最終話 働くわ
僕には、特殊な能力がある。
犬と話すことができるのだ。
僕はこの能力を活かして、仕事をすることに決めた。
これまでも能力を使って仕事をしようと試みたけど、上手くいったことはなかった。
でも今回は上手くいくはずだ。僕のペット、ゆずも一緒だし、彼女の杏子もいる。
「うー、緊張する」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん!」
「霊なら心配ないって!」
僕は、ある事業を始めた。
「上手くまとめられるだろうか…。みんな個性強いんだもんな…」
外から、わいわいがやがやと声が聞こえてきた。
「こんにちはー!おー、ゆず元気にしてたか!?」
犬語で元気にあいさつしてきたのは、パグのドンだ。
「ここが犬の教室ね」
「おれもっと賢くなるぞー!」
ポメラニアンのスーに、柴犬のシバだ。
「先生!オイラあほだけど、よろしくな!」
ブルドッグのイモである。
そう、僕は犬の教室、いわゆるしつけ教室を開いた。
基本的なしつけから芸の修得まで、僕の能力を活かし犬達に教える。当然犬と話せない飼い主の言うことが聞けるように、簡単な日本語や動作で指示が伝わるように教え込む。
今日はこの教室の開講日。今売れっ子の犬達、というより僕には知り合いの犬が彼等しかいなかったので、宣伝効果も期待して、最初の受講生として来てもらった。
そして、あのコスケも来た。
「おっすー!コスケ!」
「ゆず、久しぶり!」
コスケはモデルの仕事を辞めた。僕が飼い主へとコスケの気持ちを話した。
飼い主は最初戸惑っていたが、コスケの元気がないことにどうやら薄々気づいていたらしい。僕が犬とコミュニケーションがとれることを信じてくれ、すっぱりモデルの仕事は辞めてくれた。
そんな経緯から、あのビビりだったコスケはすっかりゆずと僕に懐いてしまい、今日のしつけ教室も自ら進んで参加したいと言ってきた。
「よ、よし、じゃあみんな集まって!」
一匹も集まらない…。
犬達はそれぞれ再開を喜び合い、部屋を走り回っている。飼い主がその様子を見て笑っている。
「あちゃ〜…」
「霊、めげずに頑張って!最初はこんなもんよ!」
「お、おう…」
スタートこそこんな調子だったが、僕の能力は最大限活かすことができた。一匹一匹とコミュニケーションをとり、飼い主の要望通りの芸を仕込んでいく。
僕が言葉で指示となる日本語や動作を教えたら、あとは杏子がフォローして教え、実際に飼い主にもやってもらうようにした。
ペットじゃない犬に物事を教えるのはすごく大変だけど、なんか、うん、楽しい。
そうだ、ゆずの犬モデルの生活がどうなったかと言えば、結論として仕事は続けている。
僕は辞めさせるつもりだったが、ゆずは仕事が好きだというので、その通りにさせた。
ただし、ゆずにはゆずの体力や働くペースがあるので、以前のように過密なスケジュールは入れなかった。
相変わらずゆずの人気は凄まじかったが、時間が経つにつれその人気も落ち着き、ゆったりとしたペースでゆずはゆずなりに仕事に取り組んだ。
働くことは必ずしも楽しいことだけでなく、どちらかと言えばしんどいこと大変なことが多い。
でもそこから得られる充実感もたしかにあって、それはどうやらゆずや他の犬達にとっても同じなようだ。
「ゆずー!またなー!!」
「ありがとうございましたー!」
初のしつけ教室が終了した。
「ふぃ〜、疲れたー」
「あれだけたくさんワンちゃんがいると、まとめるのも一苦労だね」
「でもみんな楽しかったみたいだよー!アタシも楽しかった!」
「それって犬がたくさんいたからだろ?」
「うん、それもあるけど、やっぱり飼い主さんの言うことがわかって、できることが増えるのが楽しいって、コスケも言ってたよ!」
むむ、それは嬉しいことだ。
僕にはなぜかこの犬と話せる能力があって、これまではその恩恵で犬に助けてもらっていた。
でも今は助けてもらうばかりでなく、他の犬と飼い主を繋ぐ架け橋になることが、どうやらできそうだ。
僕の能力に意味があるとしたら、きっとこういうことなんだろう。
「明日は、撮影か。ゆず、大丈夫か?疲れてない?」
「うん!大丈夫!楽しいーー!!」
尻尾をふりふりしながら、飛びかかって僕の顔を舐めてくる。
僕と犬達の物語は、この後もずっと続いていく…。
暇つぶしで始めた小説、なんとか終わりました…。
書き始めると意外と面白いけど、難しい。
かなりなんとなくで書き始めた小説なので、ゆるーく書きましたが、次は凝った作品を書いてみようかと思います!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
また機会がございましたら、お会いしましょう!それでは!




