予言の乙女-5-
「清い心を持つ乙女へ、感謝する」
そして、あろうことか、掌に口付けを落されてしまった。
ねぇ、これで、茫然とするなっていう方が無茶な注文だと思わない?だって、こんな、中世の騎士の様な礼を、超現代っ子な日本の女子高校生が受けちゃってるのよ?
「ありがとう」
その上、斜め下からふわりと王子の笑みを贈られたら、流石のあたしも頬くらい染めるわよ。
一人目の美形が腹黒大王だったから余計に今目の前にいる美青年がいい人に見えるのかもしれないけど、やばい。あまりの笑顔の眩しさに目が開けられなくなってきた。何処かにサングラスとかありませんか?
向けられる笑みが眩しくてそっと目を逸らすその仕草は、中世の騎士のように跪く彼には恥じらっているようにしか映らない。
くすり、と笑みを洩らし、優雅に立ち上がった銀髪の青年は何処か嬉しそうに笑った。何故か、和歌の手を握ったまま、だ。
「貴女のような素敵な人が予言の乙女でよかった。この出逢いを、私は神に感謝しよう」
顔の前でなにやら複雑な動きをした手が行きつく終着点は胸元だ。掌を軽く握り、綺麗な銀の瞳が瞼の裏へと隠される。何やら呟いていたけれど、これだけ近くにいる和歌にすら聞き取れない程の小さな声だった。
視線が逸らされた事で少しは和歌の動悸も収まってくる。どうして手は握られたままなのかなぁ、なんて考える余裕もようやく出てきた所に、何やら聞き捨てならない単語が飛び込んできた。
よげんのおとめって、何?
よげん…四限…四元…予言?
・・・・・・・・・予言?
何やら、とってもいや~な予感がするんですけど。