良い。けど、お金のことは俺知らないからな!」

そんなことを言い争っている両親を、小学五年の頃の春樹はとても居たたまれない気持ちで見ていた。

塾に行きたいなんて言わなければ良かった。だけど、一度走り出してしまったものを春樹の力で止めることも降りることも出来なかった。

いくつかの私立中学を受験して、春樹は私立中庸大学の付属中学校に合格した。直子は大喜びしていた。貞男もその時は喜んでいた。

直子は、仕事に忙殺され家事をあまりしなくなった。疲れていて出来なくなったのが本当のところだ。食器洗いと風呂洗い、それに洗濯物を仕舞うのは春樹の仕事になり、夜洗濯機を回して朝干して出かけるのが貞男の仕事になった。直子は、平日は貞男より早く出かけて、夜の八時頃帰って来る。土曜日は昼過ぎまで寝ていて、午後から買い物に出かけ冷凍できるようなおかずを作りそれを平日の夕食にする。平日の朝ごはんは菓子パンが多くなった。夕食も冷凍したおかずが無くなれば、ほか弁やコンビニ弁当。そういう生活にも慣れてしまった。家族全員で一緒に夕食を囲むようなことは無くなった。

そうしているうちに直子と貞男はあまり話さなくなったし、話せば喧嘩をすることが多くなった。

春樹は、そういう生活にも家族にもうんざりしていた。絵理は、どちらかと言えば直子の側についていた。普段直子は帰ってくると疲れていて、食事をしたらお風呂に入ってすぐに寝てしまう。休みには直子といれば買い物に出かけ、美味しいものを食べられるし洋服も買ってもらえた。直子もそれなりにお金を稼ぐようになり、普段世話をしてやれない分、絵理にも春樹にも甘かった。春樹はどちらの味方もしているつもりはなかったが、貞男からすれば直子についていると勝手に思っていた。

春樹は最近家事をやることがとても苦痛になっていた。毎日毎日の繰り返し、学校から帰って洗濯物を仕舞い、お風呂の浴槽を洗ってお湯を入れる。そして、前日の晩に使った食器洗いをする。中学に入って直子が働き始めてからずっとだ。春樹の私立受験がきっかけでこうなったから、仕方ないとは思う。しかし絵理だってもう中学生なのだから出来るのに何もやらない。そのことが腹ただしかった。

「それはお兄ちゃんの仕事でしょ、私は言われて無いもん」と言って逃げてしまう。

「お前も家の手伝いをするのは当たり前だろう」

「私だってやれる時はやっているもん」

「お前が何やっているんだよ?」

「風呂洗いだって、食器洗いだってしたことあるもん」

「俺に怒られてしぶしぶ何度かやっただけじゃないか」

「やったことには変わりない」

「これから食器洗いはお前の仕事だからな」

「部活だってあるしそんなの出来ない。お兄ちゃんが今までやっていたんだから人に押し付けないでよ」

「俺だって部活をやって帰ってきてるんだ、ふざけるな!」

と怒鳴ると泣いて自分の部屋に逃げていく。

貞男や直子が帰って来ると、兄ちゃんに苛められたと言い出す。

話しも聞かないで、

「妹を苛めるな」と両親はやみくもに春樹を怒る。

春樹の思いも知らずに怒られると、真面目にやっていることが阿呆らしくなる。

貞男も直子も仕事が忙しいと言っているが、夜遅くまで飲みに行ったり、土曜日は昼近くまで寝ていることも納得が出来なかった。

高校生になって何度か将来の事を相談したくて真剣に話し出すと、二人とも成績のことばかり言って話しを聞こうともしてくれなかった。それからは、進路の事は話さなくなった。

そんな中で唯一春樹の心を救ってくれていたのが美紅の存在だった。美紅と付き合いだして春樹は本当に救われた。家庭内の嫌なことが美紅といることで半分以下になった。春樹の気持ちを察してくれて話も聞いてくれた。しかし、その美紅のことが今は一番の悩みごとに変わってしまい、春樹は八方塞がりになっていた。美紅は今でも春樹のことを信じて待ってくれている。その事は学校での様子で良くわかってはいた。それでも美紅の母親に言い返せるほどのモノを春樹は何も持ってはいなかった。そう考えると美紅と自信を持ってこれからも付き合っていけるとは言えない。自分だけじゃない将来の事をどうしていけば良いのか、思いも付かなかった。そんな中にいるのに両親は何の助けにもなってくれないばかりか悩みの一つになっている。せめて自分たちのことぐらい自分たちできちんとやって貰いたい。家の中くらいは平穏にしてもらいたい。それが出来ないなら関わりたくない。

