記憶喪失的情報収集-10-
一人残された居間を、改めて眺めてみる。
広さは多分八畳くらい。紫色の薄い布が掛けられた入口の先にはさっき入ってきた玄関があり、南側に備え付けられた窓からは柔らかな日差しが入ってくる。目の前のテーブルは石造りで、白っぽく見える石は、多分、御影石。
南側には窓以外に扉があり、中庭へと続いている。立ち上がり、窓の外を見ると、向かい合う四つの家が四角い中庭を造っていて、そこは共同の炊事場になっているみたいだった。丁度昼時という事もあって、年齢の違う数人の女性が談笑しながら手際よく調理しているのが見えた。
「あれ…?」
そういえば、あの純真な少年は何処に行ったのだろう。てっきり、母親と一緒に中庭へ出て行ったのかと思ったのに。
答えなんて出ないのに悩み続けていると、背後で扉が閉まる音がしたので驚いた。振り返ると、片腕に収まるくらいの籠を手にして居間に入ってくるガーネの姿を見つけた。
「あ、カズさん。鶏肉平気だった?」
「え?あ、うん」
「よかった。もう少し待っていて。今からメインディッシュ作るから」
「あ、うん」
にこりと笑って中庭へと出ていく少年を見送った和歌は、彼が自分の前を通り過ぎる時に聞こえた音に目を丸くした。
ちょっと待て。今、コケコッコーって鳴かなかったか?
え?じゃあ、あの籠の中身って、生きたニワトリ?
「・・・・・・・・・・うそー…」