23/61
記憶喪失的情報収集-4-
こうする事でまたちょっと異邦人である自分と彼との距離が縮まった気がして、嬉しくなった和歌は握ったままの右手を上下に振った。習慣にない行動に少年は目を白黒させながらも、浮かべたままの笑顔が功を奏しているのか、されるままに振り回されている。
「え…と、お姉さん…じゃなかった、アカ…さん」
「和歌」
言いかけた少年を遮り、和歌は顔を近付けて間違いを正す。
少年はその分、顔をのけ反らせた。
「えと…ハ…ハカ…さん?」
「和歌」
「マ…カさん?」
「・・・・・・・・・・」
言語上の問題だろうか。
どうしてもわ行が発音出来ない様子の少年に、ついに和歌が折れた。微苦笑を唇に浮かべ、くの字に曲げていた体を起こす。
「うん、わかった。カズでいいよ」
「カズ…さん?」
「そ。親しい友達は皆そう呼ぶ」
小学校の時、同じクラスに同じ名前の友達がいた。その子と区別する為に付けられたあだ名だったけれど、いつの間にかその呼び名が定着していた。
それは、友達に呼ばれれば特別な証。