王道展開に物申す-2-
「…なんて、ね。それは全部、人が作った物語の中での話。今が、現実」
王子様なんていない。口の悪い、とてつもなく失礼な男なら一人いたけれど。それは味方ではなく、次会ったら絶対殴ると決めた敵だ。
敢えて王子様という役に当て嵌めるなら、天使のような少年。そして、意地悪な継母じゃなくて、強くて優しい、お母さん。
夕陽が綺麗だ。ここからでも数個見える共通の台所に女性や幼い子供達が出てきて、美味しそうな匂いが漂い始める。
もうそろそろ夕飯の時間なのかなぁ、なんて呑気に考えていた和歌の耳に、夕食の準備とは到底思えない物騒な騒ぎが届いた。振り向いた瞬間、屋内へと続く扉が開かれ、そこからぞろぞろと、武装した武骨な男達が数人出てくる。
それはまるで蟻が巣から出てくるようだと、そんな事を頭の片隅で思った。
って、そんな事を思っている場合じゃない。
狭い入口から鎖の擦れ合うような耳障りな音を響かせながら屋上へ出てきたのは、あれよという間に総勢十五人にもなった。その全員が統制の取れた無駄のない動きで弧を描いて並び、手に持った槍の先を和歌に突き付けてくる。
これって、ひょっとしてひょっとしなくても、大ピンチってやつ?
ついさっきまで、王道過ぎる展開に飽きたとかなんとか語っちゃったけど、言ってるそばからこれってどうなのよ。