二人のいざこざが落ち着いた頃に下に降りると、直子から買い物に誘われた。少し考えたが、気分転換に付き合うことにした。

 

 ママと奴がまた始まった、と絵理は部屋でテレビを観ながら階下の様子を伺いながら思った。

仲が悪いのは小さい頃からずっとだからどうでも良いけれど、全くうるさい! 特に奴はうざい!なんであんな奴が私の父親なんだろう?

朝の学校の準備であたふたしている時に限って話しかけてくるし。あのタイミングの悪

さがたまらなく嫌だった。中年太りでオナラは所かまわずするし、食べ方だって口をあけてくちゃくちゃ食べるし、下品。脂ぎってて直子が言うように加齢臭がする。下着や靴下が床に落ちてたりすると汚くて身震いがする。

更にケチくさくて、ママとお金のことでしょっちゅう喧嘩をしている。男なのだからどっしり構えて何事もビシッと決めてほしい。

 小さい頃は貞男が大好きだった。すぐ抱っこもおんぶをせがんだ。夕飯を食べた後に膝に乗ってテレビを観るのが好きだった。ごつごつした身体だったけど、暖かくて気持ちが良かった。

休みには、遊園地やプールなどいろいろなところに連れて行ってもらった。夏には毎年

海にも泊まりで行った。

両親が仲の悪いのも気になったが、中学生なって、貞男の春樹と絵理に対する態度

の違いがわかって、更に嫌いになっていった。

決定的に嫌いになったのは、中学一年生の春休みにバスケット部の友達四人と家の車でディズニーシーに連れて行ってもらった時のことだ。その日、貞男と直子は中に入らず、近くの温泉施設に行き、夜の九時に迎えに来ることになっていた。絵理たちは楽しくって夜のパレードのあともしばらく居座ってなかなか出て来なかった。結局十時を少し回って駐車場に戻ってきた。車に入ると貞男が絵理に向かって「今まで何をやっていた?九時に戻れって言っただろう!十二時前に皆を家に送り届けることが出来ないだろう!」

といきなり怒鳴った。

「皆の親だって今日は多少遅くなったって大丈夫だって言ってたから、そんな怒鳴ることじゃないでしょ!」と直子が助け舟を出してくれたが、一緒にいた友達はみんなびびって、車の中はドン引きするくらい静まりかえった。楽しかったことが全て台無しにされ、その時のことが本当に許せなかった!

それを境に絵理は貞男への嫌い度がピークになった。

絵理は直子が貞男のことを良く思ってないことは、普段の様子で良くわかっている。絵

里はいっそうの事離婚してもらっても構わないと思っていた。貞男なんかいない方がどれだけ楽しく生活できるか?

貞男が一番そういう絵理の気持ちを理解していないかもしれない。

バスケット部はもう辞めようと思っていた。直子から成績も良くならないなら部活なんて辞めて、勉強に力を入れなさいって言われている。貞男には、始めたことは最後まで続けなさいと言われているが、どうでも良くなっていた。

そんなことを考えながらぼんやりテレビを観ていると、

「絵理、いつまで寝てるの?買い物行くから顔洗って着替えな」

と直子の声が聞こえた。


貞男は直子との喧嘩にも辟易として、取りあえず貞次に行けない言い訳をする電話を入れた。貞次はガッカリし、どうしても話がしたそうだったが、最後はまたすぐ行くからと適当にごまかして電話を切った。直子への怒りが収まらないまま、居間でテレビを点けて寝転がった。

直子と子供たちは、着替えて家を出て行った。「あの野郎!」と思わず声が出た。

カッとなると今すぐにでも家を出て行けと言いたくもなる。しかし、子供たちのことを考えるとそうもいかない。離婚などになったら社会的な立場もあるし、子供たちに辛い思いをさせるだけだと思う。

