記憶喪失的情報収集-14-
「あ――…」
寝ぼけていたとはいえ、夢と現の狭間に親しい友人の姿を求めた己の女々しさに、和歌は恥ずかしさと苛立ちを紛らわすかのように髪をかき上げた。
我ながら呆れてしまう。
今自分がいるこの世界が、夢じゃないんだって。現実なんだって、そんなの、とっくに諦めていたじゃない。認めて、それでも、泣いたって、願ったってどうにもならないから、こうして今を頑張っている。
それなのに。
意識が剥がれ落ちて、理性が消えて、残った本能はまだ、失ってしまった世界を求めている。
「ばっかみたい」
失ってしまったものは取り戻せないと。
どうしようもないと。
だから、前に進めと。
「あたしがそう、自分に言い聞かせてるっていうの?」
それはもう、否定しない。だって、見せられてしまったから。
意識で覆い隠していた無意識に。
理性で抑え込んでいた本能に。
意思で誤魔化していた願望に。
「それでも。誤魔化して、嘘ついて、欺いてでも、進むしかないじゃないの」
これが、物語の中の女の子だったら、きっと、泣きながら待っていれば、白馬に乗った王子様が助けに駆け付けてくれるのだろう。そうして、優しい手で抱き寄せられて。その胸の中で、眠るのだ。世界は、己の意思とは関係なしに、動き、そして、導いてくれる。
けれど、自分は違う。
泣き叫んでも、助けに来る蹄の音はない。
呆けて待っていても、差し出される優しい手はない。
自分の足で立ち、歩き、そして、見つけ出さなければならない。
どうして、と。そう問う事に意味はない。どんなに考えても、答えなど出てこない。
ならば、探し出す。
ここから帰る、その方法を。
その為には、何をしなければならない?