第一話 犬が働けばええんやで
暇潰しで書き始めたゆる〜い小説です♪( ´▽`)小説初心者です>_<
短めなので、気軽に読めると思います。
もしよろしければ、感想いただけるととても嬉しいです!
僕には、特殊な能力がある。
犬と話すことができるのだ。
東城 霊。年齢25。独身男。都内一人暮らし。無職。
寂しがりなので、犬を飼っている。話し相手になるので、とりあえず寂しいのは紛らわせる。
「なぁ、ゆず」
「ん〜〜〜?」
「なんかいい仕事ないかなぁ?」
「え、また仕事辞めたの!?通りで家にいる時間長いと思ったけど!」
仕事をしても長続きしない僕。
人に指図をされるのが無性に嫌で、普通の仕事は3ヶ月続いたらめちゃめちゃ頑張った方になる。
特技を活かして働こうと、ペットショップで働いたこともあるが3日保たなかった。犬達の声がうるさすぎるのだった。
「出してくれぇ〜」「狭い〜」「腹減った〜」
犬と話せることが犬達にバレると、そのうるささは更に増す。
「おい、霊。おれらの声聞こえてんだろ?さっさと優しい飼い主に売りつけるなり逃すなりしてくれよ。おれらのこと見捨てるのか?」
そんなSOSを一日中聞きまくるのだからシャレにならない。ノイローゼになりそうだったので、その日の内に辞めた。
特技と言えば、犬と話せる、これだけだ。
あとは面倒臭がりで飽き性でどうしようもない。
「腹減った。メシでも食うか…」
「!?」
ゆずが飛び起きる。
「お兄ちゃん!何食べるの!?」
「お前のじゃねぇよ」
キラキラとした瞳で僕を見る。
犬は、というか動物は食べることに貪欲だ。
しつけがなってなければ、しつこく迫られる。
犬と話せても、それはいっしょである。
いや、むしろ犬と話せると余計しつけられない…。
彼らの気持ちが分かり過ぎるのだ。
純粋無垢に食べ物を求める彼らにかけてやれる言葉は、それほど多くはない。
キラキラとした瞳。尻尾を振りながら僕を見つめ続ける。
無視して板チョコパンを食べる僕。
ルンルンして期待を寄せるゆず。
「………………」
キラキラ…。
「わかったよ。一口だけだぞ」
また負けた。連敗中だ。というか勝つことは永遠にないだろう。
「さてと…」
テレビをつけた。
ゆずは食べ物をもらった感動で、お気に入りの「みかんのおもちゃ」をガブガブかじっている。
テレビのCM。ブサイクな犬が出ている。
「ブサカワ」がどうやらウリの様だ。
「ハ、、、ブサイクならゆずも負けてねぇよなぁ〜」
「む!誰がブサイクよ」
ゆずはシーズー犬だが、見た目はほぼブルドッグだ。
色は茶色ベースに白模様が入っていて、おでこのとこに逆三角形で白模様があるのだが、それがブサイクさを際立たせる。
おまけに飼い主の情弱のせいでちょっぴり太っている。
メスなのに可哀想だと、いつもからかって遊んでいる。
(て、ちょっと待てよ。ブサカワか…)
モデル犬、タレント犬とか言葉を聞いたことはあっても、「選ばれし犬」にしかなれないものだと思っていた。けど、ゆずならその持ち前のブサカワでその「選ばれし犬」になれるかもしれない…。
ゆずのブサイクさは、シーズー犬として飛び抜けているハズだし、そのクセ人に対しては愛嬌たっぷりだ。もし、この魅力が100%伝われば……。
「…て、親バカ過ぎるか」
なんて、つぶやきながら僕はスマホを手にしググっていた。
検索『犬モデル』
結構募集はあるようだ。
とりあえず募集サイトは置いておいて、実際はどうなのか調べてみた。
ペットモデルの仕事。
「テレビ番組や映画 CMの出演、ポスターや雑誌モデルのほか、イベントに出演するなど、幅広い活躍の場があります。」
収入例。
「CM…3~6万円(1~2日間拘束されて撮影、ロケもあり)
雑誌、ポスター、カレンダー等のスチール撮影…5千~1万5千円(1回)」
収入は、低すぎなければ高いというわけでもない。妥当なところなのだろう。
上手くCMやテレビ出演ができれば……。
僕には、ゆずが売れるであろう不思議な自信があった。
いや、単に親バカなのかもしれない。
それでも普通に働くよりは……!!
「おい、ゆず」
「ん〜〜〜?」
「次の仕事決まったぞ」
「おぉ!!アタシのご飯代!!」
「おれ、お前のマネージャーになる!」
「まね〜じゃ〜?」
「ゆずが働いて、それをおれが支える」
「ハ!?やだよ!なんでアタシが働かなきゃいけないのよ!?」
「当たり前だ!自分のメシ代は自分で稼ぐ!」
「お兄ちゃんのご飯代は!?」
「勘違いするなよ。ゆずも働くけど、おれもゆずのマネージャーとして働くんだ。つまり二人で働いて二人でメシ代を稼ぐ!」
「んん、よくわかんないけど、お兄ちゃんと一緒に仕事すればいいのね?アタシは何すればいいの?」
「簡単だ。一緒にどこかに行って、仕事先の人と仲良くすればいいんだ。」
ゆずは気づいた様だ。
「そっか!一緒に働くから家に置いていかれないのね!」
「そう!」
「しかも色んな人に会えるのね!」
「そうだ!それに色んな犬とかにも会えるかもだぞ!」
「やったー!アタシやる!!」
ゆずが飛び付いてきた。顔をベロベロ舐められる。
「よし、そうと決まれば早速事務所に応募するぞ」
こうして、僕とゆずが一緒に働くことに決まった。
犬と話せるんだから、犬モデルは必ず上手くいくだろう。
そんな安易な考えは、一瞬で潰されることになるとはつゆ知らず…。