春樹も絵理も俺の言うことや、やることにかなり不満があるみたいで、露骨に嫌な顔をする。言う事といえば、勉強のことと将来のことぐらいで、それ以外にどんな話をしたらいいのかが思い付かない。春樹には折角高い授業料まで払って中学から私立に行かせているのだから、少なくとも付属大学に、出来れば一流国立大学に入ってもらいたい。いくら時代が変わったと言っても、一流大学に入れば先が開けるのは間違いない。人間関係を含めて良い環境で良い機会に恵まれるのは確かなのだから。そういう事を言うと、本当に嫌な顔をされる。

高校の進路説明会で、とにかく学校の定期試験で平均点をクリア出来ているかを、親御さんはチェックしていて下さい、ということを強調して言われた。うちの試験で常に平均点をクリアしていれば、当校付属大学はもちろん、他の一流国立大学も十分狙えるところにあると思ってもらって構わないと言われたからだ。それからは試験が終わると結果を見せろ、平均点はクリアしているか?とうるさいほど確認をした。そんな時の春樹の嫌そうな顔が頭に残っている。しかし、そのことだけは止めることは出来なかった。

絵理は直子と一心同体の感じだ。貞男の思いなんてわかってもらえないのだとつくづく思う。何かを始めても、最後までやり遂げることが苦手なところがあるようだ。自分の娘だから、目に入れても痛くないくらいに可愛い。それでも親だから、つい余計なことを言ったり尋ねたりする。それもそれなりの人間になってもらいたいと思うからだ。一番願うことは良い家庭を築いて欲しいということ、夫に恵まれ子供たちに恵まれ、毎日楽しく生きてもらいたい。それ以上の願いはない。

子供たちには、ごく普通に育って自分のやりたいことを見つけてもらいたいと思う。しかし、直子は自分の夢と子供たちの夢をごちゃ混ぜにして、子供たちに背負わそうとする。それは子供たちにとっては苦痛以外の何ものでもないだろうと思うが意見は一致しない。そんな家族への不満に加え貞次のことがある。一人で大田区に住まわせていて本当に良いのかといつも自分に問いかける。貞次は自分が出来るうちは一人で生きると言うので、それ以上言わないようにしている。正直直子との生活は辛いだろうとも思ってしまう。これ以上トラブルになる事は増やしたくない。そういう事の繰り返しの中で、今は家族の中で、自分一人で空回りしている。最後は考えてもどうなるものでもないと、開き直ってしまう。


その日、昼過ぎからテレビを観ながら、うたた寝をしていた。

夕方の五時過ぎになって、けたたましく家の電話が鳴り、驚いて目が覚めた。

「もしもし、曲直部です」

「貞男ちゃん?山本だけど」

「あっ!おばさん」

「大変なの!貞次さんが倒れて救急車で運ばれた!」

「えっ!何で?」

「わからない!家の中で倒れてた!とにかくすぐ病院に行って、日赤病院だから!」

「わかった、ありがとう」

パニックになりながらも、洋服に着替え、財布と免許証を持ってクルマに乗り込んだ。エンジンを掛けながら直子の携帯に電話する。

「もしもし直子、親父が倒れて救急車で病院に運ばれた、日赤病院だ、俺は今から軽で行くから、お前もそのまま向かってくれ!」

「えっ!どうして?」

「家で倒れていたらしい、なぜかはわからない」

怒鳴るように状況を説明し電話を切ると、貞男は焦る気持ちを抑えながら自動車で病院に向かった。


直子と絵理と三人で買い物をしている最中のことだった。今夜の夕飯を買って帰ろうと話していると、直子が携帯を取り出した。

出ると、すぐ顔が険しくなった。

「えっ!どうして?」そう言ってから、向こうからの返事を聞くと携帯を切った。

「お父さん、お爺ちゃんが倒れたから、至急日赤病院に行ってくれって」

詳しいことは何もわからなかった。とにかく買い物を止めて、車で病院に向かう。日の出のインターから高速に乗った。

「どうしてこんなことになっちゃうの?」

直子は、今朝のこともあって顔色も冴えず、苦渋に満ちた様子でクルマを運転しながら呟いた。

春樹は流れていく景色を眺めながら、貞次とのことを思い出していた。

実家に遊びに行っても、貞次はあまり話はしなかった。美智子は、

「春樹元気?いつも勉強も頑張っているし素直な子だから将来も大丈夫だね」と何の根拠も無いのに、いつも褒める。

中学三年の春休みに一度だけ泊まりに行ったことがある。

春樹は家に居たくなくて、直子には嫌な顔をされたが、かまわず行った。

あの頃も家の中の雰囲気は最悪だった。一度心の糸がこんがらがるとなかなか元には戻らない。いっそうのこと、一度切ってから繋ぎ直した方がいいのかもしれない。両親はお互いのやることなすことに文句を付ける様になっていた。

