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予言の乙女-12-

 とは、言えなかった。日本人の胸の中にそっと仕舞っておこう。

 本人がいいのだから、きっといいのだ。

 いちいち疑問点をツッコんだら疲れる。それが、この日本以外の国に来てそれ程時間が経たない間に和歌が学んだ一つの教訓だった。

 たち位置の違う者同士が、数少ない言葉の、しかも噛み合っていない会話から理解し合うのは難しい。

「あの…」

「麗しき予言の乙女。貴女のお名前を聞かせてはくれぬか?さぞかし優美な名前なのだろうね」

 小首を傾げるその頬を、銀の長髪が流れる。その銀髪が弾く光の眩しさだけが、和歌が眉根を寄せる理由ではない。

「…カズ」

 本名を名乗りかけ、飲み込んだ間を空けてから短く答えたその渾名が、果たして彼が言う通り優美なものなのか、和歌には判断がつかなかった。

 それでも、目の前のイケメン王子様の煌く笑顔が曇ることはなかったので、絶望を与える程の衝撃ある名前ではなかったのだろうと思いたい。彼が完璧なポーカーフェイスを纏えるとも思えなかった。

「そうか。カズ、というのか。何とも珍しく、まさに予言の乙女に相応しい不可思議さを纏う名ではないか」

「あの…」

「さあ、カズ、行こう。皆が其方を待っている」

 和歌の口を挟むタイミングはここまでで合計三回は確実に邪魔されている。それが決して故意ではないとわかっていても、短気を起こすのはまだ関係が浅い所為だということにしたい。

「だから!」

 これまた自然と取られた手を乱暴に振り払い、和歌は自棄気味に叫んだ。

「その、『予言の乙女』って何なのよ!」

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