記憶喪失的情報収集-18-
フォークをテーブルに置いて、深くお辞儀する。そうすると何だか楽しそうな笑い声が聞こえたので、不思議に思って顔を上げると、ガーネの母親は嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
「いやね、あたしにも娘がいれば、あんたみたいな感じだったのかな、って思っただけさ」
その微笑が、どうしてだろう。少しだけ、淋しそうに見えたから。
けれど、ここから先に踏み込む事は許されないと思った。だから、もう一度お礼を言って、食事に戻る。
だって、こんなに美味しいご飯、冷めちゃったらもったいない。
「そういえば、カズ。あんた、記憶喪失なんだってね?」
「え…?あ、はい。そうでした」
そういえばそういう話になっていたのだと、食後のお茶を飲みながら思い出した。ちなみにこのお茶、味がジャスミン茶に似ている。
なんでもかんでも身近なものに喩えて説明するのは許してほしいな。これはこんな味がする、なんていちいち解説出来る程、ボキャブラリーも豊富じゃないし、舌も肥えていない。
だいたい、これはこんな味でどこがどう美味しい、なんて詳細に説明出来たら、あたしは今頃グルメレポーターにでもなっているって。
「覚えているのは自分の名前だけ。何処から来たのか、どうしてここにいるのかもわからないって話だったけど…。それ程落ち込んでいるみたいでもないみたいだね?」
不思議そうに見てくる親子二人の視線に、和歌は曖昧に笑うしか方法がなかった。
だって、本物の記憶喪失じゃないし。何処から来たのかなんて聞かれれば、日本からですって普通に答えられる。まぁ、その日本っていう国がこの場所で認知されるかどうかはまた別の問題になるのだけれど。どうしてという問いには、むしろこっちの方が聞きたい心境だ。