 貞次も美智子も何となくわかっていたのかもしれない。

 おやつに美智子がりんごを剥いて出してくれた。

「父さんも母さんも毎日忙しそうだね」

「家のことはそっちのけだよ、母さんなんか家事もやらないもん」

「そうなの、それじゃ困っちゃうね」

「しょっちゅう喧嘩しているし」

「それじゃいるのも嫌になっちゃうね」

「うん、でも言ってわかるような人達じゃないから」

「お前も絵理も大丈夫なの?」

「二人とも諦めてるから」

「そんなこと言わないでよ、みんな仲良くして幸せになってもらわなきゃ」

「うちの家族はもうそんな風には戻らないよ。母さんは父さんのこと馬鹿にしてるし。絵理まで一緒になって悪口言っているし。父さんは父さんで母さんとは余程のことが無い限り口を聞かない」

「本当に困ったもんだね」

 美智子はとても心配そうだった。貞次は横で聞いていたが、何も言わず新聞を読んでいた。

その日もう一泊して翌日の昼ご飯をご馳走になり、家に帰ることにした。

玄関から出て道路まで見送ってくれた。

「お世話になりました」とお礼を言って歩き出すと、

「春樹」と声が掛かり呼び止められた。

 振り向くと、貞次が真っ直ぐ春樹を見つめて、

「家族を思いやる気持ちはとても大切なことだ。いつか自分の家族を持つ時が来る。その時は、人を思いやれる相手と家族を作れ。きっといつか父さんと母さんにもわかる時が来る。お前が心配することはない。爺ちゃんが絶対何とかしてやる」

そう言って少し微笑んで送り出してくれた。普段は何も言わない人が、あの時だけは春樹に語りかけていた。一人の人間として春樹に伝えているようだった。

春樹は人を思いやることを少し考えた。両親はお互いや家族を思いやる気持ちが無いと思った。そんなに難しいことじゃないのに何故なんだろう?お爺ちゃんもお婆ちゃんをよく怒っていたけど、お婆ちゃんはいつも「はいはい」と子供を諭すようにお爺ちゃんの言うことを聞いていた。今考えると、二人の間には人にはわからない絆があったのだと思う。お爺ちゃんがお婆ちゃんをしょっちゅう怒鳴りつけても許される約束事があったのだと。それに引換え両親は何考えているのか?自分のエゴばかりを主張している姿が浮かぶ。人間として寂しいと思う。尊敬できない、それが悲しい。

そんなことを考えていたら、病院の地下駐車場に自動車が止まった。


 絵理は、モールのビーチサウンドでピンクのTシャツを買ってもらい、テンションが高かった。

それが貞男からの電話で、一挙に暗い気持ちになった。今度はお爺ちゃんか、お婆ちゃんが癌で亡くなってまだ二年しか経ってないのに。

貞次のことは恐かった。直子が嫌っていたので、あまり顔を出すことも無く会っても何を話せば良いかわからなかった。

絵理は直子がいつも貞次に苛められていると思っていた。直子が実家に顔を出すと貞男にそう言っていたからだ。しかし、二ヶ月に一度くらいしか会わないし、いつどこで苛められるのかな?と思うこともあった。貞次の家に行くと帰りの車の中で、こう言われたああ言われた、と文句を言っていた。絵理が一緒にいる時にはそういうことが無かったから、いつ言われたのだろう?と思ったりしたが、とにかくママが可哀想だと思った。奴の嫌なところは、お爺ちゃん似なのだとずっと思っていた。

何でもっと漫画やテレビドラマみたいに楽しいことがないのだろう。毎日もっと楽しい事があっても良いのに、私の周りは嫌な事ばっかりだと思った。

「今から病院に行くから」

直子が血相変えて、駐車場にみんなで向かう。

車に乗り込むとすぐに走り出した。直子の緊張が伝わって、落ち着かなかった。絵理は悲しい気持ちになりながら、外を眺めていた。


全く貞男には嫌になる。美智子が亡くなって、あとは貞次だけなのだから、それなりに付き合えば良いかと思っていたのに。今まで以上に親のことを思っていて。私とか子供達をもっと大事にしてよ、と言っても貞男には通じない。

