記憶喪失的情報収集-15-
「…よし。取り敢えず、腹ごしらえ」
人が真剣に考えていれば、呑気にも胃が空腹を訴えてくれる。
そういえば、眠っていた授業は四時限目で、自分の時間感覚を信じるのなら、そろそろお昼休みの時間のはずだ。
楽しみなお弁当の前に男七人を相手にして、その上市内鬼ごっこなんてやらかしたら、それはお腹も空くというもの。
どんな切迫した時だって、体は正直だ。
「笑っちゃう。でも、うん、まぁ…それもいいかもね」
そういえば、空手の決勝戦を午後に控えた昼休み、お腹が鳴って友達に、「緊張感ゼロだね」って笑われたっけ。
だから、それでいい。
ここが、本当にいるべき場所じゃなくても、生きている事に変わりはないから。
「あ、少年。あたしも手伝うよ」
とりあえず、ただ座って食事が出てくるのを待っているのは性に合わない。丁度、こっちの間隔でいうサラダを運んできたガーネに、和歌は立ち上がりながら声をかけた。
が、何故か笑顔のまま首を横に振られる。
「え、でも…」
「カズさんはお客さんだから。お客さんに手伝ってもらったら、母さんに叱られる」
だから、俺の為にそこに座っていて。
唇に人差し指を当ててそう言われてしまえれば、それ以上何も言えなくなって和歌は仕方なく椅子に座り直した。