記憶喪失的情報収集-5-
「わかった。じゃあ、カズさん」
「うん」
「手、離してもらえるかな…?」
「え?あ…ごめん」
まだ握手したままだった事をすっかり忘れていた。笑いながら謝罪する和歌だったけれど、目の前の少年は頬を朱に染めて俯く。
そんな彼の様子に気付いた和歌は、くの字に体を曲げて彼の顔を覗きこんだ。
「どうしたの?」
「・・・・・・・・ッ!」
息を呑んでのけ反った少年の顔が瞬く間のうちに熟れた林檎のように真っ赤になる。更に彼は和歌から数歩後ずさって、肩で息をしていた。
そんなガーネの様子に、和歌の困惑は増すばかりだ。空いた距離を数歩で縮めて、膝を折った和歌は少年と目線を同じにした。
「風邪かな?」
ガーネの額に掛かる柔らかな金髪を退け、額に手を当てる。その瞬間身体を強張らせた彼には気付かずに、空いたもう一方の手を己のそれに当てた和歌は、上目遣いに空を見上げて唸った。
「う~ん…熱はなさそうだけど」
目の前で固まっているガーネへと視線を戻した和歌は、額に当てていた手でその綺麗な金髪を撫でた。
「そっか。うん、大丈夫だよ、少年。今度誰かに絡まれるような事があっても、このあたしがやっつけてやるから」
「え…?あ…」
「だから、怖がらなくたっていいよ」
にこり、と笑って、和歌は立ち上がる。