今日は実家に行くことを無視して、子供達と買い物に出かけた。好きなものを買ってリフレッシュしなきゃ仕事もやっていられない。会社でだって嫌な人間の対応だってしなきゃならないし、役員の世話をすることもかなりのストレスが溜まる。一緒に仕事している先輩秘書の安田幸子は、動きが遅いくせに偉そうに命令をする。あんな仕事の仕方で秘書が勤まるなら楽で良いけど、その分直子が残業もしながらカバーしている。

みんな馬鹿ばっかりだという気持ちにもなる。貞男や貞次も、安田も総務の連中も、ただべたべたしたり、だらだらしていて一緒にいるだけで不愉快な気持ちになる。

家族なんてものは、今の時代核家族が当たり前で、仕事に追われているのだから、休みの日くらいは好き勝手やって楽しく過ごすのが一番。年寄りの世話をする時代じゃない。家族が多くで寄り添って生きていく時代じゃない。貞男にはそういうところがわからないから嫌になってしまう。

イオンモール日の出まで、自宅から滝山街道を通って自動車で二十分。エクザイルを聞きながら、貞男と口論した嫌な気持ちを少しずつ忘れていった。大抵モール周辺は道路が渋滞することが多いが、ここは立地が良くないせいかあまり混むこともなくて直子には都合がいい。駐車場も店舗正面に停めることが出来た。正面入り口からレストラン街を抜けて専門店街に向かった。広い通路を三人でゆっくり歩きながら、それぞれ洋服を見て回る。絵理にはお気に入りのブランドがあって、買いたい物は決まっていたようだ。春樹はそういうところが下手というか欲しいものを買えば良いのに、自分からは欲しがらない。しょうがないので、直子が物色して明るめな色のポロシャツを一枚買った。自分にはカジュアルパンツを一枚。日頃のストレス発散のご褒美だ。買い物をすると高揚するし、気持ちがすっきりする。絵理がサーティーワンのアイスが食べたいというので、少し並んだでダブルコーンをそれぞれ頼んだ。店舗内のテーブルで食べながら、正面のイベントフロアを眺めていた。今日はNHKのおかあさんといっしょのキャラクターが来るらしくて、多くの親子連れが並んでいてかなりの賑わいだった。

時間も五時近くになったので、食材を買って帰ろうと食料品のフロアに向かった。そこも多くの家族連れがショッピングカートを引きながら買い物している。直子もカートを引きながら夏野菜を見ていくつか買い物カゴに入れながら歩いていると、ジーパンのポケットに入れていた携帯の振動に気がついた。携帯を見ると貞男からだった。どうせ、何時に帰ってくるんだ?とか何か買ってこいとかだろうと思い、うるさいな~と思いながら携帯に出た。


貞男は八王子から中央自動車道に乗って、首都高に入り、渋谷方面の高樹町で高速を降りた。一般道に入って最初の信号を左折し、あとはそのまま五分程走ると日本赤十字社医療センターが正面に見えてきた。

地下駐車場からエレベーターで一階の総合窓口に向かう。貞次の名前を告げ、どちらに行けば良いか尋ねると、女子事務員は奥に入って確認して戻ってきた。西棟一階奥の救急外来で処置中なので、そちらに向かうように言われた。

