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予言の乙女-7-

「あの、すみません」

 ようやく自分を取り戻してきた様子の和歌は、未だ手を握ったままのイケメン王子に声を掛けた。

「あぁ、すまない。君の存在を無下にしてしまった。ここは御詫びの口付けを…」

「いえ、それは結構です。だから、いい加減手を離してください」

 一度は立ち上がった彼が再び片膝をつこうとするのを制した和歌はただ、己の希望を口にしただけだった。

 それなのに、何故こんなにも空気が凍ったのだろう。この広い室内に佇むちっぽけな人間二人は、まるで時間を止めてしまったかのように微動だにせずに和歌を見つめてくる。

 流石の和歌も少々困惑した。

 ここは日本ではない。口付けというのはこの国では謝罪の証であり、それを断わるという事は許さないと言ったも同然という可能性はあるまいか。

 そこまで考えが及び、和歌は雷に打たれたような衝撃を受けた。

「あ…あの、別に、ですね。あたしは怒っているとかじゃなくて、ただ、その…あの、何て言いますか…」

 なんとか相手を傷つけずに巧くかわす言い回しはないだろうかと、元々ない国語力を精一杯活用して頭の中の単語辞書を調べてみたけれど、無駄だった。

 あぁ、もう。面倒くさい。

「とにかく、あたしは怒っていないし謝罪もいりません。だから、手を離して」

 言いたい事ははっきり言う。それが和歌の信条だ。

 嫌な事は嫌だと言わずに、ずるずると引きずっている方が、後々人間関係に悪影響を及ぼしてくる。そんな些細な事でせっかく築いた人間関係が壊されるくらいなら、最初にきっぱり言っておいた方がいい。それで相手に不快な思いをさせたら、その事に関してはこちらがちゃんと謝ればいいのだ。

 相手に合わせるだけが優しさじゃない。

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