記憶喪失的情報収集-20-
また顔を見合わせる、心根の優しい親子。
うん、まぁ、そうだよねぇ。当然の反応だよねぇ。まさか、そこまで記憶喪失が深刻だなんて、思ってないよねぇ。
心からの同情を籠めた眼差しがただただ申し訳ない。
「わかった。ガーネ、地図を描いておやり」
「はい」
あぁ、やっぱりこの少年、天使だわ。
また感動の涙を流しそうになった和歌は、目にゴミが入った振りをして慌ててまなじりに浮かんだ雫を拭った。
一人で忙しくしている和歌の前で、羊皮紙に似ている分厚くて黄土色の紙が広げられる。エンピツはエンピツみたいで、少年が慣れた手つきで絵、改め大陸を描いていく。
「いいかい?カズ。中央のこの大きな国が、今あんたやあたし達がいるリンベール王国。その王都リーザが、ここだ」
海に面した場所を母親が指差せば、それに従ってガーネが×印を書いて地名を書きこんでくれる。
そういえば、高台から眺めた地平線は海の色だった。
「リーザは交通の要所であるナッハバ港を有する海洋都市でね。国内だけじゃなく、周辺諸国からも人が流れ込んでくる」
少年の地図を描く手は止まらない。美術の成績が中学時代から2以上を貰ったことのない和歌にとって、流れるように世界地図を完成させていくその手は、まさに神の手に見えた。