場所を確認し、足早に向かうと処置室フロアに、連絡をくれた山本夫婦がソファに座っていた。

「おじさん、おばさん、本当にすみません」

「あっ!貞男ちゃん、貞次さん大変なことになっちゃった」

とオバサンが立ち上がり、今にも泣き出しそうな顔で返事をした。

「どこで病状を聞けばいいんだろう?」

「とり合えず、そこの窓口で聞いてみなよ」とおじさんが正面の救急受付と書かれた場所を見て言った。

「ありがとう」

窓口に向かい声をかける。

「すみません」

事務室の奥に聞こえるように、少し声を張り上げた。

すぐに「はい」という返事が奥から聞こえ、少し小太りな看護師が出てきた。

「すみません、間曲部貞次の家の者なんですが、どういう状況なんでしょう?」

「今集中治療室で処置中ですので、もう少し待ってください」

「なぜ倒れたんでしょうか?それだけでも」

「脳梗塞のようです。発見された時にはかなり時間が経過していたようです、とにかく今先生たちが処置をしていますので」

言うとすぐに看護師は、奥に引っ込んでしまった。

貞男は呆然とその場に立ち尽くしていた。

(父さんもう駄目かもしれない)思っちゃいけないことが初めに浮かぶ。

「貞男ちゃん、立ってないでとにかく座りなよ」

おばさんに声を掛けられて、我に返った。

貞男はソファに腰掛ける前に、自動販売機で三人分のお茶を買って、二人に渡した。

腰掛けて、お茶を一口飲みながら今はただ待っているしかない、と思った。

二十分ほどして直子と子供達も到着した。

脳梗塞で倒れたこと、今処置中で状況はわからないことを説明した。

「お爺ちゃんもう駄目なの?」春樹が耳元で囁いた。

「まだ先生からは何の話も聞いてないからわからない」

そう小さな声で貞男は返事をするしかなかった。

皆フロアのソファに座って、何を話すでもなくじっとしていたが、緊張感に包まれていた。貞男は、これから医者に告げられることを考えていた。決して良い話を聞かされることは無いだろうと思った。

八時になって、貞次の弟の正志おじさんとおばさんが到着した。

貞男が二言三言簡単に状況を説明して、ソファに腰掛け待ってもらう。

また、沈鬱な空気がフロア全体に漂い、静寂がしばらく続いた。

 時計は、夜の九時を少しまわっていた。

 処置室のドアがガタンっと音をたてて開き、医者が出てきた。

「お待たせしました。親族の方に病状を説明させていただきます」

そう言いながら、貞男の顔を見つめた。

「私が息子です」そう先生に返事をする。

「それでは、こちらにお越しください」と窓口の横から中に入るように促された。

「良かったら、私も聞かせてもらっていいかな?」正志おじさんが医者に声をかけた。

「少し狭いですけどよろしいですよ」

部屋に入るとテーブルの周りにと折りたたみ椅子が五脚ほど並んでいる。正面にディスプレイとシャウカステンがあり、テーブルにはノートパソコンと多くの書類が積まれていた。

先生に促され二人が椅子に腰掛けると、早速病状説明が始まった。

「すでにお父様の病状は聞いているかと思いますが、脳梗塞です。意識も無いままこちらに救急車で運び込まれました。発見された時はすでにある程度時間が経過していたと思われます。非常に厳しい状況です」

そう伝えられると

「ほぼ絶望的だということかね?」とおじさんが質問をした。

「大変厳しい状況であるとしか。ただ回復したとしても、かなりの後遺症が残ると考えていただいた方がよいかと思います」

「後遺症って、どの程度なのでしょうか?」と貞男が聞くと、

「回復してみないとわかりませんが、植物人間に近い状態かもしれません、意識を戻すことは難しいと思います」

「それじゃ生きている意味なんて無いってことじゃないですか」と貞男が声を張り上げた。

「医者としては、現在の病状を正確にお伝えするしかありません」

そう言われると、二人とも返す言葉はなかった。

「今夜が山だと思います。ある程度覚悟はしていて下さい」

「何とか親父を救って下さい」と懇願し二人は部屋から出た。

貞男は、ソファに腰掛け、もしもの事を考えた。


その晩は、貞男の家族、正志おじさん夫婦は病院のフロアで一晩を過ごすことになった。子供たちは家で寝かそうと思ったが春樹も絵理もこのままいると聞かず、好きにさせた。

山本夫婦には、お礼を言って帰って貰った。

貞次は、集中治療室で酸素マスクを着けたまま、意識もなくこんこんと眠っている。貞男達はただ待つしかなかった。待ちながら、両親のことを考えていた。

両親は貞次が亭主関白ですぐ美智子を怒鳴りつけていた。美智子も多少文句を言ってはいたが、それでも最後は貞次に従った。仲が良いのか悪いのか、本当によくわからなかった。ただ、あの時の光景を思い出すと、二人は幸せだったのだなと思う。

