ここは何処?-2-
「何故答えない。やはり、後ろめたい事情があるのか」
息巻く、中世の甲冑のような鎧に身を包んだ目の前の相手に、和歌は冷めた視線を送る。
ちょっと、こいつ。蹴ってもいいだろうか。
何故答えないかって?そりゃあ、後ろ手で羽交い絞めにされて口を塞がれていれば、答えたくても答えられないでしょうよ。それともあんた、腹話術なんて器用な真似、あたしが出来るとでも思ってるの?
なんて、言えないこの状況が恨めしい。
「もうよい。答えないのならば、無理矢理吐かせるだけだ」
馬鹿だ。
高々と言い放った自分格好いい!とか思ってるのかもしれないが、ただの馬鹿だと和歌は決定付ける。
どんなあだ名をつけようか?
馬鹿髭騎士?…そのまんまね。ネーミングセンスを疑われそう。
「では、独房に…」
「――おやおや。女性相手に、大の男が七人も」
意気揚々といった感じで踵を返しかけた髭騎士さん(仮)の言葉を遮り、何処か人を馬鹿にしたような物言いをする声が響き渡った。
思い通りに動く視線を声のした方へ動かせば、近付いてくる一人の男性が視界に入る。
陽の光を弾く見事な金髪。冬の空のような静かな蒼色の瞳。百人中百人の女性が、口をそろえて美形と言うであろう、まさに美の集大成。神の傑作と言っても過言ではない、そんな美青年だ。
だけど、神は決して人に二物を与えない。それが果たして神の意地悪なのか嫉妬なのかは知らないが、容姿が飛びぬけていい奴は、例外なく性格が最悪だ。