予言の乙女-9-
「・・・・・・・・・」
無邪気に喜ぶ、たとえその理由がよく理解出来ていなかったとしても、その純粋さに微笑ましいとも思う。見ようによってははちきれんばかりに振られる尻尾すら見えそうで、それはそれで可愛いとも思う。
けれど、それよりも何よりも、優先される感情はきっとこれだ。
「あの」
自分でも信じられないくらいの冷めた声で彼を呼んだと思う。
「何だい?麗しき乙女」
けれど、和歌の手を握ったままの彼は他者の感情を読み取ることが苦手なのか、或いは興味がないのかは知らないが、無邪気さをそのままで輝かせた銀の瞳が和歌を映し出す。
その瞳の中にもキラキラと輝く星が見えるような気がして、とにかく全身に煌きを纏っている彼が本当に眩しくなってくる。
あなたは少女漫画に出てくるイケメン君ですか。それともあれですか。それは後光なんですか。
本気でサングラス、かけようかな。
「あたしの話、聞いてました?離してと、これで三回目なんですけど」
子供のような無邪気さを纏っていた彼でも、流石に和歌の尋常ではない様子に気付いたようだった。呆然としたような、されどその中にやはり好奇心を散らした銀の双眸が瞬きを繰り返す。
それでもやはり和歌の願いは叶えられることはなく、盛大な溜め息をついた彼女は今度は言葉を駆使しなかった。己の手を握っている彼の手を乱暴に払い除ける。仏の顔も三度まで、言葉でわからない人に実力行使に出ても文句は言えまい。
振り払われた手をそのままに未だ固まっている彼に、和歌は綺麗な笑みを浮かべて見せる。私は悪くないと、無言の圧力に果たして相手は気付くだろうか。