三年前、美智子がお腹の張りを訴え、病院で検査を受けると、進行した胃がんと診断を受けた。医者からはすでに手遅れだと言われたが、出来るだけの治療はしてもらいたいとお願いをした。そして抗がん剤治療をしていた頃、美智子がお墓参りをしたいと言い出し、車で連れて行ったことがあった。

墓参りの帰り、高速の高見サービスエリアで昼食をとることにした。美智子はラーメンが食べたいと言いだした。

「母さん一人で全部食べられないから、私と一緒に食べよう」

貞次がそう話しかけていた。

貞男は一緒に付き添った春樹にはかつ丼、自分の味噌ラーメン、そして醤油ラーメンの食券を買った。

午後一時過ぎで、フードコートはかなりの人で混んでいたが、何とかカウンター席4人分を確保することが出来た。

食券番号でそれぞれ呼ばれる。始めに醤油ラーメンができ呼ばれた。貞男が取りに行き美智子の前に置く。

「久しぶり、ラーメンなんて食べるの」美智子が嬉しそうに微笑むと、

「あまり胃に良くないが、今日くらいは良いな」と貞次が微笑みかえした。

味噌ラーメンとかつ丼も呼ばれ取りに行き、貞男と春樹もすぐに食べ始めた。

横では貞次と美智子が一つのラーメンを食べている。とてもゆっくりしたペースで、一口食べると隣に差し出しては、外の景色を眺める、それを交互に繰り返していた。特に話しをするでもなく、二人だけの静かな時間が流れていた。

そんな様子を眺めながら、貞男もラーメンを啜っていた。

食べ終わると、貞次と美智子は何もしゃべらず、座ったまま静かに外を眺めていた。

お膳を返却口に持っていき、車に戻る。後部座席に二人が座り、車が動き出すと、

「母さん、今日はお墓参りも出来たし、食べたいと言っていたラーメンも食べられて本当に良かったな」と貞次が話しかけると、

「うん、良かった」

静かにつぶやくと、美智子は本当に幸せそうな優しい目をして車窓の景色を眺めていた。

なぜか、両親のそんな姿を思い出していた。

そして急に悲しみが迫って来た。いつもそうだ、悲しみは突然襲ってくる。悲しむが溢れ出しそうになって「トイレに行ってくる」とその場から逃れ、個室に入り一人になると貞男は号泣した。


貞男はソファに座りながら、いつの間にか寝入ってしまった。

「ご主人起きて下さい、お父さんの容態が急変しました」

看護師が貞男の肩を揺すり声をかけた。腕時計を見ると三時十五分。熟睡している春樹と絵理を揺すり起こし、集中治療室に入った。呼吸器を点けた貞次は、意識は無いが荒い息を繰り返し苦しそうだった。心電図を見ながら医者も看護婦も処置を続けてくれたがそれから一時間半後に静かに息を引取った。午前四時五十分、七十五歳、あまりにも呆気ない最期だった。

何も話しも出来ないまま、逝ってしまった。昨日の午前中に実家に行っていれば、状況は変わっていたかもしれない、そんなことが何度も頭を過ぎる。直子を複雑な思いで見てしまう自分がいた。

それからは泣くことも出来なかった。貞次の遺体は看護師に処置をしてもらい霊安室に運ばれた。

「これからどうしますか?」貞男が言うと、

「貞男が決めてくれれば、それに従うよ」正志おじさんが返事をした。

「とりあえず実家に連れて帰ってから考えますか」

病院から葬儀社に連絡を取ってもらい、親父の遺体をエンバーミングという防腐処置をして貰ったあとに家に帰すことにした。


貞男は叔父さん夫婦を乗せ、直子は子供達を乗せそれぞれの車で実家に向かった。貞次を乗せた寝台車はそのあとに付いて行った。実家には二十分ほどで着き、車は近くのコインパーキングに止め、寝台車は一度実家の前に横付けして、家に別れを告げ、そのまま防腐処置する場所に運ばれた。

貞男たちは、家に入り、取り合えず居間で小休止を取った。直子が台所でお湯を沸かし、お茶を入れてくれた。

「取り合えず、父さんが亡くなったことを、親戚や知り合いに知らせなきゃな、悪いけどおじさん思いつくところを書き出してくれない」貞男がそう言うと、

「わかったが、葬儀はどうするんだ?」

「俺は家族葬でやりたいと思っている。会社関係も今は家族葬が一般的だから、その旨話をすれば特に問題はないと思うし。会社関係の人達に会葬してもらっても良いけど、応対に追われて、本当に父さんを思って送り出す葬儀が出来ないと思うんだ」

