ここは何処?−9−
「・・・・・・・・・」
地面に力なく座り、俯いている和歌の姿は見ようによっては泣いているように受け取られたかもしれない。
人通りの多い露天商の一角に昏倒している甲冑姿の七人と、座り込む娘。どう考えても奇妙なこの光景に立ち止まる者は多かったが、やはり和歌の制服姿に恐れを抱いているのか声を掛けてくる相手はいなかった。
それが、とても賢い選択だという事を知らずに。
「…ふふ。ふふふふ」
不気味な笑い声が、ストレートの黒髪に隠された唇から洩れる。
「いいわよ。これは喧嘩を売られたと思っていいのよね?あたしは、喧嘩を売られたのよね…?」
地獄の底から響いてくるような声音で紡がれる問いかけに、応える者がいるはずもなく。
「売られた喧嘩は買うのが基本。このままやられっぱなしでは、全国大会準優勝の名が泣くわ」
暴走した思考は誰かの制止がない限り止らない。伏せていた顔が勢いよく上げられれば、その黒の双眸が良く晴れた青空を映した。
「覚えてなさい!次に会った時は、絶対にぶん殴ってやるんだから!」
立ち上がり、握り拳を突き上げた和歌は澄んだ青空に誓う。
エイエイオー!等と一人で気合を入れている彼女からは、自分が置かれている状況がどの様なものなのかという認識が完全に欠落していた。当然、近付いてくる兵隊の一団がまさか自分を標的にしているなどとは露にも思わない。