記憶喪失的情報収集-23-
「それでも、あたし達は希望を捨てずに生きてこれた。いつか、フィルチチェ様が平和な世界を与えてくれる。そう思えたからさ。そして今、あたし達はこうして生きて、平和な国で暮らしている」
この人の穏やかな微笑を見て、その感情は、間違っていなかったんだって、唐突に悟った。
不確かな未来を信じて、今を懸命に生きるその姿は、可哀想なんかじゃない。なんて美しく、なんて綺麗な微笑なんだろう。
今の彼女を見て、今の彼等を見て、どうして、可哀想なんて、そんな言葉が出てくるだろう。
「何かを心から信じられるって…なんかそれ、羨ましいです」
突然のあたしの言葉に驚いたように目を見張っていた彼女だったけど、やがて、そうだろう、って。
その時彼女が浮かべた笑みは、やっぱり、とても美しく見えた。
それから、沢山話した。
この世界のこと。この国のこと。家族のこと。
彼女達は、嫌な顔一つ見せずに和歌の質問に答えてくれた。
こんな、みょうちくりんな格好をした、どこからどう見ても怪しい人でしかない娘の、これまた奇妙な質問に、彼等は丁寧に答えをくれた。
一度として、和歌の素性を訊くことなく。