「具体的にお通夜と告別式の日にちはどうする?」

「これから葬儀社の担当が来るから、そこで決めるしかないよな。火葬場の空き状態にもよるだろうから」

「早くとも明後日のお通夜ってとこだろう」

正志おじさんがそう言うと、そうだね、と貞男が返事をした。

お茶を飲み終わると、女性たちが一階奥の六畳の和室を掃除しはじめた。はたきや掃除機のある場所を探したり、必要な物のある場所がわからず、意外と時間がかかっていた。掃除が終わると押し入れから布団を出して敷いた。

そうやっている間に貞次の遺体が処理施設から戻ってきた。葬儀社の職員が貞次を運び、布団に寝かせてくれた。枕元には枕飾りが用意され、一膳飯、湯のみ等を用意し、いる者でお焼香をした。

(父さん、母さんのところに向かうよ。あまりに突然のことで俺も心の準備も出来ないままだ。息子は何の役にも立たず、何の親孝行も出来ないまま二人をあの世に送り出しちゃった。本当にごめんな。父さんがあっち行ったら、母さんまた面倒みてやってくれよ!我がままだけどさ)

仏壇の横に飾ってある美智子の写真にそう話しかけた後は、正志おじさんを交え葬儀屋と葬儀の日程打ち合わせが始まった。


葬儀は、実家から歩いて十分ほどのサンセルモ天元院という葬祭場で行われた。

火曜日にお通夜、水曜日に告別式ということになった。

貞男が喪主を務め、貞男家族、正志おじさん夫婦など両親の兄弟や従兄弟、それに山本夫婦などご近所の方たち総勢三十名ほどのこじんまりとした家族葬だった。

普段着を着た貞次の遺体は本当に眠っているようだった。お通夜、告別式それに初七日の法要も済ませ、貞次とのお別れの儀となり遺体のまわりに会葬者全員で生花を添え、貞次の好きだった競馬の新聞やたばこを入れてあげた。 

貞次の妹や仲良くしていた叔父夫婦は泣きながら最後の別れをした。その中で絵理が目を真っ赤にしてすすり泣く姿を見て、貞男は絵理が何であんなに泣いているのか?不思議に感じた。 

(絵理は春樹と違って俺の両親とは会うことが少なかったから、あんなに泣くほどの思い出は無かったんじゃないのか)

そんなことを思いながらその姿を見つめていた。

出棺し火葬場に向かう霊柩車の中でも、直子の傍らに座った絵理が泣いていた。

「お前そんなに泣いて大丈夫か?」

「うん、一昨日お爺ちゃんの家に戻って、ママたちと部屋の掃除をしたでしょ。あの時お爺ちゃんが普段寝ていた部屋にシーツを探しに入ったの。そうしたらベッドの枕元にお婆ちゃんと二人で撮った写真と一緒に、私の七五三の時に撮った写真が飾ってあったの。それを見たら、私今まで、お爺ちゃんともお婆ちゃんとも、あまり会うことも無かったからそんなに思われているとは考えてもなくて。それを見てからお爺ちゃんを見ると涙が止まらなくなっちゃった。何でもっと会いに来なかったのだろうと思って」

「そうだったのか。でもお爺ちゃん、きっと今喜んでいるよ、そんなふうに思ってくれて」

「お爺ちゃんのこと必要以上に恐く感じていて、近づかなかったから」

「そんなことはなかったんだよ、孫娘はお前だけだから、生まれたときどれだけ喜んだか」

「本当にお爺ちゃんにもお婆ちゃんにも悪いことしちゃった」

「そんなこと全然思っちゃいないよ、これからも心の中で忘れないでいてあげれば喜ぶと思うよ」

「うん、もう二人ともいないけど、心の中でずっと思っている」

「ありがとな」

そう言うと、絵理は小さく頷いた。

一方直子は、棺が閉められたときは涙を潤ませていたが、帰りのバスの中では親戚の叔母と屈託のない笑顔を見せながら、世間話に花を咲かせていた。

(貞次もいなくなって内心清々したのか、すっきりした顔を覗かせるのが見て取れた)


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