予言の乙女-1-
てっきり、鉄格子のはまった薄暗い地下牢へでも連れて行かれるのかと思った。
いや、多分、この、女子高生一人を武装した数人で取り囲んでいる無様な方々は、最初はそのつもりだったんだと思う。だけど、中世ヨーロッパのような立派なお城の入り口で隊長格らしいおじさんに耳打ちする人が現れて、完全に予定が狂わされたらしい。
伝令を持ってきた、こっちはなんだかローマ時代の人が着ているようなゆったりとした布に身を包んだ人に案内されていく和歌を見るおじさん達の様子が、悔しそうでありながらも驚きを含んでいる事が少し引っかかったけれど。
どうしてあんなに驚いていたんだろうかと、このただっ広い空間に一人ぽつんと残されてから数分だか、十数分だか。
地下牢ではなく、こんな、大広間みたいな部屋に通された理由も含めて考え続けているが、答えなど出るはずもないのだ
わかんない。わかんないけど、どうしてって考えないなんて事も出来ない。だって、話し相手もいないのよ?それとも何?あたしに、独りじゃんけんなていう淋しい真似でもしろとでも言うの?確かにあれ、脳のトレーニングにはいいだろうけれど。
ここで脳トレする程、あたし、楽天家じゃないのよ。
「っていうか、いつまでこんな所で待たせる気?しばらくっていう言葉の使い方、間違ってるわよ」
ここに案内してくれた中年の格好いいおじさまは、しばらくお待ちくださいって恭しく頭まで下げてくれた。あんな風に畏まれる事なんて、この十六年間生きてきて一度としてなかったから、ついつい殊勝に頭を下げて従っちゃったけど。
少なくとも、十分くらいは待った。
それとも、日本のしばらくという時間感覚と、こちらの世界では違うとでもいうのか。
ここでもまた、軽いカルチャーショック。