王道展開に物申す-1-
「できすぎてるって、思うのは…あたしが、捻くれてるから?」
真っ白いシーツが、視界の隅で風に揺れている。
屋上から沈んでいく夕陽を眺めていた和歌は、自嘲気味の笑みを浮かべた。
だって、こんなにうまい話ってある?
いきなり異世界に飛ばされて。武装した人達に追われて。お節介を焼いて助けた少年の家族に保護される。
どっかのありふれたファンタジー小説みたいじゃないの。
「で、この後少女は結局捕まって、お城に連れていかれて、牢屋とかに入れられるんだよねぇ」
だけど結局、なんやかんやで救い出されちゃったりするんだよね。それも、美形の部類に入る男の人に。
そんなストーリー展開、もう見飽きた。あまりにも王道過ぎて、面白みの欠片もない。
そもそも、そういうのって、フィクションだからこそ面白いんじゃないの?現実にいきなり知らない世界に飛ばされたら、ただ黙って助けられるのを待っていられるわけないじゃない。
誰もあたしを知らなくて、あたしは誰も知らないというのに、どうして誰かが助けてくれるって思えるの。未来なんて見えない。外れる確率九割の博打みたいな行動、選択なんてしないよ。
少なくとも、あたしはそんなのご免だ。
もし仮に、神様が、あたしを助け出してくれる王子様を用意していてくれたとしよう。
それでも、選択肢は変わらない。
あたしだったら、会いに行く。