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予言の乙女-13-

 この部屋で彼に会ってから、もう何回その代名詞を耳にしたことだろう。とても嫌な予感を伴ったそれは、されどその心情とは裏腹に和歌の心にすっと落ちてくる音だから不思議なのだ。いや、不気味といった表現の方が正しいかもしれない。

 疑問に思いながら、答えを知ってる自分が頭の隅にいるのだ。

 それは予感ではない。

 確信だ。

 それでも、確認せずにはいられない。根拠も何もない、直感にも似たこの確信を、否定してもらう為に。

 肩を怒らせる和歌に、イケメン王子改めフィルチチェ二世はラフォットと顔を見合わせる。長い顎鬚を優雅な手付きで撫でながら、忠実な臣下は一度、緩慢な動作で深く頷いた。

「其方のことだ、カズ」

 こちらに視線を戻したフィルチチェ二世の返答に、そんな事はわかっているのだと和歌は無言の抗議をぶつける。

 聞いているのはそんなことではない。もっと根本的な事だ。

「天空の覇者の娘は流れる星を弔いに地へ降り立つ。星の血を引く正当なる後継者を、全てを見透かす漆黒の眸をもって正しき道に導きたもう」

 確かに、自分の目は黒だ。

 だけどそれをいったら、日本人の約九割は黒い瞳を遺伝子情報として持って生まれてくるだろう。

「昨晩、夜空を星が流れた。それは我等が神のお告げだ。遠見の漆黒をその眸に抱きし娘が天より降臨された証。そして、カズ。其方が現れた」

 耳鳴りがする。神話の生きる時代を統べる若き王の声が遠い。

 否定が欲しかったのだ、自分は。

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